自動車趣味発祥に縁ある旧車イベント
text:Kouzou Ebizuka(海老塚 構造)
text&photo:Hidenori Takakuwa (高桑秀典)
今年もまた、国立市の谷保(やぼ)天満宮において、クラシックカーが集うイベント「谷保天満宮旧車祭2019」が12月8日に開催された。
この地は、111年前の明治41年8月1日に「自動車の宮様」として知られる有栖川宮威仁親王が、わが国初の自動車ツーリングを敢行し安全祈願を行い、日本初の自動車クラブ「オートモービル・クラブ・ジャパン」(ACJ)を設立したという、日本における自動車文化と交通安全の発祥の場所といわれる場所だ。
かつてこの谷保天満宮に集い、来たる自動車の時代について語り合った、初代ACJメンバーの志を一世紀後の現代に受け継ぐイベントとして開催されているのが、この「谷保天満宮旧車祭」である。
そのメインイベントである往年の名車たちが集うカーショーは、谷保天満宮と国立駅を結ぶ大学通りに沿って、4会場に分散して約200台が展示された。
今回で10回目の開催となる本イベントは、全ての会場が無料で入場自由となっており、クルマ好きはもちろん、今や地元の国立市民からも広く支持される旧車イベントとして成長・定着したと感じさせるようになった。
見どころ多く、誰もが楽しめる
神聖な空気漂う谷保天満宮の境内には国産ガソリン自動車第1号である「タクリー号」のレプリカをはじめ、ディーノ246gtやランボルギーニ・カウンタック、ロータス・ヨーロッパといったスーパーカー世代垂涎のマシンたち、日野ルノーやスバル360にダイハツ・ミゼットといった、日本の自動車産業の黎明期を彩った車両たちが集結。
そしてメッサーシュミットやアルピーヌ・ルノーA110、ランチア・ベータ・モンテカルロといった稀少でマニアックなモデルなどが並び、来場者の目を奪っていた。
さらには“超”が付くほどに深遠なる趣味として一部に知られる「石油発動機」の運転会や、子供たちによるタクリー号を象ったお神輿、貴重なミニカーやグッズ類を扱ったオートジャンブルなど、電気自動車と自動運転の時代が目前となった今日においても内燃機趣味は健在であるということを実感させる内容であった。
また、複数ある展示会場でも地元の方々出店によるマルシェや和太鼓、スタンプラリーにクラシックカー&スーパーカー・タクシー、そして本イベントの名物の1つである銀河鉄道所有のレトロバス、昭和56年製日野RC701Pによる無料シャトルバスなど、誰もが楽しめ、見どころも盛りだくさんだ。
今年もパレードラン「近乗会」を実施
本イベントの大きな特徴は、展示された名車たちを間近から見られるだけではなく、公道を走る姿も拝めることだ。
午後2時から毎年恒例のパレードラン「近乗会」が大学通りにて開催される。あたかもタイムスリップしたかのように道路の往来を名車たちが埋め尽くす様子は非常にインパクトのある光景であるといえるだろう。
年代を問わず沿道から名車たちに熱い視線と声援を送る姿も印象的である。日本のクルマ趣味の奥深さを再認識させてくれる谷保天満宮旧車祭。一度は訪れてみることをオススメしたい。
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