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【試乗】初代ボルボXC60は、V70のような「癒し系」ではない新世代モデルだった【10年ひと昔の新車】

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【試乗】初代ボルボXC60は、V70のような「癒し系」ではない新世代モデルだった【10年ひと昔の新車】

2008年、ボルボからコンパクトSUV初代「XC60」が登場した。3月のジュネーブオートサロンで「XC60コンセプト」としてワールドプレミアされると、秋には欧州で販売を開始、スペイン・バレンシアで国際試乗会が行われている。すでにプレミアムSUV市場にXC90を投入して実績を上げていたボルボは、この初代XC60でそれまでとは異なる新しい走り味に挑戦もしている。Motor Magazine誌ではこの国際試乗会で、後に日本に導入されることになる「XC60 T6 AWD」に注目してレポートしている。今回はその国際試乗会での模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年12月号より)

走りやスタイリングで尖った魅力を主張し始めたボルボ
「なるほど、ボルボもついにこの領域に足を踏み入れたか」。10月上旬、スペインはバレンシア地方で開催された国際試乗会でXC60のハンドルを握った時の第一印象がこれだ。

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今までのボルボは、Rシリーズなど一部に例外はあったものの、基本的にマイルドなハンドリングと重厚な乗り心地を味わいの中心に据えてきたと言っていいと思う。

しかしXC60はこれらと明確に趣きを変えている。ロール剛性をかなり高めているのは間違いなく、ハンドルを切り込んでからヨーが立ち上がるまでの「溜め」があったハンドリングは、「打てば響く」系のキビキビとしたものとなった。ロックtoロックは3回転でいたずらにクイックにはしていないものの、スペイン特有の狭くトリッキーなワインディングをフラットな姿勢を保ったままグイグイとクリアして行く様は、今までのS80やV70/XC70にはなかった味わいである。

XC60は、伸張著しいプレミアムコンパクトSUV市場にボルボが送り出すブランニューモデルだ。先行するBMW X3を追う役目を担うのは、アウディQ5やメルセデス・ベンツGLKなど時を前後して各社が投入するニューモデルと同じ。となれば、その手頃なサイズ感が都市部での扱いを容易にするというこのクラスの特質上、よりオンロードを重視した味付けになるのは十分理解できるのだが、それにしても癒し系の持ち味を特徴としていたボルボがここまで「激しい」セッティングとなったのはかなり意外だった。

同じことはスタリングにも言える。厚みのあるショルダーや、ノーズからボンネットにかけてV字を描くラインなど、ボルボ流のこれまでのデザイン言語は踏襲しているものの、絞り込みの強いノーズ&テールエンド、クーペのようにスリークなガラスエリア、深い陰影を持つサイドパネルなど、情緒面に強く訴えかける塊り感の強いフォルムは、水平基調の落ち着いた佇まいとスペーシャス感を特徴としていた従来のボルボデザインとは違った道を歩み始めたようにも見える。

インテリアも、後方が空間で宙に浮いたようなフローティングセンタースタックや、3分割のリアシートなど近年のボルボの作りを維持しながら、センターコンソールがドライバー側にやや偏向したり、この最上段にナビ画面をビルトインするなど、各部に新しい試みが見られる。

こうしたスタイリングは、メルセデス・ベンツから移籍しボルボのデザインを統括するスティーブ・マッティンが初めて一から手がけたもの。曲線を多用した魅力的なテールエンドにSLを手がけた彼らしさを発見できるし、フロントのエンブレムも以前より確実に大きくなって、きっちりとボルボであることを主張している。

そうなのだ、走りにおいてもスタイリングにしても、尖った魅力を強力に主張し始めたのが、ボルボラインアップの中におけるXC60の新しさなのである。

ちなみに、XC60のプラットフォームはP2、つまりS80やV70系と同じ、直列5/6気筒、最大ではV8を横置きする大型車向けのシャシである。同じ構成のSUVとして同社の屋台骨を支えるXC90がすでにラインアップされることもあり、弟分のXC60ではこれと明確に異なるテイストを打ち出す必要があった。その代表的な例が冒頭に述べたニンブルな走りというわけである。

同様に乗り心地も大きく変わった。サスペンションはバネレートをXC70に対し10%も上げ、相応にダンパーやブッシュ類も強化している。タイヤは235/60R18のピレリPゼロ・ロッソ。この辺からもオンロード志向がいかに高いかがわかる。

乗り心地の印象を記せば相当にハードで、とくに荒れた路面では突き上げを正確に伝えてくる。入力を一発でいなす質の高い硬さに総合的なサスの強化と、それを支える新プラットフォームの剛性の高さが伺えるものの、微小ストローク域にもう少ししなやかさが欲しい。このあたりは走りに目覚めた新生ボルボの今後の課題となる部分かも知れない。

今回の試乗車は装着していなかったが、XC60にもダンピングを3モードに切り替えられるFour-Cシャシの設定がある。最近のクルマはこの種の可変機構で乗り心地と運動性能の折り合いを上手く付けることも多いので、日本導入時の仕様設定も含め今後に期待したい。

さて、ここまでXC60がこれまでのボルボからいかに変わったかを中心に述べてきたが、もちろん変わらなかった部分も多い。

ボルボの良さを残しつつ明らかに新世代へと進化 
今回の試乗車はT6というグレードで、搭載エンジンは直列6気筒の3Lユニットにターボを組み合わせた285ps仕様だ。今後エンジンラインアップはさらに増えそうだが(そればかりか2WDの投入もあるようだ)、当初はこのパワフルなガソリンエンジンと、2種類の5気筒2.4Lディーゼルターボというラインアップ。来年後半の日本導入は今のところガソリンエンジンのみとなる模様で、今回乗ったT6はトップエンドとなる。

すでにV70にも搭載され日本の地を踏んでいるこのエンジン、最大トルクの400Nmを1500~4800rpmというワイドな領域で発生することもあって、実用域の使いやすさ/力強さは申し分ない。反面、高回転域のパンチはそこそこだが、直6のスムーズなフィールや、ギアトロニック(マニュアルモード付き6速AT)の相性の良さも含めて、これは良い意味での既存技術の継承と言える。

駆動は電制ハルデックス・カップリングを用いたオンデマンド式4駆ながら、スタートから後輪にもトルクを割り振るプレチャージシステムを導入した4WD。ラフロード走行を想定してヒルディセンドコントロールも搭載するが、このあたりは他のXCシリーズでもお馴染みだ。

4WDとは言え、基本的には前輪を主に駆動するこのシステム。世の中の大型FFモデルは過大なトルクが前輪に集中することから、エンジンの揺動を抑えきれずステアフィールに荒さを残すケースが多いのだが、ボルボはエンジンマウントなどに特段の工夫を凝らし、極めてスムーズなフィールを手に入れている。これはP2プラットフォームに共通する大きな美点と言っていい。

走りは格段にニンブルになったXC60だが、こうしたベースの部分でのボルボの良さ、味わい深さはきちんと残してあるのだ。

そして、何よりもボルボらしいと思わせるのが、安全に対する独自の深いこだわりである。

XC60もまた、ロールオーバーを防止するブレーキ制御機構のRSC、後方からのクルマの接近を知らせるBLIS、車線逸脱警報のレーンデパーチャーウォーニング、レーダーセンサーを使ったアダプティブクルーズコントロールと車間距離警報のコリジョンウォーニング&オートブレーキといった安全装備が満載(一部オプションもあり)なのだが、これに加え「シティセーフティ」という新しい機構が加わった。

これはフロントウインドウ上部に設けた2つのレーザーセンサーで前方を監視し、30km/h以下でドライバー操作がない場合に自動的にブレーキをかけ追突を防止/軽減するというもの。相手との速度差が15km/h以下ならほぼ衝突を回避できる。実際に試したが、転ばぬ先の杖としてかなり有効だと思われた。ボルボ側としても自信作らしく、XC60全車に標準装備というから凄い。

ただ、日本では国交省の指針に合致しないため、来年の秋頃と言われる導入で、この機構が機能させられるか現時点では微妙な情勢のようだ。機能停止となったら誠に残念だが、いずれにせよこのXC60は、ボルボらしさを兼ね備える注目のニューモデルとなるのは確かで、個人的にはV70を超える人気を得る可能性すら感じられた。(文:石川芳雄)

ボルボXC60 T6 AWD 主要諸元
●全長×全幅×全高:4628×1891×1713mm
●ホイールベース:2774mm
●車両重量:1825-1990kg(EU)
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2953cc
●最高出力:210kW(285ps)/5600rpm
●最大トルク:400Nm/1500-4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●EU総合燃費:8.4km/L
●最高速:210km/h
●0→100km/h加速s:7.5秒
※欧州仕様

[ アルバム : ボルボXC60 はオリジナルサイトでご覧ください ]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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みんなのコメント

3件
  • XC60はボルボの名車と言えるね。
    この辺りから一気にスポーティーになって信頼性が上がった。
  • 今見てもカッコいいなぁ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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