現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 1990年代カスタムバイク回顧録・今振り返るカスタムの意義編【Heritage&Legends】

ここから本文です

1990年代カスタムバイク回顧録・今振り返るカスタムの意義編【Heritage&Legends】

掲載 更新 29
1990年代カスタムバイク回顧録・今振り返るカスタムの意義編【Heritage&Legends】

1990年代……あの頃起こり、急激に花開いたバイクのカスタムブームは、いったい何を目指し、どう移り変わったか。そのブームの最初期にあたる1988年にショップを開き、以来今に至るまでカスタム車の製作をその主に据えたクラスフォーエンジニアリングの横田さんは、当時その最前線たる第三京浜・保土ケ谷PAの近くに店を構え、流れを見てきた。その大勢と、今を聞いてみよう。

第三京浜はあの頃バイクカスタム界最大の情報発信地
今でこそバイクカスタムは、より乗りやすくするためというのが時代の本流となっている。否定するわけでもないが、今は車種別にカスタムパーツが出そろい、誰もがそれを気軽に装着できる。ある意味で便利な時代となった。一方で同じような車両が多数生まれる画一化が進み、オリジナリティを見いだすのが難しくもなった。

【原付二種のカブを比較】乗り味・燃費・装備・価格を比べてみた!

だが、バイク界でカスタムがブームとなったあの頃=1990年代は、「ほかと違う1台を仕上げたい」「自分なりの個性を主張したい」が主。今見れば切った貼ったという世界ではあったが、それすらも個性。そこにとてつもない熱気もオリジナリティもあった。クラスフォーエンジニアリングの横田さんは、ちょうどそんな頃の1988年にショップをオープンし、今に至るまで精力的にカスタムジャンルを引っ張ってきた。

「カスタムは人と違うことをしていくことですけど、速さのイメージだったり、実際に力があって速いとか、軽かったり、格好良かったりということを追い求めるものですよね。チョッパーのように、乗りやすいかどうかが必ずしも外からの評価の対象にはならないこともあります。でも、自分にとって何か良くなるという部分を意識してきたものだと思います。 ウチは開店からカスタムショップとしてずっとやってきましたから、ウケるウケないは別にして、常に新しい提案がしたいわけです。『ほら、こんなスタイルはどうですか?』っていうスタンス。

その開店の頃はカスタムブームの黎明期で、そんな情報、新しいスタイルを誰もが一生懸命探してた。ネットなんて発達してないから、雑誌で見るか何か話を聞いて現場に行って、見るしかない。その現場の代表が、第三京浜だったんです。保土ヶ谷パーキング。毎週末、土曜の夜になると有名なカスタムショップさんが自慢のデモバイクで乗り付けてくる。携帯電話もパソコンもまだまだな頃なのにウチのお客さん達は翌日曜の午後には『昨日、あそこのショップがすごいカスタム持ってきてた』なんて話してたから、今思えばすごい情報収集力だな(笑)なんて」

そんな中、クラスフォーは当時では珍しかったPM=パフォーマンスマシン製シケイン(当時はミッチェルと呼んでいた)17インチアルミスパンホイールを初めとしたアメリカ製パーツを多く採り入れた、ヨコハマ・クラスフォースタイルとでも言うべき車両群で脚光を浴びる。

「僕たちの先輩世代だと当時、富士スピードウェイでMCFAJが開いていたスーパー1000ていうレースに出ていたバイクをモチーフにしてカスタムしてました。いわゆるケツのカチアゲとか、太いタイヤは元々そこから来てます。足まわりはモリワキKYB、スイングアームはマイティプロダクト、18 インチ……とかって流れもそんなレースからのもの。でも、若かった僕らにはそれが保守的なカスタムに見えたんです。

だから前後17インチでリヤ極太タイヤ。当時最新だったGSX-Rの足まわりや純正流用もたくさん使いました。レーサーならば機能性第一、重量も増やしたくないからフレーム補強も最小限ですけど、僕たちのステージはストリート。バリバリに補強を入れたカスタムを見て『すげえ』ってね(笑)。他人のやらないカスタムを施すイコール、熱意みたいな時代ですよ。ただ、僕たちはレースからのカスタムに飲み込まれないようにというのはすごく意識していました」

「バイク界にきっかけはあったんですよね。レーサーレプリカでない何かを求めてたこと。その元が中古車だった。あの頃のバイクは、新型が出て型遅れになったら即値段もガクッと安くなって、走るんならそれで十分なんて人が買ってた。性能も実際には新型とそう変わるわけじゃないし。円高で安く買えるようになって、Zなんかも当時はそんな位置づけのバイク。

その上で、レーサーでなくても太いタイヤが履けたら迫力があっていい、カッコいいとかラジアルタイヤ履いてみたいとか、レーサーチックな3本スポークホイールを履いたら速そうに見えるんじゃないかってなる。だから付くかどうかも分からないものを持ってくるのがスタートで、じゃあ、それをどうやって付けようか? ああ、こうしたら付いたなんて、その過程も楽しんだんです」

発信の場、第三京浜には、確かに多くの発信者が集まり、その情報をつかみ取ろうとするファンもあふれた。熱意と言うだけでは足らないムーブメント。自分もやってみようという向きも、珍しさ本位でとにかくあれこれ見たいという向きも、とにかくそこ=保土ケ谷PAに行くのだ、という動き。

「まあ、それぞれのバイクに向けた専用パーツもあんまりなくて。そりゃそうですよね。車検ごとに一度ノーマルに戻さないと通らないなんて時代でしたし。パーツもいいところアメリカのZ用とか、欧州のレーシングパーツ程度。

それでまわりを見渡すと、レースベース車というか、レプリカモデルには速そうで使えそうなものが付いてる。じゃあそれ付けるかって、純正流用するんですよ。RC30のフロントブレーキマスターシリンダ―(いわゆるサンマルマスター)やGSX-Rのニッシン十字ブレーキキャリパー(丸に十字デザイン。「田んぼ」とも)。太いフロントフォークにそれを付けるためのステム、ホイールやスイングアームも格好良かったりするわけで。何が使えるか探しに血眼って感じ」

「で、形になったバイクに試乗してみると、案外いけるんですよ。今のパーツほど調整部分もないけど、流用元の車重なんかが流用先とそう変わらないし、元が割と万人向けだから、大きなズレもない。だから大きな部分、ディメンションなんかが決まってたら、走る。そこは良かったね。 今改めてあの頃=1990年代のカスタムに最近乗ると、ストリート的にはとても乗りやすくてびっくりする時があります。足まわりは市販車用を使うのが割と合ってるのかもしれませんね。ただ当時は気がつかないことも、ひどいバイクもあった。それでいやな思いをした人もいたでしょうけど。

あの頃のに比べると新しいバイクは、伸びしろは少ないんですけれど、やることやできることというのはあるし、そこに次のカスタムの可能性もあるんです。軽くしたり、形を変えたり、もっと高いパフォーマンスだって追える」

▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!

1990年代のカスタム手法は今も応用し提案できる
「新しいバイクや手法を知ることで、今度は昔のバイクに対してあの頃にできなかったこともできるようになるんですよ。Zのエンジンでもギヤポジションセンサを入れればキャブレター車でも点火時期もギヤ段ごとに変えられるようになる。クロスミッションや、削り出しパーツの多くもそうですし、インジェクション化もできる。

流用も、前後17インチにした時はZにはホイールが小さくて見た目のバランスが……なんて言われてた。それだって見た目のバランス取って、切れ込みもなくしてってちゃんと走るのを作ったんですよ。

雑誌『ヘリテイジ&レジェンズ』で紹介してもらってるZ1000Mkllも、そんな中からの提案です。アメリカのドラッグレースにGS(X)1150レーサーがいて、それは1600ccにして600psまで出すようなモンスターなんですけど、古いバイクに最新のパーツと技術を注げばまだまだ新しいことができるという見本。これは1980年代車全体に使えるなあって感銘したんです」

「実際にはナンバーも取って街乗りするつもりですからそこまでドラッグ的にならないでしょうけど、Zでこんなカスタムを作って街を流したら気持ちいいだろうなって。その辺も面白さだと思います。そうした面白さがなければ、今さら1970、1980年代のバイクをわざわざベースにして最速を狙ってやろうなんてしなくていいんですよ。普通にハヤブサやGSX-Rでやればいいし、ラクなんですから」

「カスタムショップの看板を掲げてる以上、次を提案したいのも大きいですけどね。そういう提案をしていかないと、結局どこどこのパーツ付けたからいい、雑誌で見たからあれと同じように作ってくれってなってしまって、カスタム感も薄れていく。定番はありがたくもあるけど、いずれは古くなってしまうんですよ。そこから抜け出る、ほかと違うことをやるのこそ、カスタムだと思います。

それに最近の世界的なカスタムの流れは1970~1980年代車に流用足まわりというのが主流のように見えます。意外な流用もあったり、ブランドパーツを使ってないから、かえってほかと違うものに見えるんでしょう。だからあの頃、1990年代に見たカスタムは逆に新しく見えてきているのかもしれません。 僕たちもそんなことを意識しながら、あの頃のようにわくわくするようなことを発信し、皆とわいわい言える感じで、これからもカスタムを続けていきたいと思います」

取材協力:クラスフォーエンジニアリング
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
※本企画はHeritage&Legends 2019年10月号に掲載されたものです。

▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!

こんな記事も読まれています

【ホンダ フリード 新型】「ちょうどいい」使い勝手と見た目をさらにアゲる、純正アクセサリー公開
【ホンダ フリード 新型】「ちょうどいい」使い勝手と見た目をさらにアゲる、純正アクセサリー公開
レスポンス
日産「新型スポーティ“セダン”」世界初公開! “4連テール”が超カッコイイ! 美ボディすぎる「エポック」中国での発表に反響集まる
日産「新型スポーティ“セダン”」世界初公開! “4連テール”が超カッコイイ! 美ボディすぎる「エポック」中国での発表に反響集まる
くるまのニュース
あんなトラック、こんなトラック、はたらくくるまやデコトラも…ジャパントラックショー2024 開催中!
あんなトラック、こんなトラック、はたらくくるまやデコトラも…ジャパントラックショー2024 開催中!
レスポンス
ボルグワーナーの電動トルクベクタリングとディスコネクト機能を備えた3 in 1ユニットをポールスターに供給
ボルグワーナーの電動トルクベクタリングとディスコネクト機能を備えた3 in 1ユニットをポールスターに供給
Auto Prove
スライドドアのためだったのか!! [新型フリードクロスター]に巨大フェンダーが付いたワケ
スライドドアのためだったのか!! [新型フリードクロスター]に巨大フェンダーが付いたワケ
ベストカーWeb
マイナーチェンジしたばかりのラングラーに試乗できます! ジープ出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
マイナーチェンジしたばかりのラングラーに試乗できます! ジープ出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
LE VOLANT CARSMEET WEB
フェルスタッペン、ライバルからの“レッドブル崩壊説”を意に介さず。しかし自身の去就には含み「世の中に絶対はない」
フェルスタッペン、ライバルからの“レッドブル崩壊説”を意に介さず。しかし自身の去就には含み「世の中に絶対はない」
motorsport.com 日本版
4ローター500馬力のRX-3ワゴンが快音ドリフト!マッドマイクのD1GP復帰戦に注目
4ローター500馬力のRX-3ワゴンが快音ドリフト!マッドマイクのD1GP復帰戦に注目
レスポンス
マツダ「コスモスポーツ」の復活!? ロータリーエンジン&「旧車風デザイン」採用! 300万円台で登場予定も? 「コスモ21」に今でも支持寄せる声
マツダ「コスモスポーツ」の復活!? ロータリーエンジン&「旧車風デザイン」採用! 300万円台で登場予定も? 「コスモ21」に今でも支持寄せる声
くるまのニュース
【MotoGP】クアルタラロ「予選Q2へダイレクト進出……でもどうやったか分からない」フィーリング一変の謎追う|フランスGP
【MotoGP】クアルタラロ「予選Q2へダイレクト進出……でもどうやったか分からない」フィーリング一変の謎追う|フランスGP
motorsport.com 日本版
ラルグスの軽自動車向け車高調キット「SpecK」にホンダ『トゥデイ』用登場
ラルグスの軽自動車向け車高調キット「SpecK」にホンダ『トゥデイ』用登場
レスポンス
追加メーターは雰囲気作りのアイテムじゃない! 純正の警告灯じゃ足りない「エンジンブロー」を防ぐ大切な役割とは
追加メーターは雰囲気作りのアイテムじゃない! 純正の警告灯じゃ足りない「エンジンブロー」を防ぐ大切な役割とは
WEB CARTOP
ダイハツ「斬新オシャレ軽トラ」がスゴい! “丸目”レトロデザイン×屋根なし仕様!? めちゃカワイイ「バスケット」とは
ダイハツ「斬新オシャレ軽トラ」がスゴい! “丸目”レトロデザイン×屋根なし仕様!? めちゃカワイイ「バスケット」とは
くるまのニュース
自動車レースはゴルフのように男女別にすべきか。“変革期”の今だからこそ聞く、女性モータースポーツ界の目的地
自動車レースはゴルフのように男女別にすべきか。“変革期”の今だからこそ聞く、女性モータースポーツ界の目的地
motorsport.com 日本版
圏央道に「インターもう1つ!」千葉県&成田空港が要望 “アクアライン直結”目指す新IC構想とは
圏央道に「インターもう1つ!」千葉県&成田空港が要望 “アクアライン直結”目指す新IC構想とは
乗りものニュース
マツダが“赤い”新型「和製スポーツカー」実車展示! “市販化”進むロータリーマシン!  RX500&RX-EVOLVとの関係は? 白もある「アイコニックSP」とは
マツダが“赤い”新型「和製スポーツカー」実車展示! “市販化”進むロータリーマシン! RX500&RX-EVOLVとの関係は? 白もある「アイコニックSP」とは
くるまのニュース
ホンダが「アウトドアにちょうどいい」小型ミニバン初公開! アクティブなルックスの「フリードクロスター」は“SUVのようなゴツさ”が魅力的
ホンダが「アウトドアにちょうどいい」小型ミニバン初公開! アクティブなルックスの「フリードクロスター」は“SUVのようなゴツさ”が魅力的
VAGUE
初めてバイクを買う人必見!新車と中古車のメリット・デメリット
初めてバイクを買う人必見!新車と中古車のメリット・デメリット
バイクのニュース

みんなのコメント

29件
  • 悪辣なショップも多かったなぁ~
  • 雑誌、イベント等で見かけ、性能や安全性より、馬力、見た目、スピードが正義
    冷静に考えると、80年代の大型バイクに180のリアタイヤが必要か?って話し
    でも、その時は必要であったのさ…
    20年以上経過したんだなと刻の進む速さに驚いた
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村