主要ラインナップを完成させる最後の1台
執筆:Matt Prior(マット・プライヤー)
【画像】新型登場 テスラ・モデルYとモデル3 欧州で競合するクロスオーバー純EVと比較 全112枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
テスラ・モデル3についてご存知なら、モデルYのことも既に多くをご存知だといえる。テスラのS、3、X、Yという4種の主要ラインナップを完成させる最後の1台だ。
ちなみに本来、モデル3はモデルEを名乗る予定だった。だが、フォードが名前の権利を握っており、使用できなかったという。
このモデルYは、コンパクトサルーン、モデル3のクロスオーバー仕様といって良い。英国価格は5万4990ポンド(852万円)から。納車は2022年の初めから始まるという。
ボディサイズはモデル3よりひと回り大きい。全長は4750mm、全幅は1920mm、全高は1624mmとなり、56mm長く、70mm広く、181mm高い。最低地上高は27mm持ち上げられ167mmへ増え、残りは車内空間に充てられている。
まずは写真をご覧いただこう。見た目の印象はいかがだろうか。同僚の1人は、ビデオゲームに登場するクルマのようだと話していた。あるいは、自動車保険のTVCMに登場する、ブランドが隠された匿名モデルのようにも見える。
恐らく、わたしたちはまだフロントグリルのないクルマに慣れていないのだろう。テスラのオーナーなら、見慣れたスタイリングだと思うが。
英国へ導入されるモデルYには、2つのバージョンが用意される。どちらもデュアルモーターで四輪駆動だ。パワーで劣る方が、航続距離の長いロングレンジ。今回試乗したモデルYだった。
ツインモニターで440ps、航続距離506km
フロント側よりリアモーターの方がパワフルで、2基合わせて440psの最高出力を発揮する。0-100km/h加速は5.0秒、最高速度は214km/hと、ロングレンジでも充分に速い。
パワーで勝る方は、モデルY パフォーマンスと呼ばれる。システム合計で490psを発揮し、0-100km/h加速は驚きの3.7秒へと短縮される。
内臓が偏るような勢いで加速を披露するSUVは、必要ないと考える読者もいると思う。筆者も賛同する。
だが実際のところ、高速走行から減速する際、運動エネルギーを可能な限り多くの電気へ変換するには、高性能なモーター・ジェネレーターが必要になる。回生ブレーキの性能を高めると、結果として最高出力も増えるという仕組みなのだ。
モデルYの加速力や最高速度、航続距離などをモデル3の同等グレードと比較すると、若干低いことがわかる。その理由は、クロスオーバーとして大きくなり、車重が2003kgへ増えていることが1つ。また正面面積が大きくなり、空気抵抗も増しているのだろう。
そうはいっても、ロングレンジの航続距離は公称で506km。今後、もう少し伸びる可能性もある。テスラはバッテリー容量を公表していないものの、情報ではグロスで79kWh、実容量で約75kWhを備えるようだ。
大きなバッテリーは前後タイヤの間、フロア下に敷き詰められる。充電ポートはボディの左後ろ側。DCの急速充電器なら最大250kW、ACなら最大11kWで充電が可能となっている。
パッケージングを活かし7シーター版も
サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式で、リアがマルチリンク式。コイルスプリングに、アダプティブではない通常のダンパーが組まれる。
ホイールは標準で19インチ。試乗車は、オプションの20インチを履いていた。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツEVで、255/40という肉薄なものだった。
駆動用バッテリーとモーターの搭載位置のおかげで、モデルYで利用できる空間は広い。フロントのボンネット内には117Lの荷室があり、リアシートの後ろ側は854Lの大容量。リアシートを折りたためば、さらに巨大な2100Lの荷室空間を生み出せる。
荷室床面が高く、その下側にも広めの荷物入れがある。充電ケーブルをしまうのに便利だろう。英国仕様の定員は5名。7シーター版も他の市場では提供されるが、英国への導入は未定のようだ。
モデル3より全高が増したことで、乗員空間の頭上も広々。開閉しないが巨大なグラスルーフも備わり、車内には開放的な雰囲気がある。
ダッシュボードには、つや消し処理されたウッドパネルがあしらわれ、ブラシ仕上げのアルミ・トリムやシルバーに塗られたプラスティックなどが点在。これらは、モデル3と共通する処理だ。スイッチ類やリッドなどは殆どない。
運転環境や装備類もモデル3と近似する。運転席まわりの造形は非常にクリーンで、ドアとウインドウ用のスイッチがシンプルにあるだけ。ステアリングコラムに2本のレバーがあり、ステアリングホイールに2つのマルチファンクション・ダイヤルが備わる。
この続きは後編にて。
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