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そこまで世話焼いてくれるの? やや「やりすぎ感」のあるクルマのおもてなし装備

掲載 更新 12
そこまで世話焼いてくれるの? やや「やりすぎ感」のあるクルマのおもてなし装備

 オートライトやリアバックカメラなど、次々と「あれば便利かもしれないけど……」的なおせっかいな装備が日本のクルマに義務づけられるようになってきています。

 その前にドライブレコーダーや緊急脱出ハンマーも義務化するべきではないかと思いますが…。

ガバっと開きすぎて怖い…どうにかなり…ません!! クルマのドアの開く角度が調整できない事情

 そこで、欧州やアメリカなど世界ではどんな装備が装着義務化されているのかを含め、日本車、外国車のややおせっかいとも思える装備についてまとめてみました。

文/柳澤隆志
写真/トヨタ 日産 ホンダ スズキ メルセデスベンツ テスラ

【画像ギャラリー】便利? それとも…余計なお世話?? いろんなクルマのおもてなし装備を見る

各国で先進安全装備の義務化が進む

新型車は2022年5月から、継続生産車は2024年5月から義務化されるバックカメラ。新型フィットにはバックカメラの上部に高圧ノズルが付いており、高圧の空気が水滴を吹き飛ばし、雨の日のリアカメラ映像をクリアにする機能もついている

 技術の進歩に伴いさまざまな運転支援装備が続々と開発される中で、事故を防ぐためにそれらの装備を各国で義務化する動きが強まっている。

 意外だがエアバッグは日本では装着を義務付ける法的根拠はなく、あくまでもシートベルトの働きを補助する装置という位置づけ。だが法で決まっていなくても実質的にほぼすべての新車に装備されている。

 近々ではオートライト(新型車は2020年4月から、継続生産車は2021年10月から)や衝突被害軽減ブレーキ(同2021年11月、2025年12月)、バックカメラ(同2022年5月、2024年5月)など、続々と法律によって安全装置が義務付けされたりされる予定になっている。

 自動車の安全基準については国際的に足並みをそろえているので欧米でも基本的に同様の規制が導入されているが、2022年5月に導入される欧州の新規制を調べていくと、その厳しさには驚かされた。

 先進自動緊急ブレーキ、車線逸脱警告、居眠り・よそ見警告、緊急停止合図、バックカメラもしくはバックセンサー、事故データ記録装置の新車装着が義務化される。

 さらにGPS情報と速度標識情報から速度違反を感知すると車内で警告が鳴りっぱなしになる速度警告装置、運転前に呼気を吹きかけないとエンジンが動かず飲酒を検知したら運転できなくなる装置の新車装着なども義務化される。いやはやなんとも厳しいご時勢である。

 このような安全に関する装置が各国で続々と義務化される中、違う意味でややおせっかいかも、とも思えるような機能が付いたクルマが目につく。そんな「世話焼きかあさん」のようなやや「やり過ぎ感」のあるおもてなし機能がついたクルマをまとめてみました。

ホンダ新型ヴェゼル 「そよ風アウトレット」

通常のエアコンの吹き出し方と「そよ風アウトレット」をスイッチで切り替えることができる

吹き出された冷風は人を直撃するのではなくわきを通り、車外からの伝導熱や窓からの熱を放散

 暑い夏、汗をいっぱいかいてクルマに乗り込みエアコン最強に効かせたら超涼しくていい感じ!そしてそのまま走っているうちにシャツの汗が冷え、慌ててエアコン弱めてももう遅い。

 お腹痛くなってトイレ行きたくなって焦る…。こんな経験ありませんか?また冷え性の方でエアコンが苦手な方も多いはず。

 そんな方への画期的なおもてなしが新型ヴェゼルに搭載された「そよ風アウトレット」。

 この手のおもてなし装備といえば、1983年に登場したクラウンから採用した、エアコンのエア吹き出し部に装備され、送風を左右に振り分ける「電動スウィングレジスター」が思い浮かぶ。

 室内全体にムラなく風を送り、快適な空調環境を実現すると謳う機能(スイッチON時のみ作動)だが、新型ヴェゼルのそよ風アウトレットはどんなものなのだろうか?

 新型ヴェゼルの「そよ風アウトレット」はフロントパネルの左右、ドアに一番近いメーターの高さのところにあるエアコンの吹き出し口からの冷気を乗員の顔や身体に直接当てることなく、空気の膜で包み込むように冷やす優れもの。顔のお肌の乾燥を気にする女性にもピッタリだ。

 これは冷え性に悩む人が多い日本向けのいい意味でガラパゴス的なおもてなしの気がする。

トヨタセンチュリー 靴べら差し

センチュリーのことなので「人間国宝の匠がタモの木から削り出した靴べら、販売店オプション価格3万円」とかないかと思って念のためオプションリストを見てみましたが流石にありませんでした(笑)

 トヨタの、というより日本を代表する最高級車センチュリー。カタログ冒頭に「匠の技をかけがえのない資産として継承しおもてなしの心をトヨタ随一の高品質に具現化」と書かれている、まさに走る伊勢神宮。

 通常は4層の塗装を熟練工の手による水研ぎと磨きを含めた7層の工程で行う繊細な外装塗装、ピアノ「調」などではなくガチでピアノの塗装をやっているヤマハ(発動機ではなく楽器のほう)が仕上げる本杢パネル、江戸彫金の流れをくむ現代の工匠が手がける手彫りの鳳凰のエンブレムなど手のかかった装備は枚挙にいとまがない。が、普通のクルマにはない「さすが」と思ってしまうおもてなし装備が左右のセンターピラーについている靴べら差し。

 外からの目も気にしなければならずフルフラットで寝転がってお休みになる訳にはいかない貴賓が使われるショーファーカーだけあって、せめて靴ぐらい脱いでゆっくりしたいというVIPの気持ちに寄り添うおもてなし装備かもしれない。

 アルファードの最上級グレードエクゼクティブラウンジはセンチュリー同様ショーファードリブンを前提にしたクルマだが、もちろん靴べら差しはついていない。

レクサスの後席座席の快適装備はおもてなしの宝庫

クライメイトコンシェルジュ機能はレクサス各車に以前より搭載されているがセンサリングと制御のロジック、デリバリー能力が格段に洗練されたものになっている

 「おもてなし」という話題でこのブランドを避けて通るとむしろ不自然で違和感があるというぐらいブランドイメージに「おもてなしのこころ」がしっかりと刷り込まれているレクサス。 

 どの装備を取り上げたらいいのかこちらが悩んでしまうぐらいだが、最新のレクサスLS500/500hの後部座席の快適装備を見てみよう。カタログでは後部座席の仕様説明が前席よりも前にあるぐらい後部座席が重視されている、エクゼクティブのためのクルマだ。 

 あなたがエクゼクティブで、取引先の招待で夫婦でパーティーに出かけるとしよう。奥様は運転手が自宅に迎えに行き、すでにパーティードレス姿でリアシートに収まっている。別の取引先訪問から帰ってきたばかりのスーツにネクタイ姿のあなたは暑くてせっかくのドレスシャツが汗でしわくちゃになりそうだ。

 クルマに乗り込んだらエアコン最強にして汗をひかせたい。だがそれをやったら露出の多いドレスを着た奥様が寒すぎると文句を言う…。 
 
 普通のクルマならマニュアルでエアコンの設定温度を下げ、風量を最大にしてシートベンチレーターを作動させるところだ。そして汗が引いたらそれらを元に戻す必要がある。 

 クライメイトコンシェルジュ機能付きのレクサスなら、外から乗り込んできたばかりのあなたと、先に乗っている奥様の表面温度の違いを感知してそれぞれに違うエアコンディショニングを提供するのだ。

 通常の内気温・外気温、湿度、日光の差し込みぐあいを感知するセンサーによる車両の熱負荷と乗員の温感推定によるエアコン制御に加え、赤外線センサーで後席乗員それぞれの胸部と腹部の表面温度を個別に検知し、綿密なロジックでそれぞれのパッセンジャーに個別に最適化されるようエアコン、シートヒーターとベンチレーション、ステアリングヒーターが全て自動で連動して、何もしなくても乗員一人一人に対して個別性の高い最適化された空調が提供される。  

 普通のクルマだと「暑い、暑い」と言ってエアコンのスイッチを最強にするあなたに寒がりの奥様の冷たい視線が突き刺さり、さらには奥様にも冷気が直撃して会場に到着する前には車内だけでなく夫婦仲まですっかり冷え切ってしまう、という事態が起きるところだが、レクサスならそんな最悪な事態を避けることができる。

 クライメイトコントロール機能自体はかなり前からレクサス各車に搭載されているが、制御ロジックと個別に快適さを届ける技術は格段に進化している。

量産国産車で初めての採用となる電源のON/OFFで瞬時に"見える/見えない"が切り替わる瞬間調光ガラス「UMU(ウム)スマート ウィンドウ」

 またリアシートは48度までリクライニングし、リクライニングの度合いに連動してリアエンタテイメントシステムの11.6インチモニターの角度が調整されたり、降車時にはドアを開けると降りやすい角度までリクライニングが戻るなど、紹介していけばキリがない。

 個別の機能は欧州車でも同様のものは見られるが、パッケージ全体でのおもてなしクオリティはさすがレクサスと思わせるものがある。   

 もう一つ、レクサスの後部座席のやややりすぎ感のあるおもてなし装備で紹介したいのがアジア向けで日本では発売されていない最高級ミニバンのLM300h/350の前席と後席を隔てる瞬間調光ガラス、UMU(ウム)スマートウインドウ。

 マイバッハなどのショーファードリブンのクルマではパッセンジャーのプライバシーを確保するため前部座席と後部座席の間を物理的に遮るパーティションが装備され、スイッチを押すとせりあがる仕組みのものが多かった。

 だがレクサスLMはガラス製のパーティションが、スイッチひとつで瞬間的に透明なガラスから曇りガラスに変化し、「見えるガラス」が「見えないガラス」になる。これは量産国産車としては初めての採用となる機能。

 ガラスとガラスの間に挟まれた不透明な液晶シートに電圧をかけることで液晶分子を整列させてガラスを透明にするという仕組みになっている。   

 ショーファーの視線を慌てて遮らなければならないような緊急事態 (?) に備える、というよりは飛散防止の施されたガラスでスマートにセパレートするということなので、誤解なきよう。

スズキワゴンR アンブレラホルダー

アンブレラホルダーの下には排水用の穴が開いていて車外に水が流れ出るようになっている

 センチュリーに靴べら差しがついているように、ロールス・ロイスのリアのドアには傘が仕込まれている。

 だが我々のスズキワゴンRもおもてなしの気持ちは負けてはいない。左右の後席ドアには濡れた傘を片付けられるアンブレラホルダーが仕込まれているのだ。

 濡れた傘で服やシートが濡れるのを防いでくれる女性に優しいおもてなし装備。

 これだとドアポケットの中が水浸しになるのでは、という心配はご無用、水滴はちゃんと車外に落ちる形状になっている。梅雨の時期にぴったりだ。筆者は全く気にすることなくいつも濡れた傘をフロアに置いているが……。

テスラのドッグモード!?

この写真では英語表記になっているが、日本ではちゃんと日本語で表示されるのでご心配なく

 ここまで日本車を見てきたが、次はクルマ界の異端児テスラを見てみよう。実は日本車以上におもてなし度がすごい。

 まずはドッグモード。犬を連れて出かけ、クルマの中に犬を待たせておく時の機能。

 ただ単純に室内温度を一定に保つだけではなく、ディスプレイに「このクルマのオーナーはすぐに戻ります。ご心配なく! A/Cはオンで華氏70度(摂氏21度)です」というメッセージがでかでかと表示される。

 ワンコやオーナーのためでもあるが、EVだとエアコンがオンになっているかどうかを外から知ることは難しく、外から見た人が動物虐待だと勘違いしないためのおもてなし機能だ。

 次はカラオケ。テスラ流にいうと「Car」aokeだそうだ。プリセットされた曲の中から選んでカラオケができABBAのダンシングクイーンなどが歌えるそうだ。

オーナーズマニュアルには「運転中には絶対にカラオケの歌詞を読まないでください」と書かれているが見るなと言われても…

 充電中に退屈しのぎにやるのはいいかもしれないが、高速道路のSAなどで熱唱しているところを人に見られるのは恥ずかしい。

 これ以外にもクリスマスになるとサンタモードが出現したり、暖炉がスクリーンに表れてシートヒーターと暖房がオンになったりするなどかなりやり過ぎ感のあるユニークなおもてなしがふんだん盛り込まれている。

 テスラは自動車メーカーとしてクルマを作っているというよりはスマホのようにデバイスによる体験をユーザーに提供しているのを象徴しているかのようだ。

メルセデス・ベンツSクラスははるか先をいく

メルセデスベンツSクラスのARナビゲーションはヘッドアップディスプレイ上に表示され、10m前方の道路上に矢印が映し出されて進行方向を誘導

 おもてなし機能といえば日本車の独壇場だと思っていたが、最新のメルセデスのフラッグシップははるか先にいっている、かもしれない。

 「次の角で曲がるのかその次の角で曲がるのかどっちかわからなくなる」、というのはカーナビあるあるだが、Sクラスの場合AR(人工現実)ナビゲーションがヘッドアップディスプレイ上に表示され、10m前方の道路上に矢印が映し出されて進行方向を誘導する。

 ほかにも指を天井から後ろに振るだけでサンルーフが開く、まるで「開けゴマ」の世界だったり、停止しているクルマから降りようとしているときに後方から自転車やクルマが接近してくると警告音と警告灯の点滅で教えてくれる機能など最新のおもてなしがてんこ盛りだ。

 こういうところではこれまでレクサスが世界最先端を行っていたイメージがあったので日本人としてやや残念でならない。

筆者が個人的に欲しいやや「やり過ぎ感」のあるおもてなし機能

アルファードの運転席とセンターコンソールの隙間。ここにモノを落とした時の取り方を説明する動画がYouTubeにアップされているぐらい撮るのが難しい

 これまで靴べら差し、傘置きのようなかなりローテクなものから超ハイテクなものまで様々なおもてなし機能を見てきた。

 筆者はガジェット好きなのでメルセデスのSクラスの最先端のハイテク機能に強く心を奪われるが、実はそれよりもっと早く解決してほしい超ローテクな問題がある。

 それはズバリ、「シートの隙間にモノを落としたときにすぐ取れる設計もしくは落ちない機能」。

 最近シートがフロアに対して高い位置にあったりシートの下にパワーシートのユニットが設置されていたりして、運転席や助手席の隙間に携帯や小銭、駐車券などを落としたらなかなか取れないことが多くなった。

 いいオトナがクルマのドア開けて這いつくばって携帯や小銭を探すというのはやっている本人も辛いし見た目もなかなかキツい。周りが暗い夜だとさらに辛い。

 信号待ちで携帯確認して青信号になったのを気づかず後ろのクルマにクラクション鳴らされて慌てて発進、とかETCの使えない料金所で小銭でおつり受け取る、みたいなシチュエーションでよく落としがちでいくら気をつけていてもやってしまうので、ローテクだがこのおもてなし機能は欲しい。

 自動車メーカーのみなさま、よろしくご検討くださいますようお願い申し上げます。

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