未使用のパルサー(サニー)GTI-Rが出品
執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)、編集部
【画像】出品車両 パルサー(サニー)GTI-R【細部まで見る】 全28枚
ほぼ新車という「日産パルサーGTI-R」が、先月フランスのオークションに出品され話題になっている。
その走行距離は、驚くべきことに136km。
オーナーはパルサーGTI-Rをこれまでに3台所有してきたカーマニアだという。
出品されたのはそのうちの3台目で、オリジナルの公道走行用の装備を保つ個体(それ以外の2台はスノー/グラベル用タイヤ装着)。新車で購入したものの一度も路上に出すことはなかった。
「GTI-R」は、4代目にフルモデルチェンジされた日産パルサーのホットバージョンとして1990年に設定された(欧州名:サニーGTI-R)。
標準車の3ドア・ハッチバックとボディこそ共通だが、ボンネットには巨大なパワーバルジとエアスクープ、ルーフエンドには大型のスポイラーを装着して、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。
ボンネット内に収められたのは、230psと29.0kg-mを発生する2L直4 DOHCターボのSR20DET型。パワーバルジとエアスクープは、エンジン直上にセットされた空冷インタークーラーのためのものだった。
グループAの戦いと技術面のトピック
駆動方式は「アテーサ」と呼ばれるビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WDを採用していた。
実際、1.2トンあまりの車両重量に230psのパワーは十分以上で、0-400m加速は13.5秒という俊足ぶりを発揮。
このスパルタンな設定は、パルサーGTI-RがグループAによるWRC(世界ラリー選手権)参戦のために作られたモデルだった証だ。
当時の最大のライバルは、WRCを席巻していたランチア・デルタ・インテグラーレである。
だが、重いエンジンと補機類などで前後重量配分が前70:後30という極端なフロントヘビーとなってしまい、強いアンダーステアに悩まされる。
グループAのレギュレーションにより、195/55R15以上のサイズのタイヤを装着することが許されなかったことも一因となった。
しかもボンネット内は狭く、エンジンやインタークーラーなどがギッシリ詰まり、ラジエーターもインタークーラーも十分な冷却効果が得られず、持ち前のハイパワーをフルに発揮できなかった。
1991年から鳴り物入りでWRCに参戦したパルサーGTI-Rだったが、1992年のスウェディッシュ・ラリーで3位に入ったのが最高位で、その年限りでWRCから撤退する。
落札価格は500万円オーバー
それでも日本国内においては、全日本ラリー選手権やダートトライアルなどで長く活躍した。
スパルタンなエクステリアに対し、インテリアはセンターコンソールに3連サブメーターが装着されるくらいで、標準車と大きく変わらない。コンペティションユースのベース仕様も設定され、GTI-Rニスモも限定発売された。
ラリー参戦計画のために最低でも5000台を生産する必要があった日産が送り出した本物のポケットロケット。
出品車両は、希少な左ハンドルのヨーロッパ仕様だが、オリジナルの登録書類は紛失。それでもグレーのインテリアと、魅力的なオプションの状態は非常によく、スペアキーもしっかり残っていた。
同オークションが事前に公表した落札予想価格は2万~3万ユーロ(開催日のレートで263万円~394万円)。
現代のホットハッチでは味わえない走りを、新車同様のコンディションで手に入れられるまたとないチャンスとあって、一部カーマニアの視線を集め、最終的に4万528ユーロ(同533万円)で落札されている。
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