「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「マツダ ロードスター(3代目、マイナーチェンジ)」だ。
マツダ ロードスター(2008年:3代目、マイナーチェンジ)
今回の試乗車は、ソフトトップのRS(6速MT)とVS RHT Rパッケージ(6速AT)の2台。まずは開発者の本懐がより強く表現されているであろうソフトトップから乗り込んでみる。
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走り始めてすぐに気がつくのは、シフトがスパッと小気味良く決まることだ。コールドスタート時でも嫌な抵抗感がなく、シンクロ強化の恩恵を感じる。また、ステアリングの操舵感も軽やかで、動きの渋みが取れてよりナチュラルになった。操作系はライトウエイトスポーツのリズム感にふさわしい進化を遂げている。
だが、それ以上に感動したのが高速道路でアクセルを踏み込んでいったときだ。ETCゲートでしっかり20km/hまで減速、そこから本線合流まで2速、3速でレブリミットまで引っ張っていくと、マイナーチェンジ前とはサウンドが明らかに違うことに気がつく。エンジン本体のノイズはクリアになり、「クォーン」という高らかな吸気音が響きわたる。
パワーピークを6700rpmから7000rpmへ、レブリミットは500rpmアップした7500rpmとなった効果も絶大だ。「もう、ひと超え」が欲しかった従来型と違って、ドラマチックに回転が上がっていき、ちょうど美味しいところをしゃぶり尽くしたと感じるタイミングでリミッターにあたるという感覚だ。
アクセルオン時の吸気脈動を増幅させるインダクションサウンドエンハンサーの「聴かせる」システムと、エンジン精度の高まりが見事なハーモニーでロードスターのスポーツフィールを押し上げている。
シャシではフロントサスのロールセンター高を26mm下げるという変更がなされている。そもそも3代目NCロードスターは、欧米での高速走行も考慮してホイールベースが長めだが、十分軽快に曲がる性能を持っていた。今回の変更によってロールの進行とノーズの入り方がより素直になったようだ。また、コーナリング中に路面のギャップを拾ったときなどでも、フロントの落ち着きが増している。
一方のRHTは、ソフトトップよりもしなやかにサスが動く印象。俊敏性ではソフトトップに譲るものの、日常域では快適だ。ATは、Dレンジ走行中でもステアリングスイッチで変速ができるダイレクトモードで、道路状況やドライバーの操作を読み取り的確なギアを自動選択するAAS(アクティブ アダプティブ シフト)も採用している。
ロードスターは、初代の開発時に研究しつくして決定した車両重量やボディサイズなどの大枠を変えてはいない。だから、どのモデルに乗っても得られる幸せに大きな差はないのだが、今回の改良で「時とともに純度は高まる」ということも知らしめた。ポルシェで用いられる「最新は最良」という表現がしっくりくるほど、ロードスターは一本筋の通ったスポーツカーなのだ。
■マツダ ロードスター RS RHT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4020×1720×1255mm
●ホイールベース:2330mm
●車両重量:1150kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:125kW<170ps>/7000rpm
●最大トルク:189Nm<19.3kgm>/5000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●タイヤ:205/45R17
●当時の車両価格<税込み>:286万円
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