ホンダの小型乗用車が本格的に量産をはじめたのは1967年。軽自動車の「N360」からだ。小型乗用車のポジションは時代を経てやがて「シビック」に継承され、20年ほど前(2001年)からは「フィット」が担っている。
ホンダの小型車の歴史を少し振り返った理由はそこに受け継がれたホンダの「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」の存在だ。これは人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとするホンダのクルマづくりの基本的な考え方。
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新型「フィット」の新しさは紹介しきれないほどたくさんある。が、それなのに第一印象は「広い!」。世代を超えて受け継がれるコンパクトなボディに効率のよい広さを保つ思想はホンダのクルマでもサイズが小さくなるほど強まる印象がある。そして試乗を終えた感想は「1クラス上げたなあ」である。
驚くほど視界が広いフロントウインドウ
と言うわけで、4代目となる新型「フィット」の確実な進化は「M・M思想」の懐(空間)の中にあることが特徴である。全長4090mm×全幅1690mm×全高1515mm(一例:HOMEグレードFF)のボディサイズは先代とほぼ同等。初代「フィット」から採用されているガソリンタンクをフロントシート下に配置する“センタータンクレイアウト”構造を引き継ぎ、特にリアシートは、座って良し、畳んで良しの超実用派コンパクトカーとして磨きがかかる。
新型では、さらに“心地よさ”にこだわり、デザインテイストもガラッとモダンに変わった。エクステリアはカラーバリエーションも豊富だ。また「これまでならこのクラスとしてはありえない」と開発者がいう設計から見直されたシートは、座り心地はもちろんファブリックの素材感やレザーとコンビの風合いなどシートでモデルタイプを選びたくなるほどこだわりが感じられる。そして乗り心地や静粛性も高まり洗練度の増した動的性能などにより「フィット」は全身で質の向上が感じられる。
安全と快適さと楽しさに繋がる新型「フィット」の大きな特徴がフロントウインドウの驚くほどの視界の広さだ。従来の視野角が69度なのに対し、新型は90度。新旧を比べれば一目瞭然だが、そうでなくてもこのパノラマ感にはぜひ気づいていただきたい(良いモノは普通に受け入れてしまうものだと思うから)。
フロントウインドウを支える左右のピラー(柱)が従来の半分以下の太さと極端に細く、おかげで死角が軽減されている。例えば、交差点やコーナーでの対向車や歩行者なども発見しやすい。ちなみに衝突に対する安全性は運転席から見て手前、二番目のピラーがその役割を担い、衝突安全性も視覚的な安全性の向上もともに上がっているというわけだ。
燃費性能以上にドライブフィールが進化
少し話がそれるが、そんな視界の下に広がる全席周辺のインテリアのシンプルさがいい。フラットなところ、ラウンド感や膨らみを持たせたいモノとのコントラストとバランスがカジュアルになり過ぎなく質や品を保っている。
続いて動力性能。新型では1.3Lのガソリンエンジンと1.5L+2モーターのハイブリッドが選べるが、とくにハイブリッドの改良がめちゃめちゃ凄い。友達がガソリン車を選ぶと言っても異論はないが「でもね・・・」とささやかな“アドバイス”するのは許してほしいという感じだ。
新型「フィット」からハイブリッドモデルが「e:HEV(イー・ヘブ)」と呼ばれるようになった。HEVはハイブリッドのことで、ポイントは“e”にあり。「フィット」としては初めてモーター駆動を主動力とするシステムに移行。1.5Lエンジンは基本的には電気モーターでタイヤを駆動させるための”動力源“として機能し、EVのように走る。
出足のスムーズな強さや静粛性の高さ、モーター駆動を操るアクセルペダルとのリニアな連携も申し分ない。ただし高速走行時は燃費効率に優位なエンジン主体の走行となる。強い加速を求めると、エンジンが高回転に高まるがノイズも気になるレベルではない。そんな「e:HEV」で参考までにいま最も人気のHOMEモデルのFFの燃費がJC08モードで38.6km/Lと燃費性能も向上。ドライブフィールの向上ぶりが燃費以上に増しているから魅力的なのだ。
車体ではEV走行が静かであるために静粛性を高めるシール材なども増し、ボディ剛性やサスペンションの剛性も高められ、快適さをより実感できるボディ剛性もサスペンションの剛性も高められている。ホンダ車で剛性が高いというと少し前は堅くコツコツとした乗り心地をこれまでは印象があったけれど、この1~2年は街中から高速走行まで広い範囲でサスペンションが最適なストロークをしてくれるから乗り心地よく、ハンドリングにも優れたクルマを身近な快適さに取り入れることができるようになっているのだ。
参考までにVWのコンパクトカーの骨太感を少し差し引いた感じだ。「フィット」はモーター駆動もポジティブに作用している分、軽快。街中のスイスイ感は必(体)験だ。VW系のシフトチェンジでトントンとリズミカルに切り替わる子気味良さもいいが、アクセルを踏めば踏んだだけ実トルクを引き出せる「フィット」の加速&走行フィールも新型は秀逸だ。
全車標準装備の「HONDA SENSING」はやっぱり魅力
安全運転支援システム「HONDA SENSING」の装備の充実ぶりはぜひ詳細をWebなどで確認してみてほしい。新機能としては踏み間違い衝突軽減システムの飛び出さない、不意の工程の抑制、ぶつからない、衝突軽減ブレーキの前方/左右の対向車の衝突回避などがある。これは従来のカメラと比べ視野角の広い高性能カメラの採用による性能の向上だ。
あえて気になる点を加筆するなら、前車追従機能つきクルーズコントロール(ACC)のレーンキープ機能がもう少しスマート=自然だといいと思った。走行中の様々な状況に応じた制御がドライバーをサポートしてくれるのはとても嬉しい。しかもここで紹介した技術を含め「HONDA SENSING」は全車標準装備なのだ。171万円から購入できる「フィット」にこれだけついてれば安心というわけではない正しい装備が付くのだから私の気になることなど取るに足らないことだ。が、褒めてばかりだとなんなのでお伝えしておきます。
5タイプから選べる絶妙なバリエーション
モデルタイプはベースのBASIC、デザイン性と実用的な快適さをバランスさせたHOME、フィットネス=スポーティなイメージをデザインと装備で楽しめるNESS、ロードクリアランスが30ミリ高い(タイヤの外径で10ミリ、サスで20ミリ)SUVテイストのCROSSTAR、ダウンサイザーにも満足してもらえるようにと、装備の質実を充実させたLUXEの5タイプ。
そして、動力はそれぞれのタイプに1.5Lエンジン+2モーター(を採用する「e:HEV」と1.3L(98ps/118Nm)のガソリン車をFF/4WDともにラインナップ。ちなみに先代には存在した“RS”=マニュアルトランスミッションを搭載するスポーツグレードは登場の予定はないそうだ。ただし本質的な動力性能は確実に向上しているのでスポーツカーではないが基本性能の高いクルマとして運転好きの方もきっと不満はないだろう。様々な性能について紹介していこう。
新しいデザインテイストを取り入れた新型「フィット」のモデルタイプバリエーションは実に絶妙。SUV系に興味のある方、ちょっとロードクリアランスが高いと嬉しい方にはCROSSTARの個性は内外装ともに魅力的だろう。個人的にもこれでAWD採用する「e:HEV」があれば大概のシチュエーションも頼れる気がしている。が、タイヤをやや大径にしているせいもあるのか、少し乗り心地がコツコツ系の堅めな印象を受けた。
ダウンサイザー方もどのタイプでも基本的な質実性は受け入れられるはず。しかしLUXEの本革とファブリックを組み合わせたフランスとドイツの良いテイストを取り入れたような内装のしつらえ具合も気に入るかもしれない。
ボディサイズは変えず、性能や感性の品質を1クラス上げた新型「フィット」。これまで「フィット」に触れたことのない方はもちろん現ユーザーの方にとっても日常使いのコンパクトカーの価値観が変わるかもしれない。
■関連情報
https://www.honda.co.jp/Fit/
文/飯田裕子(モータージャーナリスト)
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みんなのコメント
変なコメントばっかりだね。
シフトもちゃんとオーソドックスなものに戻してるし好感。
やんちゃなスポーツが売りでもない普通の脚車なんだから
主張しすぎるデザインや男っぽいデザインは合わないでしょ。
批判者はどんなのが好みなの?
具体性を欠くコメントはガス抜きにしか見えないんだけど。