ドアはクルマの個性を主張する最高のアイテムということで、『ガルウイング呼ばれがちだけど厳密には違うドア』を展開。
ここでは『百花繚乱、千紫万紅 クルマの進化はドアの歴史!! 時代の闇に消えた変わり種ドア 9選』を展開していく。
安かろう悪かろう?? すでに日本車に追いついた?? 韓国車の欧米での現状と今後
ただ外側に開くだけのドアのように見えて実は奥深い仕掛けが隠されているドア、ガルウイング、シアードアの存在感もかすむ、というインパクト抜群の開閉方法のドア、利便性の追求の結果誕生したドアなどなど、これまで市販化されたいろいろなタイプのドアを見ていこう。
スペシャルなドア=超がつく高級車、というイメージは決して間違いではないが、安いクルマにだって個性的なドアが装着されているケースは多々ある!
文:ベストカーWeb編集部/写真:SAAB、Toyota、Rolls Royce、Honda、BMW、Micro Mobility Systems、Aston Martin、Mercedes-Benz、平野学、ベストカー編集部
見慣れたものから、超レアなものまで一挙に紹介!
■スライドドア
元々は商用車に採用されていたスライドドアだが、日本のミニバンブームに端を発し、現在の日本車のドアでは一大勢力を誇っている。常用タイプミニバンのトヨタウィッシュ、ホンダストリーム、オデッセイが普通のドアだったから人気が激減したと言われるほど。
スライドドアは、商用車は両側、乗用車は左側のみ、という常識だったのをブレークしたのが、1982年にデビューした日産プレーリー(初代)で、FFの乗用車ながら両側スライドドアをいち早く採用。しかもセンターピラーレスを採用していたため、優れた乗降性を誇った。
スライドドアはミニバンの必須アイテムで、今では両側電動は当たり前になっていて、軽自動車やハイトワゴン系モデルなど、こぞって採用している。しかも挟み込み防止など、センサーをフル活用することで安全性も高めている。
今後最も進化することが予想されるドアで、どんな新機構が盛り込まれるかにも注目だ。
■キャノピードア
ドアというよりも、ルーフ部分開くといったほうがいい。ドアと一体になったルーフ部分がガバッと開く様はなかなか圧巻なものがある。キャノピーとは、小型航空機などの操縦席上部を覆う蓋のことで、クルマではルーフ+ボディの一部を指す。
今までこのキャノピードアを採用した量産車は存在しないが、VWビートルをベースにしたキットカーのスターリングノヴァなど少数ある。
見た目のインパクトから、モーターショーのコンセプトカーには比較的採用されたケースがあり、有名なところではサーブエアロX、トヨタのCamatte(カマッテ)などがある。
イケイケのトヨタには、ぜひともCamatteの市販化をお願いしたい。
■観音開きドア
日本でも一時期流行した観音開きドアだが、現時点でカタログモデルでは存在しない。前のドアは前ヒンジ、後のドアは後ヒンジで、開口部が広いのが最大のメリット。マツダRX-8はリアシートの乗降性を高めるために採用。
日本車で観音開きといえば、初代トヨペットクラウン(RS型)が有名で、それをオマージュした復刻モデル、トヨタオリジン(2000年登場)も観音開きドアを採用していた。
そのほか同じくトヨタのbBオープンデッキ、ホンダエレメントなどがある。
世界に目を移せば、観音開きの権化といえばロールスロイスで、ファントムなどに採用している。これほど観音開きが似合うクルマもない。
■スーサイドドア
スーサイド(suicide)とは自殺の意味で、スーサイドドア=自殺ドアとえらく物騒な名前になる。風圧でドアが開いて危険で簡単に死ねる、という考えからこんな物騒な名前が付けられたという説もあるが詳細は不明。
このスーサイドドアは、フロントドアの場合は後側にヒンジが装着されているため、普通のドアと逆の開き方をするのが特徴。観音開きのリアドアもスーサイドドアということになる。
今ではほとんど見ることのないスーサイドドアだが、1960年代ではごく当たり前のドアで、スバル360もスーサイドドアを採用している。
現代のクルマでスーサイドドアの代名詞となっているのが、ロールスロイスだ。ロールスロイスでは、コーチドアと呼び、レイスなどに採用して個性を主張し、ほかの高級車と一線を画した存在感を放っている。
ロングドレスの女性がエレガントにクルマに乗り降りできるようにとの配慮がなされているというのが、いかにもロールスロイスといったところ。
■前面開きドア
これは『初見殺しドア』とも呼ばれ、フロントがまるで冷蔵庫のドアでも開くがごとくガバッと開き、クルマに乗り込むというもの。
イソイセッタ(後にBMWブランドで販売)の最大の特徴であるこのドアにはステアリングなども装着されていて、ドアを開くとステアリングごと開く、といのがこれまた凄い。
乗降性を高めるといはいえ、その発想には脱帽。
イソイセッタ、BMWイセッタを購入することは金額、タマ数両面でかなり難しい。しかし、イセッタのデザインイメージ、前面開きドアを忠実に現代の技術で再現したスイス製EVのマイクロリーノに注目が集まっている。
■横開きドア
前面開きドアのイセッタ同様に『初見殺しドア』なのが、横開きドア。ボディ右側にヒンジが装着され、ボディカウルが
採用した市販車はクラシックカーばかりで現代のクルマは皆無だが、有名なのはメッサーシュミットKR200。オーナーがよっこらしょ、っとキャビン全体を開けて乗り込む姿を想像するだけで、気分がホッコリとする。
■スワンウイングドア
アストンマーティンが特許を取得しているドア。一見普通の前ヒンジドアと変わりがないように見えるが、ヒンジに12~14度の角度がつけられているので、ドアを開けると、少し斜め上方向に開く。派手さはないが優雅なドアだ。
アストンマーチンがこのドアを採用しているのは、最低地上高が低く、ドアが長いため、ドアを開けた時に縁石などにドア下部が擦らないようにという配慮から。
このスワンウイングドアと同じタイプのドアをマツダが開発中で、マツダの場合は5~15度上方に開くタイプとなっている。ロータリースポーツが復活する際に備えて開発中であると期待。
■引き込み式ドア
この引き込み式ドアはBMW Z1(1989~1991年)が採用したドアで、サイドシルにドアが収納されるという珍しいタイプのドア。後にも先にもこのドアを量産市販車が採用したのはZ1のみ。
このドアは、電動でドアが上下することで乗降することができる。ドアを開けたままの状態は、あたかもドアがないように見える。
ドアを開けたままの状態で当時の側面衝突の安全基準を満たしていたという。
■ドアなし
本来あるべきものがない、というのはある意味究極の個性かもしれない。
日本車ではバモスホンダ、ダイハツフェローバギーの2台は、ドアと呼べるものは存在しない。また、三菱ジープ、スズキジムニー(初代)には、ドアのないモデルが存在した。
新しいところでは、スマートクロスブレード。ドアもなければ屋根もない、特異なクルマで、ベストカー本誌の連載でもおなじみのテリー伊藤氏が当時最もほしいクルマの1台に挙げていた。実際、日本でも限定販売され完売(1回目25台、2回目34台の合計59台)するほどの人気だった。
クロスブレードは側突基準が厳しくなった21世紀に登場したというのがすばらしい。現在はさらに側突基準が厳しくなっているのでもうこんなクルマの登場は期待できないのが悲しい。
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