観客用駐車場も自動車イベントの見どころ
自動車イベントの醍醐味は駐車場にある。7月11日から14日にかけて英国で開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2024(Goodwood Festival of Speed 2024)」にはたくさんの見どころがあったが、ここに集まった観客たちのクルマも凄かった。
【画像】「ウェッジシェイプ」のド迫力ボディ!【デ・トマソ・パンテーラとランボルギーニ・カウンタックを写真で見る】 全33枚
グッドウッドには世界中から毎年20万人の人々が巡礼に訪れる。彼らの乗ってくるクルマは、イベントのメイン展示にも引けを取らないスター揃いである。その写真を撮らせていただいたのでここで一部を紹介したい。
ポルシェ911ダカール
最初にご紹介するのは、992型911ダカールである。限定2500台のうちの1台で、959を模したロスマンズのカラーリングで仕上げられている。
通常、市販車にレーシングカラーを施すことには懐疑的な人もいるだろうが、この911ダカールはパリ・ダカールラリー参戦車両のように説得力のある仕上がりになっている。悪路に適した最低地上高、四輪駆動、牽引フック、オフロード対応のタイヤを備えている。
イーグル・スピードスター
「ゴージャス」という言葉では物足りない。スピードスターは、ジャガーEタイプ・ライトウェイトの美しいラインを、繊細な芸術作品へと昇華させたレストモッドだ。
パネルがボディを優しく包み込み、それでいて自信に満ち溢れている様子は、写真で見るのもいいが、実際に見ると本当に魅了される。新車時の価格は65万ポンド(約1億3000万円)だったが、現在では1桁多い額で取引されている。
ケーニグセグCCX
CCXは今や旧式のハイパーカーだが、どちらかといえば、2006年の発売当時よりも良く見える。現在のハイパーカーは、とんでもないウィングや大量のカーボンファイバーなど派手なディテールに支配されているが、CCXは美しくクリーンでシンプルだ。
このタンの内装をブルーの外装で包んだ上品な仕様は、繊細と言ってもいいだろう。4年間に29台が生産され、これは8台しかない右ハンドル車のうちの1台である。
ミラージュ・カウンタック
世界の高価なエキゾチックカーに混ざって、自信たっぷりに鎮座しているのはランボルギーニ・カウンタックのレプリカである。
ただし、MR2などの中古車ベースのレプリカではない。特注のスペースフレームに、細部まで作り込まれたグラスファイバーのボディワーク。富とオートクチュールを見事に表現しているようだ。
間近で見るまで、編集部もこれがレプリカだとは気づかなかった。エンジニアリングには、リー・ノーブル氏が関わったとされている。そのため、レプリカでありながら今でも5万ポンド(約1000万円)以上の値がつくことがある。
フォルクスワーゲン・コラードVR6
広大な駐車場で編集部の目を引いたのは、(本物であれ偽物であれ)大金持ちのスーパーカーだけではない。味のあるモダン・クラシックもたくさん見られた。例えば、タンにグリーンを組み合わせた90年代トップレベルのハンドリングを持つコラードVR6だ。
この車両は同年代の993型911ターボの隣に停まっている。どちらも6気筒を積んでいるものの、似ているのはそこだけだ。
BMW Z8とM5 CS
多くの人にとって夢のガレージは、こんな感じかもしれない。F90型M5は、特に635馬力の「CS」では、強打者からクルーザーまで完璧なジキルとハイドを演じられるスーパーセダンである。かたやZ8は魅力的なアナログV8マニュアル・ロードスターである。
この2台が数年違いにしか見えないのは筆者だけだろうか? Z8のネオンライトのおかげで、特にリアからは同世代のように見える。
アルファ・ロメオ156 GTAスポーツワゴン
ブッソ・エンジンを搭載し、ワルテル・デ・シルヴァ氏がデザインしたイタリア製の高性能マニュアルワゴン。確かに、信頼性では劣る面があるだろうし、250馬力のパワーを路面に伝えるのに苦労することもあるだろう。
セダンよりもトランクが小さいことや、坂道を走ると燃料計が満タンだと勘違いしがちなところなど、イタリアらしさもある。
メルセデス・ベンツSLRマクラーレン by MSO
新車で50万ドルもするクルマの魅力をどうやって高める? 2台を隣り合わせに並べ、マクラーレン・スペシャル・オペレーション(MSO)の息を吹き込むのだ。
MSOのアップグレードは、(カラム・ヴァンキッシュ25とは異なり)サスペンション、エアロ、エグゾーストなどさまざまなパッケージが用意されている。見た目と同様に現代的な走りにすることができる。
BMW M3ツーリング by Pit+Paddock
先ほどのSLRは、メーカーが自社モデルのさらなる改良に取り組んだ結果である。では、サードパーティが挑戦した場合はどうなるか? あまり制約を受けずに、少しクレイジーになることができる。
例えば、M3 GTSワゴンに変身したこのE91型3シリーズ。BMWはこの世代のM3ツーリングを1台たりとも生産していない。オレンジのペイント、ゴールドのホイール、キャンバー、そしてボアアップされた4.6L V8自然吸気エンジン「S65」を備えたこのようなクルマが、ミュンヘンから出てくるとは想像できない。
デ・トマソ・パンテーラ
これほど堂々としたクルマがあるだろうか。ロイヤルブルーの塗装とクリームレザーのおかげで白手袋をはめたような気品を漂わせながらも、ブリスターフェンダー、ディープディッシュ・ホイール、ピクニックテーブルのようなリアスポイラーがギャングスターを思わせる外観を作り出している。
70年代や80年代のイタリアン・スーパーカーよりも、もう少し実用的なものをお望みなら、信頼できるフォード製V8を搭載したパンテーラがおすすめだ。
ヒョンデ・アイオニック5 N
2024年のAUTOCARアワードで「ベスト・パフォーマンス・カー」の栄誉に輝いたアイオニック5 Nが、熱心なファンたちの手にわたり、定期的に見られるようになるのは時間の問題だろう。
448kmの航続距離、広いトランク、ゆとりある後席スペースのおかげで、日常的に使えるだけでなく、有能かつ魅力的なサーキットカーにもなる。疑似変速とドリフトモードは、単なるギミックに聞こえるかもしれないが、実際に機能するし、楽しい。十分遊んだらオフにすることもできる。
TVRタスカン・スピードシックス
ピーター・ウィーラー氏がTVRを所有していた狂気の時代に生まれたタスカン。狂っていて、不良で、触れるのも危険なクルマだった。
自社設計の直列6気筒エンジンは350馬力から440馬力を発生し、わずか1100kgの車重を誇った。タスカンがマスタングやAMG C 63、さらにはアウディR8を凌駕している動画をネットで見つけるのは簡単だ。トラクションコントロールもアンチロックブレーキもなく、すべてがドライバーの手に委ねられていることを覚えておいてほしい。
フェラーリ・プロサングエ
英語のバイオレット(violet)は慎み深くおとなしいものの象徴として使われることもあるようで、「引っ込み思案」のことを「Shrinking violet」と書いたりする。しかし、このバイオレットカラーのプロサングエは決しておとなしいものではない。
ベントレー・ベンテイガやランボルギーニ・ウルスのようなライバル車ほど大きく派手には見えないが、実物は圧倒的な存在感がある。しかし、自然吸気V12の始動音を聞くことができなかったのは残念だ。
ジャガーFタイプ・プロジェクト7
ジャガーDタイプへのオマージュとして考案されたこのモデルは、250台の限定生産車となった。スピードスターの外観と左右非対称のヘッドレストはそのままに、13万ポンド(約2600万円)で販売された。
すぐに完売となり、現在でも同様の価格で取引されている。
プジョー106ラリー
「引き算の美学」はまさにここにある。特別仕様車106ラリーには、8バルブ、シングルオーバーヘッドカム、1.3Lの4気筒エンジンが搭載されているだけだが、7200rpmまで回転させながら100馬力を引き出すのはとても楽しい。
このモデルはシリーズ1で、車重はわずか825kg、0-100km/h加速は9.6秒という俊足だ。
(記事は「観客のレベルも高いって! 欧州のイベント駐車場が凄かった件 後編 初代NSXから東欧マイナー車まで」に続きます)
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マイナーな車種も大事にする文化は日本以上かな。
社外品の流通部品も多く 純正すらネットで簡単に買わせない日本とは違う。