欧州委員会が2021年の乗用車の平均CO2排出量を95g/km以下とし、その後も2025年にはさらに15%減、2030年には37.5%減(いずれも2021年比)と、現時点ではますます厳しくなる方向であるため、ヨーロッパの自動車メーカーは、どこも2018年あたりから電動化を強力に推し進めている。
なかでもアウディは、早い段階からバッテリーEV(BEV)の開発を進めていたメーカーで、2018年秋にe-tron SUVを発表。翌2019年秋にはそのクーペバージョンのe-tronスポーツバックを追加し、2019年には世界で2万6000台を販売。2020年上半期にも1万7700台を顧客の元へ届けるなど、EV市場で存在感を見せている。ちなみにアウディは、2025年までに20モデル以上のBEVを市場に投入して、全販売台数の約40%を電動化モデル(PHEV含む)とすることを目指している。
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国内導入はスポーツバックから2020年9月に日本に導入されたのは、後から追加されたSUVクーペのe-tronスポーツバックで、年内の販売目標は200台と控え目だ。ヨーロッパでは2019年後半あたりから購入インセンティブの拡大もあって、BEVの販売が急激に伸びているが、日本市場はヨーロッパと道路や住宅の事情が違うこともあって、BEVの普及に立ちはだかる壁はまだまだ高い。
すでに上陸しているジャガーIペイスやメルセデス・ベンツEQCなどが苦戦していることを考えれば、e-tronスポーツバックは1327万円(バーチャルエクステリアミラー仕様は1346万円)と価格も高いだけに、この販売目標台数も現実的な数字と言っていいだろう。ちなみにe-tron SUVは、2021年にも日本市場に導入予定となっている。
導入記念モデルの1stエディションを試す今回試乗したのは、導入記念限定モデルのe-tronスポーツバック1stエディション。ボディサイズは、全長4900mm、全幅1935mm、全高1615mmとかなり大柄だ。アウディのフラッギシップSUVであるQ8と比較すると、95mm短く、75mm背が低い。2930mmのホイールベースはQ8より65mm短い。ちなみにプラットフォームは、A4からA8、Q5、Q7、Q8、さらにはポルシェ・カイエンやランボルギーニ・ウルスまで幅広く用いられている、VWグループのMLB evoを採用している。
電気モーターは、前後アクスルに各1基の計2基を搭載。つまり電動4WDの“クワトロ”である。最高出力は300kW(407ps)、最大トルクは664Nmだ。
フロア下に搭載されるリチウムイオンバッテリーは、エネルギー容量95kWh(86.5kWh使用可能)と大きい。約700kgのバッテリーを含む車両重量は2560kgとかなりの重量級だが、0~100km/h加速は5秒7(Sモードでのブースト時、通常は6秒6)、フル充電時の航続距離はWLTCモードで405kmとなっている。
充電は最大8kW(日本では現在最大6kW)の普通充電と、最大50kWの急速充電(CHAdeMO)に対応。50kWの急速充電なら、1時間半で80%まで充電可能となっている。
エクステリアは、プラチナグレーの8角形シングルフレームグリルで、Qモデルとの繋がりとEVであることを主張。力強く張り出した前後フェンダーはパワフルなクワトロをイメージさせる。滑らかに弧を描くルーフや後端がキックアップしたサイドウインドー形状はとてもスポーティで、低く構えたそのプロポーションは、まさにSUVクーペと呼ぶにふさわしい。ドアミラーの代わりに装備するアウディ初のバーチャルエクステリアミラー(オプション)も、先進的なイメージを際立たせている。
インテリアも、バーチャルコックピットやセンターの2段構えのタッチディスプレイ、左右のドアトリムに備わるバーチャルエクステリアミラーのモニターなどがハイテク感を醸し出す。物理スイッチは最小限で、とてもスッキリした印象だ。
意外なほどスポーティドライビングポジションは、SUVの割には若干足を前方に投げ出す乗用車的なスタイル。そして、走りは極めてパワフルで豪快だ。普通に走るぶんにはとてもジェントルな振る舞いだが、ひとたびアクセルペダルを深く踏み込めば、2.5トンを超える車体をモノともしない強烈な加速を披露する。しかもEVだけにアクセル操作に対するレスポンスが極めて速く、身構えていても後頭部がヘッドレストに押しつけられるほどだ。
ハンドリングも、大柄なボディとは裏腹にとても俊敏だ。前後5リンクの足まわりは、アダプティブエアサスペンションを標準装備し、前後とも専用開発タイヤである265/45R21のグッドイヤー・イーグルF1 アシンメトリック3 SUVを装着。バネ下が若干震える感覚はあるものの、ボディの剛性感は十二分に高く、トラクションはしっかりとしていて、曲がりくねった道でもボディサイズがひとまわり小さくなったかのような感覚で、狙い通りのシュプールを描く。
スポーティで俊敏なハンドリングは重心の低さに加えて、通常時は後輪駆動で、必要に応じてフロントの駆動力を発生させる電動クワトロシステムが大きく寄与していることはまちがいない。軽さの中に適度な手応えが感じられるステアフィールや、高効率な回生を行うバイワイヤのブレーキのフィーリングもとても良好だ。
乗り心地は若干硬めだが、とてもフラットである。特に高速道路ではビリヤードの球が転がるように静かで滑らかな乗り心地が味わえる。CD値0.25という優れたエアロダイナミクスを実現したバーチャルエクステリアミラーの装着によって、風切り音が抑えられていることも、快適性に大きく貢献している。
ただし、バーチャルエクステリアミラーについては、まだ進化の途上にあると言わざるを得ない。確かに解像度は高く、トンネル内や夜間でも明るいのはうれしいが、やはり光学ミラーのように直感的に距離感がつかめない。黄色のグラフィックによる接近車両の警告も、正直言って気付きにくい。また右側(運転席側)のモニターは、もう少しドライバー側に向いていると見やすいはず。画角の調整もモニター上で行うのは違和感がある。慣れによってある程度は解決するだろうが、今後の一層の進化に期待したいところだ。
先進性を感じられるEVに
自然エネルギー実質100%の充電環境も提供気になる点はあるものの、e-tronスポーツバックのプレミアムSUVクーペとしての出来栄えはかなりのものだ。室内空間や荷室スペースも広々としていて、実用性に不満はない。245Wh/kmという電力消費率を見ると、必ずしもエコとは言いがたいが、アウディジャパンでは、自然電力株式会社との提携による自然エネルギー実質100%の電力を提供するプラン(1年間)も用意している。そしてEV普及のためには何よりも魅力的なプロダクトは欠かせない。今後もアウディの電動化戦略とe-tronシリーズの進化には要注目である。
[eトロン スポーツバック ファーストエディション(4WD・1速固定式)主要諸元]【寸法mm・重量kg】
全長:4900mm
全幅:1935mm
全長:1615mm
ホイールベース:2930mm
トレッド:前後1650mm
最低地上高:190mm
車両重量:2560kg
【モーター・性能】
型式:EAS-EAW
種類:交流
定格電力:165kW
最高出力:300kW
最大トルク:664Nm
【駆動用バッテリー】
種類:リチウムイオン電池
総電圧:397V
総電力量:95kWh
一充電航続可能距離(WLTCモード):405km
最小回転半径:5.7m
乗車定員:5人
【諸装置】
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後Vディスク
タイヤ:前後265/45R21
【メーカー希望小売価格】
1346万円(バーチャルエクステリアミラー仕様)
〈文=竹花寿実 写真=岡 拓〉
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