フランスのアルピーヌが、WEC世界耐久選手権のプログラムでも協業するシグナテックとのパートナーシップを活用し、北米大陸が誇るPPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(Pikes Peak International Hill Climb)の2023年大会に挑戦することを発表。これまでで「もっともエクストリーム」な1台となる『Alpine A110 PikesPeak(アルピーヌA110パイクスピーク)』を製作し、タイムアタック1クラスに参戦する。
すでに4月25日と26日の2日間にわたり、地元フランス中部リュルシー=レヴィでシェイクダウンを終えたアルピーヌA110パイクスピークは、2022年のFIA R-GTカップ王者であり、計4回のPPIHC出場経験を持つラファエル・アスティエのドライブでテストを継続。おなじみヴァル・トランスでのセッションを経て空輸され、6月25日の本大会に向けた最終準備を進めるべくコロラドスプリングスでの調整が続けられる。
タナー・ファウストがパイクス参戦。ジェンソン・バトン開発参画の『ラドフォード』で雲の上に挑戦へ
「このアルピーヌA110パイクスピークは、プロジェクトの初期段階で想像できたものをはるかに超え、我々の想像力の限界を押し広げてくれた」と語るのは、プロジェクトマネージャーを務めるフランソワ・ルトゥール。
「最初の2日間のテストは非常にスムーズに進んだよ。アルピーヌA110パイクスピークは設定されたすべての目標を達成し、これほど短い開発期間での驚くべき成果を得た。これにより、視覚的にも、性能の面でも、こうして素晴らしいモデルを発表できたことを誇りに思う。我々は皆、これから待ち受ける伝説的な挑戦を楽しみにしている!」
全長12.42マイル(約20km)、スタートラインの9300フィート(海抜約2830m)からフィニッシュ地点の14115フィート(同4302m)まで駆け上がり、156のコーナー制覇に挑むべく、アルピーヌ自身が「課題に応えるためのエアロダイナミクスとエンジン設計の傑作」と称する1台は、カテゴリーの参戦資格を得るためベースとなった『A110 R』のオリジナル・プロポーションを維持しつつ「エクストリームな選択を全面的に受け入れた」造形とされた。
その特徴は、フロントスポイラーの強烈に目立つスプリッターとディフレクターに、標高が高まるほど空気密度の薄くなる高高度でもダウンフォースを生み出す、印象的な完全2分割の巨大リヤウイングを装着。その2ピース・ウイングを切り裂くように、リヤウインドウ上にはシャークフィンも追加されている。
さらにサイドスカートやリヤディフューザーも備え、エンジンに空気を強制的に送り込むルーフ上のインテークなどにより、出力は「367kW(500PS)近くに達する」という。
■強豪に挑むのを楽しみにしている
また、車両重量をわずか950kgに減らすための特別な作業として、フロントマスクを印象付ける2個のLEDサークルは、レーザーカットされたスリムなライトバーに置き換えられ、同じくテールライトユニットの機能はプロトタイプでのル・マン24時間レースも意識し、リヤウイングとシャークフィン中央先端の3つの垂直セグメントに再配置された。これらチューンはどちらも前後オーバーハングの軽量化に貢献する。
「A110パイクスピークは、この象徴的なモデルのもっともワイルドな側面を引き出した」と語るのは、アルピーヌのチーフデザイナーであるラファエル・リナーリ。
「もともと機敏で軽量なデザインだが、その独特のエアロダイナミクスと極端なプロポーションにより、純粋な“レーシングビースト”となった。このプロジェクトはシグナテックの技術チームとの緊密な協力のおかげで、非常に短期間で完了したんだ」と続けたリナーリ。
「我々の作品がアメリカの本拠地で強豪に挑むのを楽しみにしているし、デザインに協力してくれた(A110担当)デザイナーの岡崎淳氏とヴィクトル・スフィアゾフ氏に感謝している」
今季で第101回大会を迎えるPPIHCには、通算4回の“King of the Mountain”獲得を誇る総合記録保持者、ロマン・デュマも参戦。北米フォード・パフォーマンスと新興STARDが共同開発したモンスターEV『フォード・パフォーマンス・スーパーバン4』で出場するほか、タナー・ファウストは元F1王者ジェンソン・バトンが開発に関与したイギリス製の『Radford Type 62-2(ラドフォード・タイプ62-2)』をドライブする。
そして惜しまれつつ世を去った故ケン・ブロックの愛娘であるリアは、父の遺作でもある1400PSのモンスター4WD『Hoonipigasus(フーニピガサス)』のステアリングを握り“トリビュート・ラン”を実施する計画が明かされている。
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