■世界中の人々のベーシックカー、それがホンダ「シビック」
ホンダが世界中のユーザーにおけるベーシックカーとして開発した初代「シビック」が登場したのは1972年となり、約半世紀の歴史を誇ります。
いまや、ホンダのグローバル市場を支えるシビックとは、どのようなモデルなのでしょうか。
初代シビックが発売された1972年には、沖縄返還や上野動物園でパンダが日本初公開された年でもあります。
当時の自動車市場では、4ドアセダンが主流でしたがホンダは「FF2ボックス」という新しい市場を世界各地の人々のためのベーシックカーとして開発。車名のシビックには「市民の」という意味が含まれています。
また、初代シビックは当時世界一厳しいといわれた排出ガス規制「通称マスキー法」を世界で最初にクリアしたCVCCエンジンを搭載していたこともあり、省資源や低公害という新風を小型市場に巻き起こしました。
初代シビックには、複数のボディタイプとして、ハッチバック(2D・3D・4D・5D)とバン(商用車)のほか、排気量(1.2リッターから1.5リッター)を設定され、当時の新車価格は42万5000円から97万1000円です。
その後、2代目(1979年)、3代目(1983年)、4代目(1987年)、5代目(1991年)、6代目(1995年)、7代目(2000年)、8代目(2005年)、9代目(2011年・北米のみ)、10代目(2017年)が登場。
2021年には、11代目モデルが登場することが明らかになっており、北米での発表では、セダンを始めハッチバック、タイプRなどの投入が予定されているといいます。
今回、初代モデルに試乗する機会がありましたが、その出で立ちはまさに王道のコンパクトハッチバックです。
国産旧車として特徴的な丸型ヘッドライトやフェンダーミラーが半世紀前のモデルという雰囲気を醸し出しています。
また、前席/後席ともに身長170cmの男性が着座しても狭さを感じさせないうえ、座席のクッション性も当時のままを保たれているのか、現代のクルマとは異なる座り心地でした。
運転時の操作性としては、ステアリング径が大きく、グリップ径は小さいという形状は、現代のクルマとは異なるため、ステアリングの移動量が多いほど扱いに苦戦します。
また、シフトレバーは床から伸びたタイプ(フロア式)となり、しっかりとクラッチを踏み込んでシフトチェンジしなければならず、こちらもコツがありました。
試乗コースでは、発進から2速、3速までしか試せませんでしたが、昔の小排気量MT車のような発進時におけるエンストの不安もなくスームズに動き出します。
ある程度、速度が出てくれば旧車ならではの扱いづらさよりも手軽に扱える感のほうが上回り、「クルマを運転する愉しさ」を味わえました。
シフトチェンジ毎に加速するフィーリングも心地よく、まさに誰でも扱えるベーシックカーの元祖です。
車内を見渡すとダッシュボードの上段には木目パネルを配置、下段には操作系スイッチが上下に分けられていることに気づき、デザイナーのこだわりを感じられました。
※ ※ ※
初代モデルの登場から半世紀近く経った現在では、北米や中国において販売台数でも上位に位置するシビック。
日本では、セダン市場の縮小などにより低迷気味で、スポーツモデルのシビックタイプRが話題になるくらいです。
しかし、初代シビックで感じた印象は、2020年2月に発売された現行「フィット」のコンセプトとなる「心地よさ」に繋がるもののような気がします。
なお、デザインやパッケージでは2020年10月に発売された電気自動車「ホンダe」が初代シビックのデザインに似ていますが、ホンダeの小排気量ガソリン車かつ低価格版が出せれば、初代シビックのファンが懐かしむかもしれません。
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