アメリカ・ニューヨークで再生可能エネルギー関連の投資会社を営むイギリス人のティル・ベヒトルスハイマーは、名門コンストラクターのローラを復活させることを目指している。
1958年にエリック・ブロードレイによって創業されたローラは、これまでフォーミュラカーからプロトタイプマシンまで、多岐に渡るレーシングマシンを手掛けてきた。彼らの作ったマシンは、インディ500で3度の優勝、CART/チャンプカーでは計181勝を挙げている。
■一度もグリッドにつかずに撤退した幻のF1チーム『マスターカード・ローラ』
1997年に「マスターカード・ローラ」としてF1に参戦し、決勝レースを1回も走ることなくプロジェクトが失敗に終わった後も、1998年からローラを引き継いだマーティン・ビーレイによってマシン製造が続けられてきた。
しかし2012年5月に経営破綻。それ以降ローラはモータースポーツ界から姿を消していた。
それから10年後、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTデイトナクラスにドライバーとして出場しているベヒトルスハイマーは、ローラ・テクニカルセンターを始めローラ関連の版権を買い上げ、ローラを再始動。2024年に新たなマシンをグリッドに並べることを目指しているという。
「我々が現在注視している主要プロジェクトでは、2024年からサーキットにマシンを走らせることを目標としている」
ベヒトルスハイマーはmotorsport.comに対してそう語った。
「もう少し現実的だと2025年だが、もっと早い段階でローラをサーキットに戻す機会はある」
ベヒトルスハイマーは、現在ローラが取り組んでいるそのプロジェクトについては具体的に公開する準備は整っていないとしながらも、「スポーツカーとシングルシーターの両方のパドックで対話が進められている」と認めている。
ベヒトルスハイマーは、新生ローラもブロードレイやビーレイの時代と同様に、主要メーカーと協力しながら自社マシンを製造することになると説明している。
「エンジニアリング・ソリューションを顧客に提供する有力なチームとして、ローラを復活させたいと私は思っている」と彼は言う。
「それが、サーキットで走らせる競技パッケージを購入する顧客であれ、OEMに完全パッケージを提供する顧客、サードパーティにパズルの小さなピースを提供する顧客であれ、だ」
「それが全てローラが常に行なってきたことであり、今後も続けていくべきことだのだ」
ベヒトルスハイマーは、ル・マン24時間レースへのエントリーに強い関心を持っていることを認めている。
ローラがル・マン・ハイパーカーやLMDhのプロジェクトに関わる機会は限られているとした上で、2025年から2029年までの次世代レギュレーションサイクル以降に、LMP2プロトタイプの製造ライセンスを持つシャシーマニュファクチャラー入札に名乗りを上げることを目指していると彼は明らかにした。
「5年後にシャシー入札が再開された時に信頼できる入札となるよう、大規模なプロジェクトの中でローラが狭い分野に関わり、スポーツカーレースの下位カテゴリーに集中してその能力を高めることは、悪いことだとは思わない」
新生ローラの発足に向けてベヒトルスハイマーは、2018年に82歳で亡くなったビーレイの遺族から、風洞設備や実際の走行状態を再現する7ポストリグを持つローラ・テクニカルセンターに加えて、ローラブランドと400以上のデザイン知的財産権(IP)を購入した。
ローラの名称とデザインIPは、2012年の経営破綻以降ビーレイ一族が所有していた。マーティン・ビーレイの娘のひとりであるアマンダ・ビーレイは、ベヒトルスハイマーによる再建について次のように語っている。
「長い歴史を持つイギリスモータースポーツの象徴として、ローラ・ブランドが実業家兼レーシングドライバーの所有となったことを私たち家族はとても嬉しく思っている」
「ローラが再びモータースポーツの世界に戻り、特にル・マンへ復帰することを父は喜んでいることでしょう」
新生ローラには、代表としてマイケル・ウィルソンが就任。彼はメルセデスのドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)プログラムに関わり、F1パワーユニット施設に務めた経験を持っている。ローラへはアドバンスド・エンジンリサーチ(AER)から加わることとなった。
ベヒトルスハイマーは、ローラ再建の第一歩として2012年以降も使用されてきたテクノロジーセンターに風洞設備の改良を挙げている。
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