新車試乗レポート [2024.04.04 UP]
新型トライトン:オフロード激走リポート
話題の最新スポーツトラック、走りの実力をCHECK!
久々の国内復帰ということもあって、大きな注目を集めている新型トライトン。アウトドアシーンでの活躍が期待されるクルマゆえに、オンロードはもちろん、とりわけオフロードでの走りが気になるところだ。普通のクルマではとても走れない、ガレ場&急坂を含んだ試乗コースで、その実力を見極めてみたぞ!
●文:川島茂夫 ●写真:奥隅圭之
MITSUBISHI 新型トライトン《激走リポート》
走る道を意識させない
最新メカを惜しみなく投入
重い荷物を乗せて荒れた路面も走り切る、逞しくも頼れる相棒。小型トラックは「働くクルマ」そのものだが、頑強なフレームと後輪駆動をベースとした4WDシステム、積載荷重に対応したサスチューニングを除けば、走行ハードウェアは本格オフローダーとほぼ同じだ。コアなアウトドア派やオフロードを趣味にするドライバーならずとも、好奇心を大いに刺激されるだろう。
ミツビシから登場した新型トライトンは正にそんなモデルだ。特に国内に導入されるグレードは、単なるトラックというよりも、アウトドアシーンで活躍できる本格オフローダーを主として開発されている。
一般的なトラックは、最大積載時に合わせたサスチューニングを採用している。一方、今回の国内向け新トライトンは前後席を備えるダブルキャブのため、乗用向きの味付けとなっている。しかし、それでも最大積載重量は500kg。そんな設定でもリヤサスを柔らかく使ってくれる。念のために試乗後に荷台にウェイトが積まれていたのか、を確認したほどだ。空荷でもリヤサスだけが跳ねるようなこともなく、硬めの前後サスのバランスの悪さを感じることもない。これが新型の強みであり、オン&ラフロードでの接地安定にも繋がっている。
出来の良いサスチューン
オンロードも悪くない
オンロードでのトライトンは、高い重心高を多少意識するものの、前後のグリップバランスもよく、据わりのいい操舵感もあって、サイズや重量にかかわらずスムーズなラインコントロール性を示してくれる。さすがに幅が狭い道路では大きさを意識させられるが、操縦感覚は多くの人に馴染みやすいタイプだ。ブレーキによるトルクベクタリングを用いたAYCも採用しているが、巧みなサス設計の賜物と考えていいだろう。
そして乗り心地も悪くない。リーフリジッド特有の車軸周りのばたつきも少なめ。さすがに乗用車プラットフォームのSUVと比較するとトラック的な雰囲気はあるが、本格的なオフローダーとしてはかなり洗練されている。なお、2WDと4WDを切り替えて試してみたが、リヤサスのばたつきは4WDモードの方が少ない。操安性でも4WDのほうが落ち着きがあった。2WDモードのほうが実燃費は僅かにいいらしいが、乗り心地と操安の差を考えると2WDモードの必要性はほとんど感じない。
4WDシステムはパートタイム方式を採用しているが、遊星ギヤを用いたセンターデフを装備することで、フルタイム4WDとしてふるまうことが可能。副変速機にもセンターデフのロック機構を備えている。ちなみに4WDのモード選択は、コンソールに配置されるダイヤルスイッチ操作のみ。走行中の2WD/4WDも4H/4Hロックの切り替えも可能で、スリップ制御も含む4WD制御モードは5モードを設定している。これも手元のスイッチで簡単に切り替えられる。
オフの頼もしさは格別
まさに相棒にふさわしい
オフロード走行では、簡単に走行モードを切り替えられるのが、実に頼もしい。試乗会レベルのコースとしては、緩めの泥濘やロックセクションが散りばめられていて少々ハードめの設定だったのだが、トライトンは苦もなくこなしていく。しかも、4Hモードとトラクションコントロールだけで大半を走破することが可能。さすがにモーグルで対角に車輪が浮いた状態はカバーできず、その場で4Hロックとマッドモードを選択したが、この切り替えもスムーズ。脱出用の奥の手としても悪路制御モードの充実は頼もしい。
全長5・3m超、全幅は1・9m前後、車両重量は2t超のビッグサイズボディゆえに、キャビンへの乗り込みはサイドステップを使わなければ一苦労。レジャー&ツーリング専用ならまだしも、日常用途も配慮しなければならないユーザーにはハードルが高すぎる。さらに価格もなかなか強気な設定だ。ただ、ここまでやらないと、体験できない世界があるのも事実。トライトンを選べばアウトドアとクルマの楽しみ方が一気に変わる。それだけの可能性を秘めているクルマなのだ。
《新型ディーゼルターボ》重量ボディを容易く扱えるビッグトルクが印象的
2.5ℓ4気筒のディーゼルターボの最高出力は204PSだが、最大トルクは47.9kg・mに達する。2.1t前後の車両重量にも不足を感じさないパワースペックだ。許容回転数は4000回転に設定されており、実際に試乗した印象も乗用車系ディーゼル車に比べると高回転の伸びやかさに欠ける。ただ、低回転域から太く安定したトルクは扱いやすい。全開加速でもガラついたエンジン音は少なく、車外騒音も含めてヘビーデューティ用ディーゼルターボにしては、穏やかなエンジンフィールも印象的だ。
ラダーシャシーを採用した本格的なメカニズムを持つこともあって、凹凸だらけの悪路では水を得た魚のような走りを披露する。雑なドライブでも器用にこなしてくれる様は、レジャーシーンの相棒として頼もしい限り。
ゆったりと動くラダー車特有の癖はあるものの、車体挙動そのものは安定感に富んでいることも見逃せない。オンロードを得意とまではいえないが、NV性能の追求もあってミドル級モデルらしい落ち着きのある走りだ。
前後シートを備えるダブルキャブボディを採用したのは、レジャーユースを狙っていきたい、という意向が大きい。全長5.3m超のボディ サイズもあって、誰にでもオススメできるクルマではないが、刺さる人にはとことん刺さる一台だ。
《キャビン》造形や加飾はシンプルだが実用車キャラにはお似合い
さすがに大柄な男性の4名乗車ともなるとレッグスペースが心もとなくなるが、長時間乗車にもなかなかの対応力を持つ。後席まわりの仕立てや加飾は前席と大きな違いはなく、少し小振りながらもシートの座り心地も良好だ。座面の高さとバックレストの角度はアップライト気味だが、それもトライトンの個性のひとつだ。キャビンまわりの細部の造形や加飾は「働くクルマ」を意識させる部分もあるが、トリムや使用頻度の高いスイッチ類はミドルクラス相応な仕上がり。変に華美になっていないことも、このクルマのキャラには似合っている。
《ベッドスペース》アウトドア生活をより楽しめる工夫がいっぱい
荷台の奥行きは約160cm。バイク等の大きなレジャーグッズを積んだり、キャンパーとして活用するのは困難だ。ただ、アウトドアのレジャー用品を積むレベルでは大型SUV以上の積載性と利便性がある。また、床に敷くベッドライナーなど荷台周りの純正用品が豊富なことも魅力のひとつ。トノカバーは布製から電動まで3タイプ。開閉型の窓を備えたキャノピー(荷台ハードトップ)など、大小の多彩な用品が揃っている。アウトドアの楽しみ方に合わせたカスタマイズも楽しみのひとつになっている。
新型トライトン《結論》《ベストグレード》《ライバル》
スポーツトラックの裾野を広げてくれる
パイオニアになれる可能性十分
トライトンのライバルを挙げるならば、その筆頭に来るのはやはりなんと言ってもトヨタ・ハイラックス。トライトンの方が若干価格は高めだが、手頃なサイズ感、ショートデッキ仕様、カスタム用品が豊富と、共通する部分が多い。
ただ、イメージはそれなりに異なっており、トライトンは外観の印象にカジュアルさがあり、レジャー志向が強め。走りもそつなく上手にまとめられており、運転感覚もSUVに近い。ハイラックスは無骨さが勝ったデザインで、トライトンに比べると尖ったイメージが強め。マニア寄りなスポーツトラックに映る。トライトンの方がスポーツトラックが初めてというユーザーに受け入れられやすいだろう。
パジェロがラインナップから整理されてから24年。カタチこそ違えど、トライトンをパジェロの後継進化モデルと位置付けるのも面白い。ミツビシの新しい象徴として今後の展開が楽しみなモデルだ。
ベストグレード:GSR 価格:540万1000円
ライバルはこのモデル
TOYOTA ハイラックス
サイズは全長×全幅×全高が5320×1900×1840mm(Z GRスポーツの数値)。パワートレーンは2.4ℓディーゼルターボで150PS/40.8kg・mを発揮。価格は407万2000~477万2000円。
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