■スズキのなかでも「とびっきり小さいクルマ」!?
スズキといえば、1979年から44年間に渡って販売されている軽自動車「アルト」や、欧州車さながらのスポーティな走りと経済性から高い支持を受けるコンパクトカー「スイフト」など、どちらかと言えば“小さな”クルマを製造・販売しているイメージの強いブランドです。
しかし、そのイメージを更に上回る、あまりにも「小さすぎる」クルマが過去に販売されていました。
【画像】めちゃ「小さい」! 運転が楽しそうなスズキ「ツイン」を画像で見る(74枚)
そのクルマは軽自動車の「ツイン」。2003年に発売したこのクルマの車名は、乗員が「2名」と割り切られていることに由来します。
ツインのボディサイズは全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mm、ホイールベースは1800mm。
この全長は、小さいクルマとして代表的な「一般的な軽自動車」の全長3395mmと比較すると、「約70cm」も短い値。まさに異常と言っても過言でないほどに短いクルマであることが分かると思います。
通常では、軽自動車のサイズは規格寸法のギリギリまで拡張して設計するもので、それによって可能な限り広い室内空間を確保しようとします。
しかしツインはそのような発想をあえて転換し、ほぼ街中で使用されるシティコミューターであれば「乗員は2名までで十分」と割り切って開発。
それにより自由で丸みを帯びた斬新なデザインが可能となったうえ、小さな路地でも安心して飛び込める最小回転半径3.6mという驚異的な小回り性能を達成していました。
また、ボディサイズの小ささはそのまま車重の軽さにも直結し、最もシンプルなグレード「ガソリンA(FF、5MT)」では570kgという驚きの軽量ボディも実現。
そして車重の軽さは燃費の良さにも繋がり、先述のグレードにおいて複雑なハイブリッドシステムなども無い状態にも関わらず、26km/Lもの当時としては素晴らしい低燃費性能も達成しました。
そんなツインの車両価格は49万円から139万円(当時は消費税抜表示だったため、同じ数値を引用)。
上位グレードにはスズキの市販車史上初となるハイブリッドシステムが搭載されたため価格の幅は大きめですが、通常のガソリンモデルでは50万円を切るグレードも用意されたことから、発売当時は大きな話題となりました。
ボディが小さく小回りが利き、軽量で燃費が良く、しかもMTもあり価格も安い。まさにライトウェイトスポーツカーのような特徴をあわせ持っており、シティーコミューター需要に加えてクルマ好きからも大いに支持を受け販売も好調…となるように思われたツインでしたが、現実は全く違いました。
機能を割り切った発想は本当に素晴らしいものでしたが、なんとこの最軽量なグレード、割り切りすぎて「エアコン」も「パワーステアリング」も搭載されておりません。
逆に、機能を満載したハイブリッド仕様は、追加のバッテリーなどによって車重が増し、さらにラゲッジルームも圧迫。結果的にガソリン仕様と大きく変わらない燃費と狭く荷物の乗らない荷室を100万円近い差額を払って手に入れるという、よく分からない存在となってしまいました。
まさに、スズキの覚悟と割り切りにユーザーがついて行けなかったような結果となったツインは、安価にも関わらず販売が低迷。
販売からわずか3年未満となる2005年には、ガソリン仕様・ハイブリッド仕様ともに販売終了となってしまいました。
※ ※ ※
ユーザーがツインを「2人しか乗れずエアコンの無い不便な軽自動車」と見なしてしまったことが、ツインの販売不振に繋がる要因とも言えますが、むしろ「雨に濡れず2人が安全に乗れるスクーター」として捉えられていたならば、ツインの未来は変わっていたのかもしれません。
しかし、販売終了という結果のみでツインを失敗作のように切り捨ててしまうべきではないでしょう。
例えば、現在のスズキは極めて高いボディの軽量化技術やエンジンの低燃費化技術を手に入れており、なんと4人乗りのアルトで当時のツインに匹敵する車重や低燃費性能を実現しました。
また、独自のハイブリッドシステム「エネチャージ」を完成させ、環境に優しくさらに運転も楽しいクルマ作りを続けており、多くの自動車ユーザーの生活を豊かにし続けています。
これらの根底には、将来の軽量化や電動化に向けた実験モデルとして駆け抜けたツインの存在を強く感じることができます。
まさに小さなツインは、スズキの未来に繋がる「大きな一歩」だったのかもしれません。
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みんなのコメント
バンパー塗装してセンスよく仕上げていますよ。