ダイハツ ハイゼットカーゴ 「荷室空間とCVTでライバルをリード」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

工藤 貴宏
工藤 貴宏(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

4

デザイン
3
走行性能
3
乗り心地
2
積載性
4
燃費
3
価格
4

荷室空間とCVTでライバルをリード

2022.7.20

年式
2021年12月〜モデル
総評
クルマをどう活用するか。ハイゼットカーゴをどう評価するかは、前提となるそれにより大きく左右されます。快適性や後席の居住性を求めるなら、「タント」などスーパーハイトワゴンのほうがいいでしょう。乗り心地も含めて。いっぽうで積載性(最大の積載量はもちろん後席使用時に積める荷物の量)を重視するなら、ハイゼットカーゴのようなパッケージングが魅力です。
満足している点
とにもかくにもこのクルマの最大の魅力はパッケージングでしょう。「軽自動車でたくさん荷物を積みたい」とか「軽自動車に4人乗りでキャンプへ行きたい」といった状況になった場合、軽スーパーハイトワゴンでは要求を満たせず、さらに室内の広いハイゼットカーゴが最適となってきます。
不満な点
かつてに比べるとかなり緩和されたとはいえ、着座位置が高く、対してハンドルの位置が低めの運転ポジションは慣れが必要。もうひとつ、乗用ユーザーという視点で考えた場合は、先代モデルまで存在した「ワゴン」に比べるとリヤシートの快適性が劣る点も注意。シートスライドがないことで前後席間距離が狭いほか、シート自体もクッションが薄くなるなど作りがシンプルになりました。その理由は、後席を床下へ格納した際の床の段差をなくすため。積載性に加え、車中泊を意識しているそうです。
デザイン

3

とにかく四角い箱。注目は側面で、わずかに傾斜があった従来モデルに比べて角度を立て、“ほぼ垂直”になっています。これは室内空間を最大に確保し、少しでもたくさんの荷物を積めるようにとの工夫。機能を具現化したデザインといっていいでしょう。実際のところ「それでどれだけ多くの荷物を積めるようになったのか?」と考えれば、違いはそれほど大きくないかもしません。しかしそれによって「先代では積めなかった荷物が積めるようになった」とか「ライバルよりも荷物を積みやすい」と感じる人が少しでもいれば、このデザインの価値があるといえるのではないでしょうか。
走行性能

3

注目はなんといっても、CVTの搭載。このクラスの“MTではないトランスミッション”はATが一般的ですが、ハイゼットカーゴの2ペダルモデルはATではなくCVTを搭載。それがライバルとの最大の違いとなっています。実際に走ってみると、そのメリットはしっかりと体感可能。ひとつは加速フィーリングで、シフトアップにより加速時の息継ぎがあるAT(非力な軽バンの場合は一般的なクルマより気になりがち)に対して、シフトアップがないのでギクシャクしません。もうひとつは加速が力強いこと。CVTはもっともパワーを出すエンジン回転域を有効に使えるので、エンジン出力のわりに加速が力強いのを実感します。
乗り心地

2

「タント」など乗用ユースのモデルに比べると乗り心地が劣るのは否めません。なぜなら、重めの荷物を積むことを前提に車体やサスペンションが作られているから。荷重に耐えられるように足回りが高めの設定となっているのが、乗り心地にはマイナスとなってしまいます。とはいえ、従来モデルに比べれば乗り心地も向上。グレードによる乗り心地の違いは感じられません。
積載性

4

畳(中京間)が9枚、みかん箱では68個、ビールケースなら36ケース。小さい車体とは思えないほどたくさんの荷物が積めます。「タント」など乗用車のスーパーハイトワゴンと比べると、後席を畳んだ時の荷室奥行きはもちろん、後席展開時の荷室容量が全く違うのがポイント。後席を起こすと荷物がほとんど積めないスーパーハイトワゴンと違い、アトレーバンのようなワンボックスモデル(キャブオーバーバン)では荷室奥行きが1mを超え、たくさん荷物を積めます。
燃費

3

軽自動車ワンボックス(キャブオーバーバン)で初めてとなるCVTの採用は、燃費にもメリットがあります。WLTCモード燃費は14.7〜15.6km/L。実はMT車よりも燃費が良く、ターボエンジン搭載車でも自然吸気エンジンに対する燃費低下がほとんどないのも注目したいところ。実走行ではターボエンジンのほうがエンジン回転を上げずに済むので燃費がいい状況もあります。
価格

4

もっともベーシックなタイプは104万5000円。ターボエンジンを積む上級モデルでも145万2000円(FF)というのはリーズナブルに感じます。ターボエンジン搭載車でも非搭載車に対して10万円強しか価格アップがないので、動力性能のゆとりを考えるとターボエンジンを選びたくなってきます。
工藤 貴宏
工藤 貴宏
自動車ジャーナリスト
1976年生まれ。クルマ好きが高じ、大学在学中に自動車雑誌の編集部でアルバイトしたことをきっかけに、そのまま就職。そして編集プロダクションを経てフリーランスの自動車ライターに。日々新車を試乗し、日夜レポートを書く日々も気がつけば10年以上。そろそろ、家族に内緒でスポーツカーを買う癖はなんとかしないと。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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