新型GR86&BRZプロトタイプ速報! 安定系のBRZvsムズムズ系の86!? MT派も悩む魅力的なATとは?
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 127
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:市 健治 127
次に乗ったのが新型BRZの6AT。ATも従来モデルからの流用で型式は同じだが、ギアを含む内部パーツはかなり入れ替わっているという。「安易に新型へ置き換えを要望するとコストアップを理由に却下されるので、『流用します』と言いつつ、細かく内部をブラッシュアップしました」とあるエンジニアは舌を出す。ま、実際には上司もすべてわかっていて……というドキュメントが各部門で繰り返されたのだろう。
制御はもちろん新しくなっていて、従来4速以上だったロックアップが3速以上に変わった。スポーツモードでは2速からロックアップする。ロックアップして直接ギアを噛み合わせれば当然ダイレクト感、トルク伝達能力は増すものの、変速時にガツンと衝撃を生むが、スポーティーさを優先させたという。マニュアル変速モードを選んでせっせとパドル操作をするのも悪くないが、その点ではMTの楽しさを上回ることはない。
ATならではの楽しみもある。新型のATにはドライバーのブレーキング操作などを考慮し、ブリッピングしながら自動的にギアダウンしてくれる制御が入った。試してみるとこれが賢く、コーナー手前のブレーキングの最中、ここ! というタイミングでダンとギアが下がる。変速操作から解放されてできたドライバーの余力をステアリング操作に振り向けることができるというわけだ。
この賢いATのおかげで、もし自分が新型を買うならMTかATか相当に迷うと思う。操って楽しいのはやっぱりMTなのだが、ATを選ぶとアイサイトバージョン3を付けることができるからだ。スポーツカーであっても走行の大部分を占めるのは日常だ。知ってしまったACCをはじめとするADASを絶つのは難しい。考え方次第だが、選択肢は広がった。
ここまで書いたBRZの印象の根本部分は、後から乗った86にも当てはまること。だが両車の違いは現行モデル以上に大きい。それぞれが目指す方向は現行モデルと同じだが、前述したGRのわがまま期間を経て、それぞれの違いが際立った。FRながらスバルの憲法にのっとってスタビリティ重視の安定志向のキャラクターをもったBRZに対し、86は曲がりたがるハンドリングマシンに仕上がっている。もしも普通運転免許取得にドリフト課程があったなら、教習車はGR86以外に考えられない。
例えばBRZに対し、86はステアリングを切り始めた瞬間にタイヤの食いつきによって方向が変わり始める瞬間をとらえやすい。そしてそのステアリング操作がブレーキング時だったら、同時にリアの張り出しをはっきりと感じることもできる。もう少し速いペースで同じことをすると、じわりとリアが流れ始める。それに応じてカウンターステアを当てればドリフトの出来上がり。
BRZでももう少し高い速度域で同じ操作をすれば同じ動きが出てくるが、BRZが安定方向に戻ろうとするのに対し、86はスリップアングルを維持しやすい。アクセル操作に対する反応のチューニングもはっきり違っていて、操作量に対し忠実に反応するのがBRZ、初期の操作に大きく反応するのが86だ。当然リアタイヤをブレイクさせやすいのは86のほうだ。問答無用に楽しい。それはMTでもATでも同じ。
ドリフトしなければ両車の違いを感じられないのかといえば、もちろんそんなことはなく、86のドリフト未満のムズムズとした動きは町中のカーブに差し掛かるだけでも感じられる。足まわりの設定とスロットル制御は一体となって、86に“キビキビとした動き”という印象を与える。
両車の違いは選ぶ楽しさ、迷う楽しさにつながる。実際にはほとんどの人がどちらかのブランドによりシンパシーをもっていて、最初に行くディーラーは決まっているのかもしれないが、ぜひとも乗り比べてみるべきだ。そして両ブランドのメーカー、販売店は協力して購入検討車が乗り比べられる機会をつくるべきだ。
現行を販売してきた9年間で開発陣が獲得したスポーツカーのノウハウは少なくなかったようで、新型は確実に魅力を増した。売れ行きに浮き沈みがあっても始めたら続けること。これこそがスポーツカーを進化させる唯一確実な方法なのかもしれない。
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