結局、エブリイかハイゼットかの「二択」
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】写真から夢が広がる? エブリイがベースの軽キャンパー【実車】 全17枚
ふだん使いができて、価格も手ごろ、維持費も安いことなどを理由に近年、軽キャンピングカーの人気が高まっている。
ベースとなる軽1BOX車として圧倒的支持を集めているのは、スズキ・エブリイだ。
ライバルに位置付けられるのはダイハツ・ハイゼットバンや同アトレーワゴン。
軽キャンピングカーの世界でも、スズキとダイハツの戦いが繰り広げられているようだ。
しかし、ライバルと言っても現状はエブリイの「ひとり勝ち」だ。複数のショップに聞いたところ、軽キャンピングカーを選ぶ人の8~9割はエブリイがベースを選ぶとのこと。
ちなみに「ひとり勝ち」といっても、実際、エブリイには多数のOEMが存在しており、それらをまとめて「エブリイ・ベース」としている。
日産NV100クリッパーリオ/同NV100クリッパー/マツダスクラム/三菱タウンボックス/同ミニキャブバンもすべてエブリイのOEMモデルとなる。
中身はエブリイで満足している。でも、マツダの大ファンだから、スクラムをベースにした軽キャンパーが欲しい! と言えば、ほとんどのキャンピングカーショップが対応してくれるだろう。
いっぽう、ダイハツ(ハイゼット/アトレー)にもトヨタ・ピクシス、スバル・ディアスといったOEMが存在している。
軽1BOX車と言えば、ホンダのN-VANはどうなの? と思う人もいるだろう。確かにN-VANはシリーズを通して人気が高い。
いかに効率よくスペースを確保できるか
N-VANは設計も新しく、デザインも「軽バン然」としていない。衝突安全の観点から見ても優等生だ。
しかし、クルマとしてのポテンシャルは高くても、キャンピングカーのベース車両として考えると……。
やはり室内長やフロア形状などスペース的な理由でどうしても、エブリイにはかなわない部分があるとのこと。
結局、軽キャンピングカーのベースはエブリイかアトレーの2択(もしくはそれらのOEM)というのが現状のようだ。
製造や販売の現場ではこの2車をどう考えているのだろうか?
軽キャンパー「ちょいCam」を製造販売するユーズネットグループ会長井上政彦氏に現状の人気車種について話を伺った。
同社はスズキとダイハツの軽1BOX、エブリイ(バン・ワゴン)、ハイゼットバン、アトレーワゴンの4車種をベースに同じ仕様装備の軽キャンパーを製作販売している。
「当社が販売する『ちょいCam』シリーズでは、エブリイ:ハイゼット(+アトレー 以下同)=8:2という印象で、圧倒的にエブリイが多いですね」
「理由はたくさんあるのですが、まず後ろの開口部がハイゼットはルーフ周りを絞ったような台形になっています」
「エブリイは開口部がほぼ長方形なので、頭や肩回りの空間に余裕があり中に乗った時の圧迫感がかなり違ってきますね」
「必要な装備を付けているとどうしても狭さを感じてしまうので、天井周りの空間は重要です」
登坂車線を使う頻度もかなり違う?
「ハイゼットバンは完全な貨物仕様なので、後部の方は内張がなく鉄板むき出しの部分があります。見た目がかなりチープです」(ユーズネットグループ会長井上政彦氏)
「走行性能もかなり違います。わたしはエブリイもハイゼットも長距離乗りますが、ターボ車ならいずれもストレスなくパワフルに走ります。ですがノンターボの場合、ハイゼットは全行程の1/2~1/3は登坂車線を使っており、エブリイはほぼ、走行車線だけで行けます」
「燃費も5km/Lエブリイの方が良いです」
ユニークな軽キャンピングカーを多数ラインナップする株式会社岡モータースの「ミニチュアクルーズ」シリーズは全車エブリイだ。
「室内の広さも燃費も走行性能もすべて、エブリイが優っています。とくに、エブリイハイルーフの室内高1420mmは軽1BOX車ナンバーワンです」(株式会社岡モータース キャンピングカー事業部)
「現行エブリイ(バン6代目、ワゴン3代目)が出たのは2015年、ハイゼットとアトレーは2005年です。10年もの違いがありますから設計がかなり古いですね」
「また、エブリイは純正で車中泊仕様が作れるんですよ。ベッドボードや収納など、純正アクセサリー品が充実しています」
「メーカーがエブリイを車中泊車として使うことを応援している姿勢も良いですね」
それでもハイゼットバンを選ぶのはどんな人
エブリイの素晴らしさは良くわかる。しかし、それでも、少数ながらハイゼットバンを選ぶ人も存在する。
その理由は? 複数の会社に取材をした結果をまとめてみた。
軽1BOXといえばハイゼットだった
エブリイが新しくなる前、軽1BOXといえばハイゼットだった。当時の性能は圧倒的にハイゼットが上であった。
エブリイは2015年に新しくなってハイゼットと性能そのほか完全に逆転したが、高齢のお客様の中には、かつての「ハイゼットが良い!スズキはダメ」というイメージをそのまま引きずっている方も少なくない。
「販売するわたしたちも説得してみるが、なかなか考えを変えるまでには至ってない。こちらとしてはお客様が欲しいと言えばハイゼットを販売するしかないので……」
ハイゼット選ぶ人=トヨタ/ダイハツ関係者?
正直、ハイゼットを選ぶ人はトヨタやダイハツの関係者ではないかと思われる。
取引先がトヨタ関係だから、スズキのエンブレムを付けたクルマは乗り入れできない(駐車場が遠い)という理由もありのだろう。
キャンピングカーであっても、軽1BOX車の場合は、仕事や日常の足に使っている人が多いため、完全なレジャー仕様として割り切れないところがあるのでは?
リタイア後、夫婦ふたりでのんびり旅をしたいという人や、アウトドアの趣味を楽しむパートナーとして軽キャンパーの人気は年々、上昇している。
キャンプ専用ではなく、ふだんの足としても使う人がとても多いので、日常の使い勝手も考慮したベース車選びが必要と言えるだろう。
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みんなのコメント
ハイゼットのリアレンズを共用したミニキャブ(クリッパー)をみたような気がする。