グループPSAの元で再設計した新コルサ
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
AUTOCARの試乗記で、冒頭から褒めることは珍しいが、新しいコルサは例外。すこぶる良い。
プジョーやシトロエンといったブランドを傘下に持つグループPSA。オペル-ボクソールをGMから19億ポンド(2717億円)で買収したのは2017年だった。
5代目へと置き換わる予定だったコルサは、その時すでに数年の開発を終え、最終テストの段階だったという。それにも関わらず、新しいプジョー208と同じように、PSAが有するモジュラーCMPプラットフォームでの再開発を決断した。
理由は3つある。初めに、GM時代のハードウエアを利用する場合、ライセンスを持つGMに対して使用料を支払う必要があったこと。もう1つは、グループPSAのプラットフォームの方が、より汎用性が高く、センサーを用いた運転支援システムや、幅広いレベルでの電動化技術の搭載が可能だったため。
そして、CMPプラットフォームの方には、4気筒エンジンを搭載するのに充分な空間も確保できていた。問題は、オペル・ブランドのベストセラーモデルを開発し直す時間が、わずか2年しかなかったということだった。
AUTOCARの読者ならおわかりかと思うが、自動車の開発を2年で行うことは、通常ありえない。リュッセルスハイムに拠点を置くオペルは、それを実現するべく、経験豊富なスタッフを再配置。彼らは見事成し遂げた。
2度目の開発によって生まれたのが、第5世代目のコルサということになる。お見事。
スタイリッシュで軽量なボディ
見た目は、控えめに表現しても、魅力的に感じられる。デザインは過去のコルサではなかったほど、煮詰められた印象。4代目の少し攻撃的な雰囲気は、張りのある面ときれいな折り目のラインで置き換えられている。
基礎を同じとするプジョー208との共通性も、シルエットからは感じ取れない。CMPプラットフォームによって、スタイルはボンネットとキャビンが別れた、2ボックス感が強くなった。
ボンネットは長くなり、フロントガラスはボディ中央寄りに位置している。モノフォルム風だった面影はなくなり、プロポーションはずっと良い。
ボディサイズはプジョー208とほぼ同じで、このクラスでは平均的。一方で4代目と比べると大きく変化している。全長は39mm長くなった一方で、全高は48mm低くなった。空力性能は改善され、見た目もずっとスポーティだ。
全幅は1mmだけとはいえ、狭くなっている。都市部を中心に走るコンパクトカーの場合、全幅は狭い方が良い。他のモデルも追従するかもしれない。
ホイーベースは28mm延長され、車内空間に余裕を与えることにつながる。実際はそれほど広々ではないけれど。
車体は大きくなったものの、ホワイトボディは先代より40kgも軽量化している。フロントシートで5.5kg、リアシートで4.5kg、アルミニウム製のボンネットで2.4kgも削っている。エンジンは平均で15kgも軽くなった。
例えば、最もベーシックなコルサSEの場合、3気筒ガソリンエンジンに16インチホイールが装備されるが、車重は1tを切る。ドライビング・ダイナミクスの改善も期待できる。
オペルらしいスポーティな味付け
先に試乗している1.2LエンジンのSRiの場合、速度に応じたステアリング・アシストの設定に変更を受けている。このクルマはトップグレードとなり、8速ATが組み合わされるが、英国には入ってこないようだ。
だが、これまで以上に筆者は気に入った。エンジンルームにはブレースバーが追加され、スポーツモードでは排気音とステアリングの重みが人工的にだが強化される。導入を願いたいところ。
今回試乗するのは、100psを発生する1.2Lターボ・ガソリンエンジン版。英国ではベストセラーとなるとボクソールは読んでいる。自然吸気の75psと1.5Lターボディーゼルの102ps版も導入予定。
トランスミッションはどのエンジンにも、6速マニュアルか8速ATが選べる。いずれもグループPSAのもので、燃費も先代から大幅に向上しているという。
1.2Lターボエンジンは、レスポンスに優れ好印象。1750rpmから20.8kg-mという太いトルクを発生させ、ダウンサイジング3気筒らしく元気にコルサを引っ張る。
オペルとしてスポーティさを持たせるためか、排気音も含めて、サウンドはプジョー208より大きめ。MTの場合、トランスミッションからのメカノイズも大きめに響く。
走行時の上質感は、改善の余地がないわけではないが、クラスとしては悪くないレベル。それはインテリアでも同じ。安価なプラスティック部品が目立つし、ヘッドレストの遊びなど、気になる点がチラホラ。だが、走りが楽しいから許容範囲だ。
正確で応答性の良いステアリング
モニター式となるデジタルメーターは標準装備だが、どこか後付け感もある。シフトノブも質感は悪くないがプラスティック感が強く、疑問が残る。
そのかわり、ドライビングポジションは良好。30mmほど低められた着座位置と、ステアリングホイールの幅広い調整域が与えられている。
PSA譲りのタッチモニター式インフォテインメント・システムを採用するが、わかりやすくグループ化された、物理的なスイッチ類が残されている点も良い。車内へ馴染むのに時間がかからないという点は、一般的なコルサ・ユーザーに取ってありがたいポイントだろう。
PSAの傘下に入ったことで、オペルのエンジニアはある程度の制限を受けたことは間違いない。しかし、コルサにオペルらしいダイナミクス特性を与えるチャンスは、充分に残されていたようだ。
全体的に操縦性は少し軽すぎ、ドライビングを自然に楽しむには、少しの慣れが必要ではある。コンパクトカーとしては珍しくないが、ステアリングホイールへ伝わるフィーリングも少ない。
郊外の開けた道ではなく、都市部での走行が前提の設計なことは明らか。当然のことではある。それでも嬉しいことに、新しいコルサはずっと良くなった。
ステアリングは正確性が高く、速度に応じた反応も明快。プジョー208に見られる少し神経質なところもまったくない。ボディロールは小さく抑え込まれている。
スタビリティの高さは、アウディA1スポーツバックに近いほど。優れたグリップ力で、フラットなコーナリングを味わえるが、それ以上の自由度で楽しめるわけでもない。
2年の期間で得られた大きな成果
ボクソールによれば、電子制御でのシャシーの安定性を大きく高め、コントロール性を改善させたとしている。確かに、新しいコルサはクイックでクリーンに走るものの、安定志向。コンパクトカーとして、バランスには優れている。
試乗車は16インチホイールを履いていたが、鋭い起伏もコルサは驚くほど丸くなだめられていた。足さばきは、もしかすると素晴らしい208よりも優秀かもしれない。英国の道で比較してみたいと思う。
サスペンションはスポーティな設定で、やや硬め。我慢するほどではないが、短いホイールベースとリアのトーションビームなりの乗り心地だ。でも、このクラスで見れば充分に良い。一方でブランドの鍵を握る有望モデルながら、4代目までのお値打ち感はなくなった。
スリリングなドライビング体験では、フォード・フィエスタの方がまだ優位性は保っている。同じクラスには、異なる操縦性を備え、個性の強いプジョー208という存在がある。ライバルたちを驚かせた、最新のルノー・クリオ(ルーテシア)も看過できないほど手強い。
それでも、極めて競争の激しいコンパクト・ハッチバックの中にあって、コルサは充分に良いバランスに仕上がっている。2年という短い期間でのリリースを考えると、大きな成果だといって良いだろう。
ボクソール(オペル)・コルサ1.2 エリートのスペック
価格:1万8990ポンド(271万円)
全長:4060mm
全幅:1765mm
全高:1435mm
最高速度:194km/h
0-100km/h加速:9.3秒
燃費:16.9-18.5km/L
CO2排出量:96g/km
乾燥重量:-
パワートレイン:直列3気筒1199ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:100ps/5500rpm
最大トルク:20.8kg-m/1750rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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