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440psの最速マカン ポルシェ・マカン・ターボに試乗 真骨頂の操縦性

掲載 更新
440psの最速マカン ポルシェ・マカン・ターボに試乗 真骨頂の操縦性

新しい2.9Lツインターボエンジンを搭載

text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)

【画像】ポルシェ・マカンとベンツGLC 全102枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


一部にとっては待望のトップグレードとなるマカン、ターボに試乗する機会がやってきた。最新のポルシェ製EV、タイカンの場合、ターボはパフォーマンス・レベルを示す意味付けだったが、マカンの場合はちゃんとターボエンジンが搭載されている。

ショールームで人気モデルとなっているマカンだが、欧州で強化される環境規制に合わせることは、シュツットガルトの敏腕エンジニアでも一筋縄では行かなかったのだろう。マカンがマイナーチェンジを受けてから1年近く経過し、ようやくターボが登場した。

世界でも名だたる高速モデルを生み出してきた、長い伝統を持つポルシェ。コンパクトSUVのターボを待つ価値はあったのか、気になるところだ。

ポルシェは、マカン・ターボのアップグレードに関して、他のグレードよりも少し進んだ内容を与えている。エンジンはマイナーチェンジ前の3.6L V6エンジンから、軽量で強力な2.9Lエンジンへと置き換えられた。

V型に並ぶシリンダーのバンク部分に配されたツインターボにより、440psと56.0kg-mを発生する。レスポンスに優れたレイアウトで、3.6Lユニットより40psほどの増強。最大トルクは1800rpmから湧き出す。

エンジンヘッドと一体になったエグゾーストマニホールドにより、軽量化するとともにターボブーストの立ち上がりも速い。新しいダイナミックエンジンマウントを採用し、コーナリング中のエンジンの動きを抑制。クルマの機敏性と、ステアリングの正確性を高めている。

タングステンカーバイド・ブレーキが標準

それ以外の変更はやや控えめ。標準のマカンよりリアトレッドは3ミリ広げられ、アンチロールバーが専用のものに。フロントハブにサスペンション・スプリングとダンパーを支持させる、新しいアルミ製サスフォークが採用された。

テスト車両は、足周りに付けられるほぼすべてのオプションを装備。改良を受けた車高調整式のエアサスペンションに、ポルシェ・トルクベクタリング(PTV)アクティブ・リアディファレンシャルなどが走りを支える。

すべてのマカン・ターボには、タングステンカーバイド・コーティングされたスチール製ブレーキディスク(PSCB)が標準装備となる。通常のブレーキと、高価なカーボンセラミック・ブレーキとの中間に位置するアイテムだ。オプションを含めたテスト車両の価格は10万ポンド(1390万円)を超えていた。

先代からボディパネルが変更されているが、特徴としては12mm短いオーバーハングを作り出すためにフロントノーズが専用デザインとなっていること。テールゲートの上部には2重のスポイラーが追加されている。人気を高めるのに一役買うに違いない。

マカン・ターボの車内の雰囲気は、既に馴染みのあるもの。標準のマカンより大きな10.9インチのインフォテイメント・システム用モニターと、インテリア素材が新しく設定されているが、それ以外のインテリアはほぼ同じといって良い。

幅広いシート調整しろが確保され、SUVとしてはかなり低い着座位置にすることも可能。3スポークのステアリングホイールは、ポルシェ911に装備されているものと同じ。モニターで行うエアコンのコントロールには、少し古さを感じるかもしれない。

真骨頂といえるコーナリング能力

新しいエンジンは、マイナーチェンジ前と同様に造作なく鋭い加速を体験させてくれる。同時に以前のように、個性が少し薄い。オプションのスポーツ・エグゾーストからは控えめなバリトン・ノイズに、破裂音が時折混ざる。

トルクカーブはフラットで、シームレスな7速PDKに知的な4輪駆動システムとの組み合わせで、アクセルを踏み込んでもスペックほどの劇的な印象は残らない。ちなみにスポーツ・クロノパッケージの場合、0-100km/h加速は4.5秒だ。

メルセデスAMGのGLC63が搭載するV8エンジンの方が、サウンドやドラマ性では圧倒的に上。加えて加速やスピードの面でも、マカン・ターボが決定的に優位というわけでもない。

だがポルシェの真骨頂はコーナリング能力。1945kgという車重の存在を見事に隠した走りに、頭は少し混乱する。ニュートンがその場に立ち会ったなら、自身が立証した運動の法則を疑ってしまうかもしれない。

短く詰められたノーズをコーナーの内側へ向ければ、フロントタイヤはしっかり路面に食らいつく。素早くボディは向きを変え、ロールは抑え込まれる。そのまま不思議に思えるほどのグリップ力と安定性を保って、コーナーを脱出していく。

機敏性は、リアデフのトルクベクタリング機能によって強化。コーナー外側のリアタイヤを強く前へ押し出させることで、早めの加速を実現させ、そのまま直線でのスピードへと結びつけている。

操縦性にはポルシェらしい適切な重み付けと正確性が与えられ、SUVの中では随一のドライビング体験を実現。強化されたブレーキは、重量級のマカンのスピードをいとも簡単に失わせる。

運転が楽しめるSUVのデフォルト候補

今回の試乗条件が良くなかっただけに、マカン・ターボの卓越した走行性能を強く感じることができた。初めて走る路面が滑りやすい道路でも、通常のスポーツカーを引き離せるパフォーマンスは特筆に値する。濡れた路面でスタビリティ・コントロールをオフにすれば、パワー・オーバーステアに持ち込むこともできそうだ。

乗り心地は、優れた操縦性を確保しながら、しなやかさも感じられるボーダーライン上にある。低速度で走行していると、稀に強い振動が伝わることがあったが、試乗車の大きな21インチホイールが原因かもしれない。

車重の50%位を消し去ったかのような、物理的な合理性を失わせるほど、想像を超えた機敏な走りを実現させているマカン・ターボ。実用性も高く、低速域でも快適で静かという特性も美点だ。運転にのめり込んでいると、2t近いSUVに乗ということを忘れてしまう。まるでスポーツサルーンのようだ。

マカン・ターボは、実用性の高いファミリー・エクスプレスといったところ。スポーツサルーンのように運転が楽しめるSUVをお探しなら、ポルシェ・マカンはデフォルトで候補となるべきクルマだといえる。

だが1つ付け加えるなら、V6エンジンの個性の薄さ。価格で身近な標準のマカンやマカンSも、充分に素晴らしい動的性能を備えている。特にマカンSでも充分に速いことは、気に留めておきたいところだ。

ポルシェ・マカン・ターボのスペック

価格:6万8530ポンド(952万円)
全長:4697mm
全幅:1923mm
全高:1624mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:10.2km/L
CO2排出量:224g/km
乾燥重量:1945kg
パワートレイン:V型6気筒2894ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:440ps/5700-6600rpm
最大トルク:56.0kg-m/1800-5600rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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