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ナチュラルな電子制御 ランボルギーニ・ウラカン・エボ 国内サーキット試乗

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ナチュラルな電子制御 ランボルギーニ・ウラカン・エボ 国内サーキット試乗

もくじ

ー ウラカン・エボ、何が違う?
ー どのようなメニューだったか
ー 自分がコントロールしている実感
ー スラロームとドリフトにトライ
ー ペルフォルマンテも捨て難いが……
ー ランボルギーニ・ウラカン・エボのスペック

ウラカン・エボ 海外の評価

ウラカン・エボ、何が違う?

パワーが640㎰もあるスーパースポーツをサーキットで走らせるという仕事は、ワクワクするほど魅力的である反面、かなり緊張するタスクでもある。

ましてやその舞台が、しばらく走っていないコースであって、しかもいつ雨が降ってきてもおかしくない空模様だったりすれば、なおさらのことだ。

そのスーパースポーツとは、ランボルギーニ・ウラカン・エボ、ランボルギーニのV10モデル、ウラカンに今年加わった新仕様で、同シリーズのトップパフォーマンスモデル、ペルフォルマンテと同チューンのエンジンを搭載すると同時に、ペルフォルマンテとは異なるシャシーダイナミクスによって、新次元のドライビングを実現したとされるクルマだ。

まずパフォーマンスをチェックすると、チタン製空気バルブを採用して排気システムに改良を加えた自然吸気V10エンジンは、基本ペルフォルマンテと同じ仕様で、5.2ℓの排気量から640㎰/8000rpmのパワーと61.2kg-m/6500rpmのトルクを絞り出し、7段DCTを介して4輪を駆動する。

乾燥重量は1422kg、パワーウエイトレシオは2.22kg/psという超絶な値になる。

結果、加速は0-100km/hが2.9秒、0-200km/hが9.0秒で、最高速325km/h以上なる鮮烈な数字をマーク、100km/hからのフルブレーキングでは31.9mで停止するという。

だが、エボにとってそれ以上に重要なのは、LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)と呼ばれるシャシーダイナミクスの分野だ。

それは、新採用された後輪操舵と4輪に作用するトルクベクタリングシステムを中心とする動的挙動制御の中央処理システムで、クルマの挙動からドライバーの次の動きとニーズを予想して、完璧なドライビングダイナミクスを判断するものだという。

バージョン2.0にアップグレードされた磁性流体ダンパーを備えるアルミ製4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションや、電動パワーステアリング、それにノーズ、サイド、リアおよび床下のディテールがリデザインされて空力的に一段と洗練されたボディなどが、そのLDVIによる制御を物理的に支える。

ちなみに後輪操舵は2年ほど前にアヴェンタドールに採用されているが、ウラカンには今回のエボが初採用となる。

一方、ストラーダ、スポーツ、コルサの3モードをドライバーが任意に選べるANIMAコントローラーも、従来から備わっているとはいえ、ドライビングダイナミクスに関する重要なアイテムのひとつだといえる。

どのようなメニューだったか

7月某日午前9時、曇天のFSW=富士スピードウェイフルコース。先導するインストラクターのペルフォルマンテにジャーナリストの乗る2台のエボが続くというフォーメイションで、ランボルギーニエスペリエンザの一環であるプレス試乗会は始まった。

まずはインストラクターのペルフォルマンテに続く2台目のポジションでコースインするが、ウラカンはいつものとおりドライビングポジションが自然に決まるのが好ましい。

フルコースを走るのはかなり久しぶりなので、ステアリングに備わるANIMAコントローラーはデフォルトのストラーダのまま、まずはコースの感触を確かめつつインストラクターを追走する。

しかしその間にも、ステアリングの正確さとフィールの好さ、ブレーキの強力なこととそのコントロール性の素晴らしさが実感できる。LDVIのお世話にならない領域でも、ハードそのものの出来の好さが伝わってくるというわけだ。

そうして3ラップするが、最初のスティントではストレートの後半にブレーキングゾーンが設けられていて、そこでは20km/hまで減速、そこから再び1コーナーに向けて加速していくという、クルマとコースに慣れるためのフォーメイションである。

そこで一旦ピットイン、今度は別のエボのコクピットに収まって走り出すが、そこでANIMAを切り替える。

自分がコントロールしている実感

最初はスポーツを選ぼうと思っていたが、インストラクター曰く、スポーツよりコルサの方が前輪へのトルク配分が多いので、姿勢はより安定するはずだという。そこでちょっと考えた結果、コルサを選択してコースイン。

コルサを選ぶとスロットルレスポンスも明確に鋭くなり、5.2ℓのランボV10が背中の後ろで熱い爆音を奏でつつ一気に吹け上がって、エボを猛烈な勢いで加速させていく。やっぱりNA=自然吸気のスポーツエンジンは素晴らしい、と実感する場面だ。

そのままメインストレートを全開で駆け抜けると、ストレート後半のパナソニックゲートを過ぎたあたりでインストラクターのペルフォルマンテがブレーキング開始、それを確認する直前、こちらのエボのスピードメーターは260km/hを超えようとしていたと記憶する。

そこからフルブレーキングに入ると、ウラカン・エボは進路を乱されることなく真っ直ぐにスピードを殺して、1コーナーにアプローチしていく。

1コーナーの進入では、後輪操舵が前輪とは逆位相に作動して、軽快にターンインしていく。ヘアピンは進入速度が意外と高いのでちょっと微妙だが、同じく後輪操舵独特のターンイン感覚は、300Rあとのシケインや最終コーナーの進入でも実感できた。

で、それらのコーナーからの脱出に際してアンダーステアをほとんど意識させないのは、トルクベクタリングの効果もあるのだろう。

一方、100Rや300Rといった高速コーナーでは、後輪操舵が前輪と同位相に作動して挙動を安定させているはずで、コースを思い出して徐々にペースを上げたときも、エボは高速コーナーでドライバーに不安を抱かせるような不穏な挙動を見せることは一度もなかった。

一方、サーキットしか走っていないので乗り心地に関して正確な判断はできないが、新仕様の磁性流体ダンパーはその分野でもいい仕事をするのではないかと想像できる。

しかも、ハードコーナリング中には例のLDVIの頭脳が作動して繊細にエボの動きをコントロールしていると思われるが、クルマの挙動やステアリングフィールの変化などによって、その介在を明確に意識させられることがなかったのも素晴らしい。

つまり、明らかに電子制御に走らされている、あるいはクルマに載せられている、という感触を抱くことなく、あくまで自分がコントロールしている実感を得ることができたのだった。

そこはスポーツカーとして極めて重要なポイントだから、ランボルギーニのエンジニアたちは、そこを強く意識してエボを仕上げたのだろう。

スラロームとドリフトにトライ

そうやっておよそ10ラップほど、フルコースで快感の超高速でドライビングを味わったのち、今度はスキッドパッドに移動してスラロームとドリフトにトライ。

まずはパイロンを狭い間隔で並べた2つのスラロームコースを、エボスパイダー、エボの順で走る。

そこでは全幅1.9mを超えるウラカン・エボが、後輪操舵の逆位相作動によってパイロンとパイロンのあいだの狭い空間に無理なくノーズを切り込むことができるのを体験したが、これに関しても作動に特別な違和感を覚えることがなかったのが好ましかった。

そして最後はドリフトである。

とはいえウラカン・エボのドリフト、カウンターステアを切りながらテールを派手に流すあのドリフトとは違う。

いわゆるゼロドリフト、もしくは当方の表現でアンダーステアドリフトという奴で、ステアリングは通常どおり内側に切ったまま、後輪をアウトに流すという状態。

助手席に座る元F1ドライバー、高木虎之介インストラクターの掛け声に合わせてスロットルを踏み込むと、前輪に荷重が載った状態であればアンダーステアが強まることなく、後輪がアウトに滑り出す。そのときANIMAはスポーツにセットしてあったはずだ。

その際、スロットルを踏んでいる限りオーバーステアにならず、カウンターステアを切る必要がないのが、トルクベクタリングを駆使したLDVIの威力なのだろう。

これをサーキット走行より前に体験していたら、ANIMAをスポーツにセットして、フルコースのどこかでゼロドリフトを経験してみたくなったかもしれない。

ペルフォルマンテも捨て難いが……

というわけでウラカン・エボ、オーバー70の当方がいきなりサーキット走っても想像以上にドライビングし易く、しかも電子制御によるコントロールをストレートに意識させないナチュラルな感覚を備えた、新しい魅力を感じさせる320km/h級スーパースポーツだった。

もちろん、そのドライビングが痛快なものだったのは言うまでもない。

ちなみにウラカン・エボのプライスは税抜き2984万3274円と公表され、よりメカニカルな方法でドライビングダイナミクスを向上させ、一段とレーシーな雰囲気を与えられたペルフォルマンテと比べて、435万円ほど安い。

テールにウイングを独立させた、レーシーな出で立ちのペルフォルマンテの魅力も捨て難いが、競技志向やサーキット志向がそれほど強くないなら、エボの選択は大いにアリだと思う。

もしもサーキットに攻め入っても、手に汗握るような緊張感なしにスポーツドライビングを愉しめることは、僕が実感したとおりである。

ランボルギーニ・ウラカン・エボのスペック

価格:2984万円
全長×全幅×全高:4520×1933×1165mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:7.7km/ℓ
CO2排出量:332g/km
乾燥重量:1422kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:640ps/8000rpm
最大トルク:61.2kg-m/6500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ

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