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カーボン塗装技術に15年、はじまりは偶然 アストンからも受注 その軌跡

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カーボン塗装技術に15年、はじまりは偶然 アストンからも受注 その軌跡

もくじ

ー ヴィジュアルカーボン生みの親
ー 難しいカーボンの塗装
ー 塗装を定着させる手法
ー 桁違いの発色性能
ー カーボン加工の流れ

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ヴィジュアルカーボン生みの親

クリアで高光沢の仕上げが施されたカーボンファイバーはゴージャスだが、このような仕上げは非常に難しい。しかし、英国に拠点を構えるプロジェクト12は徹底した研究開発を15年続け、新しい技術を確立した。

当然、「ヴィジュアルカーボン」と呼ばれる唯一無二な仕上げはプレミアムブランドから引っ張りだことなり、アストン マーティンやマクラーレン、シンガー、ブラハムといったメーカーから多くの注文を受けている。

多くの素晴らしいアイデアと同じように、この技術も偶然生まれたものだ。デイブ・キングはバンベリーの事故車修理専門店であるカーボディ社のトップを務める人物で、ヴィジュアルカーボンは彼の独創性が生みだしたものだ。

数年前、学校を卒業して自動車の修理業を始めたキングは、事業内容の拡大を模索していた。契機となったのはショールームで使用するため、カラーサンプルを制作して欲しいという以来だった。「わたしはプレートの上にそれぞれの見本カードを固定する方法を発明したため、より多くのサンプルを制作できるようになりました」とキングはいう。

難しいカーボンの塗装

うわさは広まり、最終的には大手自動車メーカーから、カーボン部品に高品質で耐久性の高いクリアのラッカーペイントを施す依頼が舞い込むようになった。調査を行ったところ、このような作業には確立された技術が存在していないことがわかった。「定番の手法は存在していないことに気づき、ひらめきました」とキングはいう。「それなら自分が作って、専門にすればいいってね」

こうして2006年にプロジェクト12が発足した。社名は開業時の工業機械の数からとられた。それまで、カーボン地の仕上げのほとんどは表面を磨いて行われていたが、これでは深い光沢のあるラッカーによる仕上げはできなかった。

カーボンファイバーは編んだカーボン繊維にレジンをしみこませ、型の中で圧力をかけたあと、熱を加えることで完成する。

型から部品を取り外す際にはシリコンを主原料とする剥離剤が用いられるが、これがレジン表面の細かい穴に残ることで塗料やラッカーを弾き、「フィッシュアイ」と呼ばれる塗装のへこみの原因となってしまう。そのためレジンに悪影響を与えず化学的に表面を洗浄することがキングの課題であった。彼は薬品会社にと協力して特別なクリーナーの開発に取り組んだ。

塗装を定着させる手法

ふたつ目の課題はラッカーをカーボン表面に強固に定着させることだった。通常の金属ならまず下地用塗料を塗る。これは金属表面と化学的に結合して、上に塗る塗料のために強固な基礎を作る。だが、カーボンでは使用することが出来ないため、紙やすりで物理的に表面に凹凸をつける必要がある。十分な下地を作るには比較的粗い目のやすりが必要だが、レジンの層は薄く容易に剥がれてカーボンファイバーまでダメージを受けてしまい、これでは部品が台無しだ。

代替案を思いついたのはキングの友人で、BARホンダF1のメカニックチーフを経てカーボンの造形に携わっていたアレステア・ギブソンだった。「蒸気マッティング」とは微小なガラス粒子を含む水と蒸気の混合物を用いる方法だ。キングは塗装機器の製造メーカーと協力して特別な混合物を開発し、設備に多額の投資を行った。

「それでも、技術の確立には至っていませんでした」とキングはいう。「大きな部品では損傷させるリスクが残っていたのです」高圧ジェットは局所的であり、使用する混合物は正しくとも方法に問題が あると考えた。「じれったい気持ちでした」彼は続ける。

「カーボンファイバーの仕上げを研究してすでに10年が過ぎていました。そしてふたつ目のひらめきが降ってきたのです」必要なのは従来の小さなノズルのコントロール性を備えた、より大きな放出ノズルなのではないか。キングは再び製造メーカーと特注の機械を完成させ、ついに問題を解決した。

桁違いの発色性能

ラッカーに関してはスプレーブースでの自動車塗装と同様に、クリアの下地剤を吹いてプロジェクト12の職人がやすりをかける。トップコートのクリア塗装が終わると、手作業で磨かれ品質管理部門の検査を受ける。キングはこの部門を冗談交じりに「利益妨害部門」と呼ぶ。どれだけ小さなミスも見落とさないからだ。

塗料はツヤありやツヤ消しクリアが用いられる場合もあり、紫外線フィルタとして働いてカーボンの黄ばみを抑える効果を持つ。

ツヤ消し仕上げは最も難しい。問題があった場合、最後に磨いて修正することができないからだ。そのため、スプレーガンを完全に直線的に向ける必要がある。

もちろんどちらの塗装もカラーに対応しており、従来の手法に比べ発色が桁違いだ。

ラッカー層の下に金箔を使用する技術は現在も開発中だが、15年で数十万ポンドを費やしナチュラルコンポジットセンターの認証を得た今、キングの目標はほとんど達成された。カーボンの仕上げで驚異の技術を手に入れ、彼のチームはその道の第一人者となったのだ。

カーボン加工の流れ

1
型から取り出す際には主にシリコンを原料とする剥離剤を用いる。その後プロジェクト12が特別に開発したクリーナーや脱脂剤を用いて部品を洗浄する。

2
特注の機械を用いてカーボンファイバーの表面に細かく傷をつけ、ラッカー剤が定着するようざらついた下地を作る。

3
透明の下地剤を塗布し、やすりがけを行う。複雑な面構成など、この工程が難しい場合には2で使用した機械を用いて局所的に表面を加工し、塗装面上層の乗りを良くする。

4
表面をツヤありやツヤなしクリア、カラーのラッカーで塗装する。カーボンファイバーの織り方に応じてホログラフィックエフェクトをつけることもできる。
5
特別に開発された黒いコンパウンドで最終仕上げを行う。一度仕上がったラッカー被膜は、紫外線による黄ばみからカーボンファイバーを守になる。

6
完成した部品に不備がないか検査を行う。「ブロッキング」と呼ばれる手作業によるヤスリがけの工程は、完璧な仕上げに欠かせない。上層の乗りを良くするために、圧縮空気を用いた小さなサンダーで表面を整える。

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