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ニューモデル 2018.12.31

小型スポーツカー対決 ロータス・エリーゼとライバルたち 回顧録

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もくじ

ー ハンドリングが魅力のエリーゼ
ー 値上がりに見合うか
ー エリーゼ向きのコース
ー 最高のハンドリング
ー 共通点の少ないZ
ー 直線での凄まじい速さ
ー 成り立ちの近いロードスター
ー 価格差には納得
ー FF最強のライバル
ー 走りと品質を両立

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ハンドリングが魅力のエリーゼ

この年5月に英国で発売されたばかりの新型エリーゼを俎上に乗せたロードテストの記事を本誌英国版で見たときには、手頃な価格帯のスポーツカーという市場に地殻変動とでもいうべき激変が起こりつつある予兆に思えてならなかった。

今回の個体は最廉価仕様のエリーゼで、このクルマは英国史上最高のスポーツカーと形容されるにふさわしい名車であることにはほぼ異論はない。しかし今となってはあまりにパワーが低い割に価格設定が高すぎ、さらに看過できない事実としてすでに旬の時期を過ぎている、と指摘されていたのである。

1995年に登場して以来、新車市場におけるひとつのセグメントにエリーゼが築き上げた不動の地位は、本当に完璧だった。ステアリングを握る者が魔法をかけられたかのように魅了されてしまうハンドリングによって、歴代のエリーゼ各車は本来なら記憶に残ってしかるべき数々の他車を押しのけ、ロードテストランキングでベストバイの地位を長らく確保し続けてきた。

それゆえに、その結論が暗示する現実について、オートカー英国版編集部内にはしばらくのあいだ口にするのもはばかられる雰囲気があったのは確かだ。

しかし、本誌英国版が新型エリーゼをテストした結果は、ロータス最新のジュニアロードスターを手放しで推薦する行為にはもはや以前ほど説得力はなく、「手軽な価格でスリルを入手したいのなら近所のロータス・ディーラーへと直行するように」とも断言できなくなってしまっている現実を突きつけていると受け取らざるを得ない。

値上がりに見合うか

いうなれば、現在の水準で測るなら妥協の産物としか評価できないキャビン品質、リファイン、動力性能のエリーゼを、510万円もの車両価格がはるかにパワフルではるかに実用性に優れたライバルたちがひしめく上位セグメントへと押し込んでしまっているのだ。

最新のエリーゼは、果たしてそこまでランクアップした価格帯を正当化できる仕上がりなのか──われわれがノーフォークのカントリーサイドを訪れたのは、それを見極めるためである。136psの1.6ℓエンジンを搭載したエリーゼとともに連れてきたのは、327ps(日本仕様は336ps)の日産フェアレディZと265ps(同256ps)のVWシロッコRだが、どちらもオプションを追加したエリーゼより価格が安い。

そしてさらにもう1台、費用対効果の指標として、わずか160psながら車両価格は286万円と格安のマツダ・ロードスターRS RHTにも参加してもらうことにした。

同等の価格で2倍近いパワーを備えた高性能なライバルたちにエリーゼは勝てるのか。それともむしろはるかにシンプルで廉価なロードスターのライバルとみなすべきなのか。判明するまでにそれほど時間はかからない。それと同時に、約500万円の価格帯で最高のドライバーズカーはどれなのかという問いにも答えが出るはずだ。

エリーゼ向きのコース

イーストアングリアの、交通量が少なく曲がりくねっていてスリッパリーな個所も多いバックロードは、この勝負にはまさにうってつけの舞台だ。少なくとも今回のクルマはすべてこのような道でこそ真価を発揮できるように、非常によく似た経緯で開発されてきている。林の中を抜けるこの道の路面は凹凸が多く泥まで乗っていて、見通しが利かずストレートも短い。

こういう道では、安定した姿勢を保ちながらもキビキビと動ける機動力を持ったコンパクトなクルマでなければまともには走れない。ダンピングの効いた応答性の良い足まわりで、いかなる瞬間にもどれだけのグリップが残されているかを把握できるコミュニケーション能力を備えていなければ、ここでは使い物にならないのだ。それはつまり、ロータス・エリーゼ以外のクルマである。

公式発表によれば、エリーゼのシャシーは今回のモデルチェンジで完成の域に達したそうだ。言い換えれば、実質的にこれ以上の改良は不可能ということだ。

シャシーチューニングにかけては世界のリーダー格であるヘイゼルのエンジニアがエリーゼを2010年モデルへとアップデートさせる過程で悟ったのは、いかにトーインやキャンバー角、それにブッシュやダンパーのリバウンドなどを個別に変更しようとも、これ以上の成果を得られはしないという限界だったのである。

最高のハンドリング

そのときどきの最新のエリーゼが常にそうであったように、この最新型のステアリングもまた本当に最高としか言いようのない素晴らしさを備えている。いまだにパワーステアリングは採用されていないが、そもそもそんなものはこのクルマには無用である。

前車軸にかかる重量比率がきわめて少なく、しかも比較的軽量で細めの16インチホイールと175幅のタイヤを履いているのだから当然だ。おかげで、タイトコーナーの入り口で前輪がフルロックする約30度の切れ角まで操舵するにはそれなりの力が必要となるが、代わりにフィードバックは文字通りダイレクトで、それは世界中で大量に売られているどの新車でも絶対に得られない感触である。

路面のグリップやキャンバー角の変化が絶えず指先に感じられるので、舵角を取り過ぎてフロントタイヤがアンダーステアを示し始めたら即座にわかる。この能力があるからこそ、持てるグリップとアジリティを最後の最後まで使い切ることが可能だと保証されている確信が、エリーゼのステアリングからは得られるのだ。

リアタイヤについても十分に信頼できる。多くの歴代モデルがそうだったように、最新型もまた中速から高速のコーナリングでは終始一貫、安定したニュートラルなラインを描く。スロットル操作には敏感に反応するからアペックスで意図的なタックインに持ち込むことも可能だが、決して完全なオーバーステアになだれ込んだりはせず、フルパワーでも安心して振り回せる。これは間違いなく、太めのリアタイヤとあえてLSDを装備しなかったオープンデフのおかげだろう。

共通点の少ないZ

それに比べると、日産のフェアレディZは「エディ・ストバート」(欧州最大の運送業者)のロゴをボディサイドに貼り付けた18輪トラックのようなもので、エリーゼとの共通点を見つけるのは難しい。

デリケートな挙動と濃密なコミュニケーション、ダイレクトで一貫したレスポンス、いかなる場面でも落ち着き払った姿勢を乱さない安定した走りで魅了するエリーゼに対し、ZはまずV6の強烈な振動でドライバーを圧倒しにかかる。

頑強なシャシーはロードローラーのごとく路上の凹凸を叩き潰しながら走り抜けようとしているかのようで、乗員は踏み越える障害物の正確な位置と衝撃の強度を常に意識させられる。Zは強烈な絶対的グリップとボディの制御を最優先して、ハンドリングの許容度やバンプの衝撃吸収能力を二の次としたスポーツカーなのだ。

ステージがサーキット、もしくはきわめてスムーズな路面の爽快なワインディングロードであれば、Zの走りにももっと共感できただろう。しかし、ここはノーフォークなのだ。家畜の脱走を防止する空堀と地盤沈下による路面の陥没が散在する牧場地帯では、Zは単なる期待外れでしかなかった。

直線での凄まじい速さ

幅がもっと広くて路面がスムーズで、ストレートも十分な長さがあり、4つのホイールがすべてきちんと接地してESPの警告灯が点滅しないような道であれば、Zはその正確さと凄まじい速さで、エリーゼがツイスティでバンピーなコーナーで稼いだ100mの差を、400mほどの直線であっという間に取り戻せるだろう。

しかし、ドライビングにのめり込めるようなタイプとは間違いなく違う。それどころかロードノイズとエンジンの咆哮を勘案しても、運転の楽しみを満喫できるという域にすら達していない。そのうえ道幅が狭まって地形が複雑さを増してこようものなら、足捌きが往年のアメリカンマッスルカーと大差ないものであることを、Zは露呈してしまう。

別の場所、あるいは別の対戦相手なら、Zはもっと高い評価を得ていたかもしれない。エリーゼと(英国では)たいして変わらない価格ながらはるかに強烈なパワーとパフォーマンスを備え、それらを包む押し出しの効いたボディもまずまず魅力的だ。

しかし、同時にそれは、今回のようなテストにはあまりにも繊細さに欠ける道具であることの証左にもなった。今回の4台のなかで最初に脱落する1台が、ここに決定したのである。

成り立ちの近いロードスター

エリーゼがステアリングを握ってすぐにその基本デザインからくる高い運動性能を感じられるクルマなのに対し、マツダ・ロードスターのよさを理解するには多少の時間を必要とする。

この2台は、ご承知のように深い関係がある。ロータスの初代エランが存在していなかったなら、マツダがロードスターのようなクルマを作ろうと考えるにはいたらなかったはずだ。

そしてエランが登場してからほぼ半世紀が過ぎた今、ロータスのラインナップでその後継となるポジションにいるのがエリーゼである。直接の血のつながりはないにせよ、今回のミーティングでは何か久しぶりに遠い親戚に再会したような感慨があった。

実はロードスターのほうがエリーゼよりもコクピットが狭いと知ったら驚くだろうか。この日本製のリトラクタブルハードトップは、全長ではエリーゼより220mmも大きいのだが、実際に乗ってみるとルーフは頭すれすれに低く、膝まわりはトランスミッションのトンネルとダッシュボードに触れんばかりにタイトだ。

ある意味では、実際に走ってみてもロードスターのほうがコンパクトでもある。エリーゼよりも最小回転半径は小さく、より太いフロントタイヤとリミテッドスリップデフのおかげもあって、タイトなヘアピンなどはむしろこちらのほうが扱いやすいくらいだ。だが総合的には、エリーゼほど軽くて俊敏で完璧にバランスの取れたクルマには感じられなかった。

価格差には納得

ステアリングには決して同等の親密感はなく、またハンドリングでも決して同等の鼻先の軽さはない。ロードスターはそこまで精密な機械ではないのだ。その点だけに限っていうならば、エリーゼは確かに価格差に見合うだけのフィールを備えている。

明らかにドライビングマシーンとして優秀であり、丁寧に造り込まれているのがわかるのだ。それに、ルーフの開閉は格段に簡単だが、リファインの点でもエリーゼにはおよばない。

ロードスターで評価すべきは、複雑さも虚飾もなく、ただ運転すれば楽しめるクルマだという点に尽きる。コンパクトなプロポーションはタイトなB級路でこそ本領を発揮するものだし、サスペンションのトラベルをたっぷりと取った控え目なチューンのシャシーもまた、そういう環境では有利に働いている。

確かにエリーゼに期待するような精度でコーナーを抜けようと思ったらそう簡単にはいかないが、そこまで細かいことは気にせずに気楽にコーナリングを楽しみ、7000rpmまで回る気持ちのいいエンジンを堪能し、後輪駆動シャシーのイキイキとした挙動を満喫するだけでも十分ではないか。

ロードスターは気の向くままに走りを楽しめるクルマであり、車両価格に値する以上の楽しみを味わい尽くせるだろう。ただ、その流儀がロータスとはまったく別種のものであるだけのことだ。

FF最強のライバル

ここまでは「価格が高すぎてアンダーパワー」なエリーゼが有利に勝負を進めてきた。Zが327psのV6を搭載しながらもその優位を発揮できずに苦闘するのを横目に平然と大差をつけた。ロードスターという英国のバックロードを得意とする数少ない傑作車を相手にしても、少なくとも価格差に見合った走りの差は見せつけることができた。しかし今度は、そのどちらよりもタフな相手が待ち受けている。

シロッコRは登場以来本誌上で予想外の好評を受け続けてきた。速いFF車としては本誌がフォード・フォーカスRSよりも推奨する唯一のクルマであり、ルノー・メガーヌ250カップよりも気に入っている唯一の存在でもある。そして今回のような、路面が荒れてところどころ濡れており、しかも先の予想がつかないような道でも、エリーゼと同等の完璧なダイナミクスと巧妙な走りを見せる強敵だ。

バランスの取れた安定した乗り味でバンプを高速で乗り越し、スリッパリーなコーナーでも平然とこなす精密で確実な走りをシロッコRは備えている。スリルの純度はエリーゼほど高くはないが、実力はまったく互角だ。そのうえ直線での動力性能勝負になったら、エリーゼ勝ち目はない。

コーナーが連続する区間ではなんとか追従していけるだろうし、それなりに運転に集中していれば同等のペースをしばらく続けることも可能だろう。だが、ギアの選択でミスを犯さずにトルクの細さを完璧にカバーして走り続けたとしても、追い抜くのは不可能だ。エリーゼには視界から去っていくシロッコRを見守ることしかできない。

走りと品質を両立

そこで問題となるのが、そんなエリーゼの速さを許容できるかどうかである。実はそれほど速くはなく、決して印象的なデザインでも高級な装備でもなく、そして実用性はほとんどないスポーツカーに、ただ熱中できるドライビング体験を与えてくれるからという理由だけで510万円を投じられるのならば、選ぶべきはエリーゼである。そういう価値観に基づくなら、500万円クラスでもっとも運転に没入できる魅力的なスポーツカーは、間違いなくエリーゼだ。

しかしこの事実は同時に、500万円クラスで総合的に最高なスポーツカーはドイツ企業がポルトガルで製造しているクルマだという結論をも明確に指し示している。

シロッコRの信じられないほど高い動力性能や確実で精密なハンドリングやVWのトレードマークである長所、つまり卓越した組み立て品質と最高級のリファイン、それに4人が広々と乗れる室内空間という組み合わせは、あまりにも強烈な、あらがいがたい魅力である。

初期モデルから一貫してそうだったように、最新モデルでもエリーゼは依然として素晴らしい遊び道具であった。変わったのは、この価格帯からこのクルマを選択する条件として強いられる品質や動力性能における多くの妥協を甘受する決意が加えられたところだ。だが、シロッコRを買えば、その欲望は両方ともに満たされるのである。勝者はシロッコRだ。

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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