もくじ
ー 市販型e-トロンをお披露目
ー バッテリーの詳細
ー これまでの話
ー 技術仕様
ー 発売時期
ー 「e-トロン」という名称
グランツーリスモ生まれ アウディe-トロン・ビジョン・グランツーリスモ 試乗記
市販型e-トロンをお披露目
アウディはe-トロンと呼ぶ電動のSUVの市販仕様を公開した。2つのモーターと95kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、150kWの急速充電を可能とする。これは世界初であり、テスラのスーパーチャージャーよりも速い充電が可能だという。
8月の発売に先駆け、ベルリンにあるシーメンスのテストセンターでe-トロンがお披露目された。
e-トロンのモーターの詳細なスペックは依然として秘密にされているが、オーバーブースト時には162ps程度を発揮すると見込まれている。すなわち、2基の組み合わせによる総合出力は324ps程度だ。
そして、このe-トロンはアウディの新しい命名規則にのっとって「55」のバッジが与えられる見込みだ。通常の内燃機関モデル、ハイブリッド、EVのすべてが対等に体系づけられている。
ある情報筋は「e-トロンの名称をクワトロのように継続的に使うことを決定しました」と話してくれた。「われわれの最初のスポーティなモデルはアウディ・クワトロと名付けられていました。それと同様に、われわれ初のEV車にはアウディe-トロンと名付けられるでしょう」
たしかにパワフルではあるが、以前公開された2つのコンセプトカーの503psよりは低出力となるだろう。これらのクルマはフロントに1基、リアに2基の計3基のモーターを搭載していた。
しかし、今回2モーターを選択したということは、アウディが近い将来3モーターのパフォーマンス仕様を発表する余地を残したということだ。
バッテリーの詳細
e-トロンの市販仕様に搭載されるリチウムイオンバッテリーの詳細も初めて公開された。
36個の靴箱ほどの大きさのバッテリーをフロントアクスルとリアアクスルの間のフロア部分に搭載することで、重心を下げるとともに衝突時の保護に努めている。
このモジュールは12のパウチから形成されており、それぞれ60Ahの容量を持つ。これは日産やテスラが使用するものより大容量だ。生産はLG化学またはサムスンが担当する。
大半は中央部分にフラットに並べられているが、一部は補助的にメインバッテリーとリアシートの間に置かれている。
バッテリーは決して軽いとは言えず、e-トロンの車重の700kg以上を占めているようだ。
バッテリー技術の核となっているのは、バッテリーモジュール下に取りつけられた格子状の水冷式冷却システムだ。フロントに搭載されたラジエターを通して放熱するよう設計されている。極端な気候においては、補助的に設置された熱交換装置がバッテリーにとって最適な23℃から35℃に保つよう冷却または加熱を行う。
家庭などのAC電源による充電は11kWとされるが、オプションで22kWのチャージャーも選択可能なようだ。
150kWのDCチャージャーは30分でバッテリーの80%の充電が可能だという。これは欧州の自動車メーカーが共同で普及を進めている「IONITY」のシステムを利用するものだ。
これまでの話
アウディ初となる完全な電気自動車であるe-トロンSUVは今年中に「カーボン・ニュートラル」な方法で生産が開始される見込みだ。
初期生産枠を確保するために1000ポンド(15万円)の保証金が必要だとのアナウンスに続き、アウディはe-トロンが生産されるブリュッセル工場がCO2ニュートラルの認証を受けたと発表した。この施設は再生可能エネルギーを使用し、炭素排出量を相殺しているという。
これは2019年発売のe-トロンの「井戸から車輪まで」の考え方をより強化することになる。環境面で言えばライバル達の先を行くことになり、他のプレミアムメーカーの新しい目標となるのだ。
アウディはe-トロンの生産台数を発表していない。しかし、すでに欧州2カ国で行われたテストマーケティングによれば、数万台規模の需要が見込まれるという。
アウディは3月のジュネーブショーにおいて4台のe-トロン・プロトタイプを発表し、ジャガーI-PACEに対抗した。
マーケティング責任者のブラム・スコットは言う。「e-トロンはアウディにとってのゲームチェンジャーです。これはわれわれにとって初のEV車ですが、多くの販売を達成するでしょう」
市販型e-トロンは8月30日にブリュッセル・モーターショーで発表される。これはアウディが2021年までに発売する3台のバッテリーEV(BEV)車の最初の1台だ。
アウディは2025年までに20台の電動モデルを発売するとしており、そのうちの半分がバッテリーEV車となる。バッテリーやモーターの性能が異なる複数のモデルが設定されることになるだろう。
アウディはe-トロンのスポーツ版の発表も示唆している。「ただし、問題なのは時期です。電動パワートレインは素晴らしいパフォーマンスを持っています。ドライビングエクスペリエンスも良いものとなるでしょう」
また、その時々で必要なクルマを使うことができる月極め契約での販売も検討中だという。
技術仕様
アウディは昨年250台ものe-トロン試作車を使い、走行距離を稼いでBEVのセットアップの仕上げをおこなった。
2015年のe-トロン・クワトロ・コンセプトと比較するとトーンダウンしたデザインだ。しかし、コンセプトにあった左右のテールランプを繋ぐラインなどの特徴は残されている。
e-トロンは500km以上の航続距離を持つと予想され、ポルシェがミッションEエレクトリック・サルーンに用いるのと同じプラットフォームを使っている。
3つのモーターを搭載するe-トロン・クワトロ・コンセプトは最高503psと81.6kg-mを発揮する。0-100km/hの加速は4.5秒で、最高速度は231km/hだ。
新しい電動SUVであるe-トロン・スポーツバック・コンセプトが2017年の上海モーターショーで披露された。これはより流線型のデザインでe-トロンの約1年後に市場に投入されることになるだろう。
アウディは以前にe-トロンの価格について「A6の装備を充実させた場合と同等になるでしょう」と話しており、エントリーグレードで6万ポンド(906万円)程度になると考えられる。なおライバルの1台、I-PACEは5万8995ポンド(891万円)からという価格付けだ。
発売時期
アウディのセールスとマーケティングを統括するディートマー・フォーゲンライターによれば、e-トロンを2018年に発売することにした理由にはバッテリー産業の成熟化があるという。最近の技術発展により、500km以上の航続距離の確保が可能になったのだ。「この数字は必要不可欠です」
ユーザーはそれ以下の数値は受け入れてはくれない。充電設備が急速に普及していることも、今回の発売決定の大きな後押しとなった。
「400から500kmの航続距離と、急速充電設備が必要不可欠です。2018年には両方を実現できます。バッテリーの密度は上がり、欧州、米国、そしてアジアに充電設備が整ってきています」
フォーゲンライターによれば、アウディはフォルクスワーゲングループを通し、BMW、ダイムラー、フォードなどのライバルたちと協力して急速充電網の普及を図っているようだ。
「充電施設への投資はわれわれの仕事ではありません。しかし、パートナーとともにこれを推し進めています」
フォーゲンライターは「ニワトリが先か卵が先か」の例えを出し、充電設備普及について説明した。現時点では、急速充電が必要なクルマがないために充電環境も整っていないのだ。「今後2年の間に、急激に投資が増えるでしょう」と彼は語る。
「e-トロン」という名称
アウディはBMWのiやメルセデス・ベンツのEQシリーズのようなサブブランドでEV車を発売することはしなかった。そのかわり、現在ハイブリッド車の接尾辞のようにつけているe-トロンという名称を選んだ。
フォーゲンライターによれば、e-トロンという名称は今後発売される電動およびプラグインハイブリッド車に用いられるようだ。その多くは現在のA3 e-トロンのようにモデル名の後ろに付加される。次期型A8 e-トロンに始まり、今後発売されるアウディの次世代モデルはすべてに電動バージョンが設定される見込みだ。
e-トロンにとって現在流行しているSUVのボディスタイルは重要であった。「多くのカスタマーがこのクルマの発売時期を訪ねてきます。プレミアムセグメントにおいて確実に需要はあるのです。これはアウディのデザイン言語を用いたリアルSUVです」
彼は、アウディが将来的に展開するe-トロン・シリーズは現在発表されているマーク・リヒテのデザインとは少々違ったものとなることを示唆した。
「e-トロンはリヒテ・デザインと近いものではありますが、パッケージングは異なります。なぜならフロントにエンジンがないのですから」
e-トロンの大きさから、Q6相当であることがわかる。だが、Q6は別の計画として存在するという。Q6はQ5をベースとした「4ドアSUVクーペ」であり、近日登場のQ8のようなスタイルになるようだ。
したがって、e-トロンはQ6ではない。
「e-トロンはスポーティSUVではありますが、4ドアSUVクーペではありません」
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