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なぜ今頃ディーゼル導入!? VWパサート新型ディーゼル上陸の事情と実力

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なぜ今頃ディーゼル導入!? VWパサート新型ディーゼル上陸の事情と実力

 2018年2月14日、フォルクスワーゲンのミドルクラスサルーン&ワゴンである「パサート」に、新たにクリーンディーゼルである「TDI搭載車」がラインアップに加わり、日本国内のフォルクスワーゲン正規代理店で販売が開始されました。

 セダンの「パサートTDIエレガンスライン」は422万9000円、ワゴンの「パサートヴァリアントTDIエレガンスライン」は442万9000円(ともに2.0Lターボディーゼルエンジンを搭載)。

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 VWのディーゼルといえば2015年に北米で排ガス不正問題が発覚し、世界中が大騒ぎになった事件が記憶に新しい。あれから2年半、なぜVWは日本にディーゼルを導入するのか? その事情と実力は? エンジニアに取材し、実車にしっかり乗りつつ紹介します。

文:大音安弘

■かなりパワフルなうえ、燃費も20.6km/Lと上々

 まず簡単に、今回新導入された「TDIエンジン」について紹介する。

 これはVW最新世代のクリーンディーゼルエンジンで、PM排出を抑制するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)と“AdBlue(アドブルー)”と呼ばれる尿素水溶液を排ガスに噴射することでNOxを無害化させるSCR(選択触媒還元)システムなどを組み合わせた最新の排ガス浄化システムを備えたもの。

 世界的にも厳しい日本の「ポスト新長期排ガス規格」にもしっかりと適合する。

 エンジンスペックを見ると、2.0Lの直列4気筒ターボで、最高出力は190ps/3500rpm~4000rpm、最大トルク400Nm/1900~3300rpmとかなりパワフル。気になる燃費性能も、20.6km/L(JC08モード)と優秀だ。

今回日本に初導入されたTDI搭載車は「パサート」。セダンとワゴン(ヴァリアント)同時発売

■不正事件で「輸入車No.1」から陥落

 本来ならば、このTDI搭載車は、もっと早いタイミングで日本へ導入されるはずだった。そこに水を差したのが、2015年9月に北米で発覚したVWディーゼル排ガス不正だ。

 北米での厳しい環境基準に適合させるために、エンジン制御プログラムに、通常時とは異なる制御を行うテストモードを密かに盛り込んでいたことが発覚。この事件は、VWグループ全体を巻き込む世界的な事態へと発展した。

 それはディーゼルモデルの導入がない日本でも販売に大きな打撃を与え、結果、長らく築いてきた日本市場輸入車販売No,1の座を明け渡すきっかけにもなった(2015年は1位メルセデス・ベンツ、2位VW、3位BMW、2016年は1位メルセデス・ベンツ、2位BMW、3位VW、2017年も同順)。

 日本国内ではまったく問題がないガソリン車さえ販売減となったことで、VWはクリーンディーゼル導入どころではなくなってしまったというわけだ。

 ただここで誤解してならないのは、今回日本で発売されるパサートのTDIエンジンは、問題となった旧型TDIエンジンとは、まったく別物の新生代クリーンディーゼルエンジンであること。

 今回の導入に際して、日本仕様向けに手を加えることもなく、欧州仕様とまったく同じものだという。それだけ完成された技術レベルを持つ。

TDI(クリーンディーゼル)、音はしっかり「ディーゼル」という感じでした

■ディーゼル人気を背景に復活を図る

 ただし、ここ最近せっかく日本での販売も上向いてきたというのに、なぜいま過去のイメージから誤解を招きかねないクリーンディーゼルTDIの導入するのか……と、疑問に感じる人もいるだろう。

 その背景のひとつには、昨今のクリーンディーゼルモデルの人気がある。

 BMWやボルボ、プジョーなどが積極的にクリーンディーゼルを導入したことで、現在、輸入車販売全体の20%までシェアを拡大しており、BMWのSUVは、すでにクリーンディーゼルがメインとなりつつあるのだ。

 VWも、そんなユーザーのニーズに応え、まずは今回導入されるパサートを皮切りに、パワフルで環境性能の高いクリーンディーゼル導入をティグアンやトゥアレグといったSUVなどメリットが大きい車種に展開したい狙いがある。

 今後のTDI戦略の布石でもあるのだ。ただ効率面から、排気量な小さなTDIは導入されず、2.0L以上となる見込みで、エントリーはゴルフからとなるだろう。

■エンジン技術の発達こそが生命線

 VWにとって、TDIの投入にはもっと大きな意味もある。

 近年VWは積極的な電動化戦略を打ち出したことで誤解を受けている面もあるが、電動車にはハイブリッドやPHEVも含まれる。つまり高効率と環境性能向上には、今後もエンジン開発を続ける必要性があるのだ。

 今後より厳しい環境基準が打ち出されることは間違いないが、技術的にエンジンはまだ進化が可能であり、日夜、開発が続けられている。

 また直面するCO2削減においても、電気、ガソリン、ディーゼルをバランスよく使わなければ、目標達成がより厳しくなるのが現実という。

 もし急激な電動化を推し進めた場合、バッテリーやモーターなどの供給や原材料の不足、電力供給の不足などに繋がる危険性がある。昨今の電動化対応に向けたメーカー各社の動きを見れば、その点も理解できるはずだ。

■1.4Lターボと比べると高いが2Lガソリンと比べると安い

 では、シンプルにパサートの中でTDIのコスパはどうなのだろうか。

 高性能化された昨今のクリーンディーゼルは決して安価とはいえず、ガソリン車の同等グレード比較で35万円高となる。

 しかしながら、これは1.4Lエンジン車との比較であり、性能が近い2.0TSIを搭載するR-Lineと比べると、快適装備が同等の“TDIハイライン”で20万円、エントリーとなる“TDIエレガンスライン”なら87万円も安くなるという見方もできる。

 R-Lineはスポーティ仕様となるが、最大トルクはTDIの方が優れるのでパワー面で不満を感じることはない。さらに燃費比較でも、1.4TSIは20.4km/L、2.0TSIが15.0km/Lなので、TDIの方が優れている(共にJC08モード燃費)。

パサートはVWブランドの中ではゴルフよりも上のクラス。当然内装の上質感もワンランク上

■軽油だけでなく、尿素の補給も必要

 忘れてならないのが、TDIには、AdBlue(アドブルー)の定期的な供給が必要な点だ。

 そのコスト負担はどうなのだろうか?

 AdBlueの消費量は、1000kmで約1.5Lという。車載タンクは13Lなので、およそ8700kmを走行できる計算だ。

 メーターパネル内のインフォメーションディスプレイには、走行可能距離に加え、残量が減ると4段階の表示と音で警告してくれる。

 AdBlueの購入価格だが、純正補充品だと1.89Lで1300円。負担は、約1km=1円ほどなので、TDIの燃費だと、+20円/L程度だ。

 ただ新車から3年間の定期点検で必要なエンジンオイルやワイパーなどの消耗品をパッケージ化したNew Service Plusに加入すると、最大45Lまで補充される。年間1万km走行をクリアできるので、ほとんどの人はこれでカバーできそうだ。

 また長距離走行派なら、一般流通するAdblueを購入する手もある。自身で補充が必要となるが、200円/L以下でも入手可能。値段を優先するなら、こちらがおススメだ。

軽油の給油口のすぐ横に尿素を入れる「口」があって、自分で補給する

■乗ってみればコスパも納得

 今回、限られた時間ではあったが、一早くパサートヴァリアントのTDIに試乗する機会を得た。

 アイドリング時は、ディーゼルらしい音を放つものの、音量は小さめ。TDIと気が付かない人も多いだろう。

 走らせるとエンジンフィールはガソリン車に近く、かなり滑らか。

 低回転から400Nmのトルクを発生するため加速も良く、想像以上にスポーティさがある。

 上質さが高められた現行型パサートとのキャラクターにも良く似合うと感じられた。結論としては、TDIのトルクフルなエンジン特性と低回転域を多用することによる安定した燃費性能を考えると、1.4TSIと2.0TSIどちらと比べても優れたコスパといえるだろう。

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