なぜ、自動車メーカーが自動車メーカーを買う?
コスト削減と収益拡大。PSAがオペルとヴォグゾールを買収した理由を、端的に述べればそういうことになる。
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これは一大ニュースだ。昨年の欧州市場で、オペル/ヴォグゾールは約100万台、PSAは約150万台を販売した。この両社が合併することで、ルノー日産を凌ぎ、およそ360万台を売ったフォルクスワーゲングループに次ぐ、欧州第2位のグループが誕生する。
今回の買収劇はまた、莫大なスケールメリットが発生することも意味する。
5つのブランドが生産するモデルは、セグメント的に重複する領域が広い。プラットフォームとエンジンは統合が進み、機種が大幅に減らされるだろう。
最終的にPSAは、オペル/ヴォグゾールのモデルを、全て自社プラットフォームをベースとしたものに置き換えるといわれているのだ。
またPSAは、それらを生産するために、欧州GMのファクトリーの所有権を手に入れている。
エミッション改善や自動運転導入が強いられる現在、自動車メーカーはこれまでにないほど、将来に向けた多額の投資を行う必要性に迫られている。
多くのブランドで負担を「割り勘」し、同時にリターンを増大させることは、財政的リスクの軽減を図るうえでの最善策だ。
なお、興味深いことにGMは欧州部門のうち、イタリアにあるR&D部門だけは保持することとした。
なぜR&D部門だけ売らなかったのか?
ここはディーゼルエンジンの開発を手掛ける施設であり、GMがいまだにディーゼルの有用性を認めていることが見て取れる。
ともあれ、この買収が成功すれば、長年にわたりオペル/ヴォグゾールの頭痛の種だった収益の問題が解決する。今でこそ順調に戻しているが、このブランドはしばしば不安定な状況に陥ってきたのだ。
PSAは少なくとも、ふたつのブランドの歴史を尊重し、名前は残すとしている。
ただし、短中期的な安定は得られても、生産設備の行方については絶対的に保証されたわけではなく、今後も立ちはだかる課題となるだろう。
カルロス・タバレスCEOによれば、PSAは黒字回復し、利幅の拡大を続けているという。
年産100万台規模のメーカーを抱え込むことは、この回復を加速する上でなかなかの難題になる。短期的に見れば、これはおそらく挑戦だ。しかし、将来的には利益を生む可能性も見込める。
GMがPSAの株式を7%取得して5年が経ち、両社の共同事業は動き出した。株式はすぐに売却されたが、協業は続き、その成果をわれわれはいよいよ目にすることとなった。それが2008ベースのクロスランドXと、3008ベースのグランドランドXだ。
この2台のSUVが明らかにしたのは、プラットフォーム共用戦略が、少なくとも短期的には混乱を招くということだ。
オペル/ヴォグゾールにはすでに、クロスランドXとサイズが重複するモッカXがある。にもかかわらず、2008プラットフォームの利益率を高めるため、新型車を投入したのだから。
PSAに求められている「急務」とは?
できあがった商品は似通い、それではユーザーの選択の機会が真に広がったとは言い難い。
しかしながら、フォルクスワーゲン・ゴルフとスコダ・オクタビア、セアト・レオンは、メカニズムは大差ないが、それが販売上の大きな問題になっていない。
プジョーとシトロエン、DS、オペル、ヴォグゾールも、ブランドのポジションを明確化する必要がある。それこそ、PSAの急務だ。
さらには、労組との折衝も求められる。彼らは、同様のモデルを生産する複数の工場の長期的な展望について言及するに違いなく、現時点では明確になっていない保障面も明文化するよう求めるはずだ。
というのも、プジョーは英国の生産拠点を閉鎖した過去がある。懐疑的にもなろうというものだ。
とはいえ、PSAの巨額の投資が、オペル/ヴォグゾールの潜在能力を解放する可能性には期待したい。
タタ傘下に入ったジャガー・ランドローバーや、吉利に下ったボルボは、巨大なフォード帝国の歯車から脱却し、よりブランド力を活かそうという親会社の下で勢いを盛り返している。
GMというアメリカの大資本を離れ、欧州メーカーのグループに加わったオペル/ヴォグゾールが、それらと同じ道を辿らないとは言い切れないのである。
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