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メルセデスF1魔法のステアリング”DAS”に疑惑なし? FIAが遵法と判断した理由を分析する

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メルセデスF1魔法のステアリング”DAS”に疑惑なし? FIAが遵法と判断した理由を分析する

 スペインのカタルニア・サーキットで行なわれているF1プレシーズンテスト。その2日目は、メルセデスが持ち込んだ”画期的”なステアリングシステムが話題を席巻した。DAS(二重軸ステアリング)である。

 このシステムは、ステアリングを前後に押し引きして、フロントホイールのトー角を変えるというものだ。しかしこれがレギュレーションを満たしているのか、あるいは違反しているのかということについては、議論が分かれるところだ。

■メルセデス、革新的ステアリング”DAS”の存在を認める。合法性に自信

 しかしFIAは、このデザインについてレギュレーションに合致していると判断したようだ。

 確かにメルセデスは、しばらく前からこのアイデアについて、FIAに確認してきたようだ。そしてFIAからのお墨付きを得て、W11に搭載したという。

 もしFIAが違法だと言っていたのだとすれば、メルセデスは開幕戦オーストラリアGPで失格となるリスクを負いながらも、W11に搭載してくるとは考えにくい。

 今回メルセデスが突いたのは、レギュレーションにおけるグレーゾーンであろう。それはサスペンションコンポーネントとは何か、そしてクルマにおけるステアリング部品とは何かという”定義”の問題である。

 レギュレーションでは、マシンが走行している間にサスペンションを変更することは許可されていない。それは明らかだ。

「車両が走行中、いかなるサスペンションシステムも、調整は一切行われてはならない」

 F1のテクニカルレギュレーションの第10.2.3条にはそう記載されている。

 したがってトー角の変更がサスペンションの調整によって行なわれている場合、そのシステムは禁止されているということになる。

 しかしFIAは、メルセデスのDASはサスペンションの調整ではなく、単にフロントホイールを”操舵しているだけ”とみなしたということになるだろう。

 ステアリングによって何をコントロールできるのか……これについてはレギュレーションにはそれほど細かくは明記されていない。テクニカルレギュレーションの第10.4.1条に、以下のような記載があるだけだ。

「2輪を超える車輪の操舵を可能とするステアリング装置は禁止される」

 メルセデスのDASは、フロントホイールのトー角を”操舵”しているだけ……そういう意味で言えば、レギュレーションに完全に準拠していると言える。

 またレギュレーションには、”ホイールはひとつの軸でしか操舵できない”とか、”ふたつのフロントホイールは同じ度合いで角度を変更するようにしなければいけない”といった規制はどこにもないのだ。

 つまり、2本のフロントホイールの角度を、それぞれ個別にコントロールすることもできる……つまり、メルセデスのDASは遵法ということを意味するわけだ。

 DASがレギュレーションに抵触する可能性があるとすれば、それはパワーステアリングに関するモノだ。レギュレーションでは「パワーステアリングシステムは、電子的制御がなされることあるいは電気的動力を得ることはできない。そのようなシステムは、車両を操舵するのに必要な肉体的負担を軽減させるという目的以外の機能を実行することはできない(第10.4.2条)」とされており、トー角の変更をパワーアシストを介して行なえば、違法と判断される可能性はある。

 またDASは、クラッシュテストも通過する必要があったはずだ。

 ライバルチームたちは、メルセデスがこれまで使われてこなかったレギュレーションの”抜け穴”を活用したこと、そして同システムの設計、製造、テストといった面で一歩抜きん出たことを十分に認識している。

 FIAはDASについて今のところ遵法という姿勢を示しているが、抗議があった場合には各レースのスチュワードに訴えが出され、最終的にはそこでレギュレーションに対する合法性が判断されることになる。他のチームはすぐさま独自のソリューションを見出すための作業をスタートするのか、あるいは合法性の疑問が解決されるまで、その業務を待つことになるのだろうか?

 2021年から、F1のレギュレーションは大きく変更されることになっており、各チームはそれに合わせてリソースを振り分けなければならない。今シーズンは今までにも増して、忙しいシーズンなのである。そんな中でDASを導入すると判断したチームがいるとすれば、彼らにとっては余計な”追加の”仕事が増えるということとなり、間違いなく大きな混乱の種となるだろう。

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