メルセデスは、フロントウイングのコンセプトを”フェラーリ・スタイル”に変更するのは数カ月を要する大プロジェクトになるとしながらも、それが優れた手法だった場合に備え、選択肢のひとつとしているようだ。
2019年に導入された新たな空力レギュレーションにより、フロントウイングが単純化された。しかしルールの範囲内でウイングを最適化しようとした結果、各チームの開発アプローチが異なることとなった。
メルセデスやレッドブルは、従来のフロントウイングから禁止された付加物を取り去ったような、伝統的な形状のフラップを採用。一方フェラーリやアルファロメオ、トロロッソといったチームのフロントウイングは、翼端板に近い部分のフラップが低くなっており、気流をフロントタイヤ外側に導く”アウトウォッシュ”を作り出すのを助けていると思われる。
バルセロナでのオフシーズンテスト1回目では、フェラーリが初日、2日目とトップタイムをマーク。一方のメルセデスは淡々と走行を重ね、タイム的には目立たなかったこともあって、フロントウイングのデザインがパフォーマンスに影響しているのではないかとの疑問が生じた。
メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、他のチームの真似をすることなく、ここ数年うまくやってこれたとしながらも、より良いアイデアがあるかもしれないという可能性を無視すべきではないと考えている。
「柔軟な考え方をする必要がある」と、ウルフはペトロナスのイベントで語った。
「我々はこれまで、他の多くのチームとは異なるデザイン哲学を持ってきた」
「他のチームよりもロングホイールベースのマシンだし、他のチームよりもマシンをレーキ(前傾)させたことは一度もない。しかしそれは、我々が自分たちのコンセプトがあらゆる面で優れていると信じていたからではない」
「しかしパワーユニットを含めたマシン全体のパッケージを考えた時に、それが最善だったと考えていた」
「新たなレギュレーション変更に伴い、他のチームがやっていることに対して、柔軟でいる必要がある。そしてもし何かが良く機能しているのであれば、全てのチームが、そのマシンにその時載っているモノを調べて、自分たちでも試してみるだろう」
ウイングのコンセプトを切り替えるかどうかについては「そういうことは1日ではできないんだ」と、ウルフは答えた。
「もしマシンの空力コンセプトを変えるなら、数日とか数週間の問題ではなく、数カ月かかる」
フロントウイングのコンセプトを変えるのには数カ月を要するとのウルフの見方は、ルノーのテクニカルディレクターであるニック・チェスターと同意見だ。
motorsport.comがチェスターに、フロントウイングのコンセプトを完全に変更するのがどれほど難しいことなのかと訊くと、彼は次のように答えた。
「もし、自分たちの方針が間違っていて、全く異なるフロントウイングのコンセプトに変える必要があると決心したなら、簡単なことではない」
「そのウイングを付けてみれば、それが長い道のりのスタート地点であることに気づくだろう。ウイングを機能させるためには、数カ月をかけてそれを開発しなければならない。180度方針転換をするわけじゃなくても、方針を変えるのは簡単じゃないんだ」
チェスターは、各チームがウイングについてまだ様々なコンセプトを評価しており、シーズンを通じてひとつのベストなデザインに各チームのウイングが収束する可能性があると話した。
「言うまでもないが、我々は常に他の人々がしていることに興味を持っている。そこに他の選択肢がないか見ているんだ」
「(ウイングの)外側にできるだけ負荷をかけて、気流をホイール外側に流す手法と、フラップやエンドプレートにあまり負荷をかけないようにする手法の間には、様々なバリエーションがある」
「そこには最適なバランスというものがあるはずだ。シーズンを通して、みんながどういう風に開発をしていくか見ていこう。ひとつの方向に収束する可能性があると私は考えている。あるいは、異なる解決策で極めて良いパフォーマンスを発揮するかもしれない」
一方フォースインディアのテクニカルディレクターを務めるアンディ・グリーンは、フロントウイングからダウンフォースを得ることとアウトウォッシュを作るメリットについて、各チームがどうバランスをとるか調整しているため、様々なアプローチが残る可能性があると考えている。
「メルセデスのようなチームは、長い間彼ら自身の哲学にしたがってきた」
「彼らは他とは違うということで注目され、5年連続でチャンピオンとなった。だから違う哲学を採用する余地は常にあるのだ。彼らは長年にわたってそれを証明してきた」
「最終的に、フロントウイングに関していくつか違う哲学が残る可能性がある。そしてそれらが同等の競争力を持つかもしれない。どうなるかはしばらく待ってみる必要がある」
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