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天王山のオートポリスでレクサス圧勝。ホンダ総崩れを招いたピックアップと「データ不足」《GT500決勝あと読み》

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天王山のオートポリスでレクサス圧勝。ホンダ総崩れを招いたピックアップと「データ不足」《GT500決勝あと読み》

 スーパーGT第7戦オートポリスの予選はホンダNSX勢の速さが目立つ結果となったが、決勝ではレクサス勢が強さを発揮し、終わってみればトップ4を独占する結果となった。

 なかでも際立った速さをみせたのはトムスの2台だ。トップチェッカーを受けたKeePer TOM'S LC500のスターターを務めたニック・キャシディは「今日のクルマなら4位まではいけると思うけど、NSXの前にはいけるかどうか分からない」と語っていたが、終わってみればNSXの前でレースを終えている。

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 このKeePer LC500は、土曜日の公式練習では走り始めからクルマの挙動がアンダーステアで、タイヤのグレイニングも出ていた。そのため、ロングランを試すだけの時間がなかったと担当の小枝正樹エンジニアは言う。

「決勝前にある20分間のウォームアップで、少しアンダー(ステア)の対策をしていったんですけど、それがちょっと行き過ぎた感があって、リヤが軽い感じになってしまったんですね」

「そこからスタートに向けてまたちょっと対策をしたら、やっぱりアンダーめに振れたかな……という感じでした。でも路面温度が結構上がりましたし、NSX-GTはソフトタイヤを履いているというのもあって、ひょっとしたら落ちてきてくれるのかな、という期待もありましたね。若干、その方向にいってくれたのかなと。向こうのピックアップにも期待はしていました(苦笑)」

「だから、それが“ああ、そうなったか”という感じでしたね。こちらはピックアップは致命傷にならないですし、タイムの落ちが少ない。それに今回はドライバーが『ピックアップがついた』とも言わなかったですね」

「ウチはアンダーステア気味でフロント(タイヤ)がなくなっちゃうのはやっぱり怖かったですけど、ドライバーがうまくマネジメントして持ちこたえてくれたなと。アンダーめに振れていたので、最初はニックが『ヤバいかも』と言っていましたが、途中セーフティカー(SC)が入る前ぐらいには『タイヤはたぶん大丈夫』と言っていました。平川(亮)もアウトラップで頑張ってくれて引き離してくれました」

 このKeePer LC500よりもスタート直後から速さをみせていたのは、僚友のau TOM'S LC500だ。こちらは土曜日朝からアンダーステアに悩まされることなく、セッションを進めていった。

 ロングランまでは試せなかったようだが、担当の東條力エンジニアは決勝に向けて自信満々だったようだ。その自信を裏付けるように、決勝ではスタート直後から、中嶋一貴が次々に前をいくNSX-GT勢を攻略。トップに立ってからは、大きなマージンを築いた。

「クルマのバランスやフィーリングはなんとなく自信がありました。だから、それでNSX勢に逃げられてしまうのであれば、仕方ないかなと思っていましたね」と一貴。

「最初はNSXが逃げて、そこからレース途中に追いついて抜くパターンだと思っていたんです。でも、レースが始まってみたら、こっちのほうが余裕がありました。なんででしょうね? 僕たちも知りたいくらい」

「(セーフティカー導入後は)ピックアップの症状がなくなって、タイヤが復活してフィーリングは良くなりました。ただ築いたマージンがゼロになってしまいましたから、僕たちとしては損した部分もあったかなと思いました」
■2ピット作戦が奏功したWedsSport。ZENTも予選から挽回
 一貴のコメントには、若干ピックアップを拾ったような話も出てきていたが、ライバルとのペース差、特にNSX勢との差を見ると、それほど影響があった様子は見られない。他のレクサス系チームのエンジニアに話を聞いても「すでに何年も前にピックアップの問題は解決している」ということで、それがオートポリス決勝でのレクサスの強さを支えているようだ。

 トムス勢に続いて、殊勲の3位表彰台を獲得したのは、WedsSport ADVAN LC500。こちらは今回、スタート前から2ピット作戦を計画していた。15周目という早いタイミングで1回目のピットインをした後、抜群のタイミングで導入されたセーフティーカーにも助けられ、2回目のピット作業を終えてコースに戻ると3番手まで浮上している。

 今回、そうした作戦を採ったのはどうしてだったのか。WedsSport BANDOHの林寛之エンジニアは言う。

「ちょっとタイヤのタレに心配があったので、そのまま1ピットでいくとレースにならないかなと。なので、20分間のウォームアップで、燃料が軽い時の状態を見ました。その結果、2ピットを決めました。前とのギャップを見てですが、最初のピットアウト後、クリーンエアで走るために、トップよりも前でコースに戻りたかった。だから早目にしようと、最初から15周と決めていました」

「真ん中のスティントは、クリーンエアのなかで走ることができていたので、少し我慢して伸ばしましたね。1回目のピットを終えた時、Epson Modulo NSX-GTと40秒近く離れていて、その分頑張って詰めなくちゃいけないところ、セーフティカーのおかげで(ギャップを)なくしてもらったので、それはすごく助かりましたね」

「もちろん、セーフティカーが入るのではという予想もあって、『SCが出たらお得でしょ』という思いもありましたけど。とにかく運良く予想どおりに進んだ感じです」

 4位に入ったZENT CERUMO LC500は、予選Q2のアタックタイミングが悪かった上、アタック中の他車を避けたためにタイムを伸ばせず8番手からスタート。そのため、決勝では前を走るNSX勢を攻略しなければならず、これがタイムロスになってしまった。

 また、ピットアウト後に一旦前に行かれたARTA NSX-GTはすぐに抜き返したが、KEIHIN NSX-GTの攻略にはある程度の周回を要した。そのため、WedsSportを追い切れなかった側面もあったようだ。

 それでも、「コースに出た時から、クルマのバランスはよかったし、ペースには手応えがあった」と石浦宏明。最終戦もてぎに向けては明るい材料が見つかったようだ。

■“総崩れ”のNSX陣営。「単独だとスイスイいくけど、ラインを外すと……」

 一方、予選順位から考えると、決勝である意味“総崩れ”となったのがNSX。彼らが失速したのは何が原因だったのだろうか。ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーは話す。

「基本的にはレースペースが上がらなかったっていうことなんですけど……」と佐伯ホンダGTプロジェクトリーダー。

「レクサスさんの方が、まぁこの路気温にうまく合わせ込んだセットアップとタイヤの使い方というのができていたんじゃないかなと思います。速いペースで安定したラップを刻めるクルマでしたよね」

「ウチも単独で走ると、そんなに変なタイムではないんですけど。ミッドシップは相当ハンデがあるのかなと。GT300との混走でラインを外しながら走っていこうとした時に、重量配分などでブレーキの不安定なところが残ったりとか。そういう見え方はしましたけどね」

「単独だとフォーミュラカーみたいにスイスイ走っていくんですけど、ラインを外すと……。ラインの自由度がないのは、リヤがヘビーという部分がついて回るのかな。レースだとこうなるので(性能調整分の)29kg軽くして欲しいなぁ(苦笑)」

「あとクルマがどんどん変わっていくなかで、テスト不足という部分も大きいかなと思います。それに対して、レクサスは基本がしっかりしたクルマだと思います。我々はまだまだ発展途上ですし、今年にかけて(マシンが)進化していくなかで今のクルマに近い形でのテストを、この路気温でできていないのは不利な点かなと思いますね」

「この(仕様の)クルマでデータ量が少ないというところを考えると、予選一発はうまくいきましたけど、決勝のペースはうまく出せなかった。もてぎの戦い方は、今回の反省をした上で、これから考えます」

 ただ各チームに聞いたところでは、ペースが上げられなかった要因は、それぞれ多少違っていたようだ。

 ポールポジションからスタートしたものの、ノーポイントで終わってしまったARTAの星学文エンジニアは、「レースペースが予選より8秒とか、それくらい遅いペースで走っているので、やはりタイヤの使い方とかが予選とは変わってしまって、うまく使えなかったんじゃないかなというイメージはあります」という。

「ピックアップの問題もありました。終盤に接触があった後はアライメントがおかしくなってしまっていた可能性もありますけど、KEIHINやRAYBRIG NSX-GTより少し遅かったかなというくらいで、3車とも似たような状況だったんじゃないかと思います」

 スタートを務めた伊沢拓也も、「単独で走ると速い感じはあったんですけど、GT300が現れてペースがちょっとでも落ちると、ピックアップだったり、いろいろな症状が出てきた」と明かした。

「抜いていったau LC500などと戦える雰囲気はなかったというのが正直なところ。自分たちが今年いい状態でレースしていた時と比べたら、非常に難しいクルマでした」

 同じようにピックアップに悩まされたのはKEIHIN。「こんなことは初めて」とは同チームの田坂泰啓エンジニアの言葉だ。

■バトンと山本尚貴の走りはじめのタイヤマネジメント

「クルマのバランスはそんなに悪くなかったんですけど、初めてゴム付き(ピックアップ)が発生して。それでちょっとペースが上がらなかったんです。後半も症状は同じでしたね」

「最後はゴムが取れて、また1分38秒台にペースが戻ったので、クルマの調子は良かった。でも、今回初めてそういうことが起きて悩んでいるので、今は機嫌が悪いです」

 これに対して、前半のジェンソン・バトンが「ピックアップに苦しんだ」とコメントしたものの、後半の山本尚貴はきれいにタイヤを使っていたというのがRAYBRIGの伊予木仁エンジニア。

「ウチは、ドライバーがふたりとも『スティント前半からプッシュして突っ込んだら、絶対にフロントタイヤをやっつけちゃう』と、昨日の走り出しから終始アンダーステアを抱えていましたしね。特にJB(ジェンソン・バトン)は柔らかい方のタイヤでしたから」

「幸い、セーフティカーが出ましたけど、タイヤのケアも考えて、僕からは『2~3台は抜かれても構わない』という話はしていました。ドライバーからも『そうだよね』と」

「だから、尚貴も最初はペースを抑えていましたけど、終わってタイヤを見てみたら結構フロントはギリギリでした。ふたりともすごく上手にタイヤのマネジメントをしてくれたと思います」

「ピックアップの問題はなかったわけじゃないんですけど、それも事前にドライバーと『ここはもうピックアップするもんだって考えていこうよ』と話をしていました。ただセットアップを変えた影響なのか、それほどピックアップが大事に至ることはなかったですし、尚貴のタイヤはビックリするほどキレイでした」

 最初にペースを抑えたRAYBRIGに対し、それより速いペースで入ったARTAとKEIHINがピックアップに悩まされたわけだが、そうしたタイヤの使い方も含めて、現在のスーパーGTは細かな部分が大きな違いを生むハイレベルな戦いが繰り広げられている。

 そして、そうした積み重ねが、結果としてレクサスとホンダのギャップにもつながったのだろう。

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