アルピーヌF1チームのCEOを兼ねる、アルピーヌCEOのローレン・ロッシ氏がF1日本グランプリのために来日、鈴鹿サーキットに移動する前日にインタビューする機会があり、アルピーヌの今後について詳しく聞いた。(Motor Magazine 2022年12月号より)
レーシングスピリッツを忘れないクルマづくり
アルピーヌA110Rの日本発表の翌日、そして週末にF1日本グランプリが開催される直前にアルピーヌのローレン・ロッシCEOにインタビューした。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
千葉 2021年、CEOに就任したときに革新的なクルマを作ると言っていましたが、それは具体的にどのようなクルマですか。
ロッシCEO 「ふだん使えるクルマでありながらレーシングスピリッツを忘れないクルマです。アルピーヌ車にはレースの技術が投入されていますが、それは電動化されても同様です。たとえば数年後に発売予定のSUVにはこうした技術を使いますが、A110のようなアジリティをどう感じさせるかが今後の課題です」
千葉 アルピーヌと言えばA110がブランドアイコンですが、今のA110の電動化は検討しましたか。バッテリーを積むのは難しいのでしょうか。
ロッシCEO 「いい質問ですね。実際、A110エテルニテというBEVのプロトタイプを作りましたが、これは今後電動化されたときにどうやってアルピーヌらしさを出すかの実験車両です。今のA110はプラットフォームが小さくスペースも限られいるのでこのままBEVにできません。
「バッテリーを搭載すると収納スペースがなくなり、さらにクラッシュテストでもスペースに余地がなくNGです。プラットフォームを広げたらなんとかなるかもしれませんが・・・。つまりエテルニテを作ったのは、そこからアイデア出しするためで商品化のためではありません」
ライトネスこそがアルピーヌの真骨頂
千葉 先ほど聞いたことと矛盾しますが、A110はライトウエイトスポーツカーです。つまりアルピーヌのクルマづくりは軽量化がこそが正義だと思います。しかし、アルピーヌは今後、BEVを作りますが、バッテリーやモーターを搭載することでクルマは確実に重くなります。それはアルピーヌのクルマづくりとは正反対のものではありませんか。
ロッシCEO 「おっしゃるとおり、もともとのA110のフィロソフィとBEV化はまったくマッチングしません。ただヨーロッパではBEV化からはもう逃げられない状態で、ガソリンエンジンだけを作ることはできません。先を見てBEVでどうやってアルピーヌらしいアジリティを出していくかを研究&開発していかなければなりません。そこで電動化の中でアルピーヌはどうやってライトウエイトにするかを考えます。
「たとえばバッテリーは一番軽いものを使えばブレーキも軽くなります。そうした考え方でBEVを開発していきます。つまり軽くするという、いいサイクルでクルマを開発して行きます。アルピーヌは、BEVになってもライトネスは忘れません。また今後開発するSUVやコンパクトハッチバックもプラットフォームはアライアンス共通ですが、そこにはアルピーヌらしい技術を入れるなどすべてはアルピーヌのために開発します」
千葉 アルピーヌブランドから出てくるSUV、とても興味があります。
ロッシCEO 「私もです。待ちきれません。早くみなさんに見てもらいたい。A110はニッチなクルマでしたが、今後はSUVなどで幅が広がります。ただどのモデルでもしっかりレースから生まれたクルマを運転していることがわかるようにします。これはアルピーヌのDNAです」
千葉 どうやってSUVでアルピーヌらしさを出していきますか。
*ロッシCEO** 「SUVにも、これまでアルピーヌにあった居心地の良さやデザインアイコンなどは継続します。またアルピーヌのDNAはレースから生まれているので、SUVであってもちゃんとサーキットでも走れるようにしたいと考えています。レース走行用ではないけれどサーキットを走ろうと思えば走れるクルマです」
(文/写真:Motor Magazine編集部 千葉知充)
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