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電動化を見据えたランボルギーニの未来とは

掲載 更新 7
電動化を見据えたランボルギーニの未来とは

再びトップとなったステファン・ヴィンケルマンがランボルギーニのアクションプランを発表した。「コル・タウリを目指す」というフレーズが合言葉で、電動化へのロードマップが発表された。それに先立って個別に行われたオンライン・インタビューの内容も踏まえつつ、現時点で分かっている情報を盛り込んでお届けしよう。

ランボルギーニの電動化へのロードマップ

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「コル・タウリを目指せ!」。ランボルギーニエンブレムを連想させる“おうし座”の中で最も輝ける星“αタウリ(アルデバラン)”。その星のことをラテン語では“コル・タウリ”=牡牛の心臓と呼ぶのだそうだ。

昨年12月に再びランボルギーニの社長兼CEOとなったステファン・ヴィンケルマンが5月18日、2020年代における世界で最も有名なスーパーカーブランドのアクションプランを「コル・タウリを目指す」というフレーズで語り始めたのだった。

「何よりもパフォーマンス重視であることは変わりません。世界的なCO2排出量削減の動きは私たちのようなハイパフォーマンスブランドにも影響を与えようとしていますし、社会的な責任を考えればそれに応えていくことが重要だとも思っています。それは顧客のためであり、会社のために働く人々のためであり、サンタガータ・エミリアロマーニャひいてはイタリアのため、世界のためでもあります。一方で、少量生産のスーパーカーメーカーが世界的なCO2削減に絶対的な影響を与えるものではないということもまた事実です。それゆえ私たちにとって大事なことは、以前よりもプロダクトのパフォーマンスを引きあげつつ、社会的に求められる環境性能を達成していくという確かな戦略を作り上げることだと思っています」

ヴィンケルマンが発表した内容を要約すると、次のようになる。

1. 2021年の間に2台の12気筒モデルを発表する。

2. 2023年から24年までにラインナップのすべてをプラグインハイブリッドモデルとすることで、25年初頭には商品から排出されるCO2を半減する。そのために今後4年の間に15億ユーロもの史上最大規模となる投資を行う。

3. 第4のモデルをバッテリーEVとして検討する。登場は2025年以降。

18日の発表に先立って個別に行われたヴィンケルマンとのオンライン・インタビューの内容も踏まえつつ、現時点で分かっている情報を可能な限り盛り込んで順に説明していこう。

まずは内燃機関技術の集大成とPHVモデル

まずは1。フラッグシップ12気筒のアヴェンタドールは今年で生産が終わると言われている。そんななか2台の12気筒モデルが追加されると聞くと、アヴェンタドールの後継モデルか? と思ってしまうが、そうではない。リリースを注意深く読むと、新たに登場する2台の12気筒モデルは、これまでの内燃機関技術の集大成であり、誰もがひと目でランボルギーニだとわかり、しかも過去の歴史的なモデルへのオマージュを表現するとなっている。奇しくも2021年の今年、カウンタックのデビューから50周年を迎えた。期待すべきは“カウンタック・オマージュ”だろう。参考になるのはヴィンケルマンがCEOを兼務するブガッティにおいて発表された、EB110のオマージュである“チェントディエチ”(イタリア語で110)だ。シロンベースで10台の限定生産、お値段10億円弱、即完売。さて、ランボルギーニはどんなオマージュを出すのか。 噂ではロードカー向けとしてはランボ史上最高パフォーマンスを誇るシアン用800psV12をベースとした限定車という説が有力なのだが果たして…。 

2もまた興味深い。ヴィンケルマンはインタビューで「ウルス、ウラカン、アヴェンタドールはすべて異なるプラグインハイブリッド(PHV)システムを備える」と明言した。もっともウルスは最量販モデルゆえおそらく最も早い段階(MY2023)でPHVとなってもおかしくないと思うのだが、フラッグシップのアヴェンタドールは21年に生産を終えると既にアナウンスされているわけで、モデルライフ的にも車体のスペースといった物理構造的にも12気筒のPHVとして再販する可能性は低いと予想する。12気筒エンジンは継続するというから、投資金額のスケールから考えてもおそらくはアヴェンタドール後継モデルがV12PHVとして登場することになるはずだ。

問題はウラカンで、V10エンジン継続か否かの質問に対してヴィンケルマンは肯定も否定もせず、ただ「もう少し先に発表されるのでそれを待っていて欲しい」とだけ応えた。ここからは筆者の予想だが、ウラカン(とその先代にあたるガヤルド)はそもそもアウディR8とのコラボレーションで成立した経緯がある。R8の後継モデルが存在するかしないかは別にして、V10エンジンの継続はたとえPHVとなっても難しいのではないか。おそらくダウンサイジングされることになると思うのだが、気になるのはそれがV8なのかどうかだ。最近ではマクラーレンのようにV6プラグインハイブリッドで素晴らしい性能を謳うモデルも登場した。運動性能的にみてもハイブリッドのミドシップスポーツを目指すなら、一気に6気筒もありえる。さらにいえば同じグループのポルシェが911をミドシップ化するという噂も気になるところ。R8ではなく、ミドシップポルシェとのプラットフィーム共有となればウラカン(もしくは後継モデル)の6気筒化も現実味を帯びてくる。まさかフラット6エンジンまで共有するとは思えないけれど……。

その先にあるGTのEVモデル

そして3、第4のフルエレクトリックモデル計画だ。「少なくとも2+2のGTツアラーで、スーパースポーツではありません」とヴィンケルマンは言った。

前回、彼がCEOだったとき、エストーケという4シーターのコンセプトカーを2008年に一度、世に問うている。12年にウルスのコンセプトカーが登場した後、筆者はヴィンケルマンとディナーの席で「どちらを先に出すべきか」で議論をしたことがあった。その時はやはりSUVだろうと意見の一致をみたが、エストーケも捨てがたいという話を彼がした記憶がある。

ランボルギーニには過去にエスパーダという非常によくできたGTツアラーが存在した。2018年にその50周年を、他のモデルよりも盛大にランボルギーニ自身が祝っている。さらにいうと、創始者フエルッチョ・ランボルギーニが目指したブランド像は「速いロールスロイス」であり、黎明期の中心的なモデルは12気筒FRの2シーターもしくは4シーター(2+2)モデルだった。言ってみれば4シーターGTの再リリースはブランドの伝統回帰そのものであり、ヴィンケルマンの悲願でもあるのだ。

「2ドアにするのか、4ドアか。その性能や位置付けも含めてまだ企画段階で何も決まっていません。デビューも2025年以降のことになるでしょう」。つまり、既存のグループBEVプラットフォーム(ポルシェタイカンやアウディeトロンGT)を使うわけではない、ということ。おそらくは第2世代か、もしくは他の高級ブランド用(グループにはブガッティやベントレーもある!)との共有も視野に入っていることだろう。

大切なことは車体のパッケージ

「大切なことは車体のパッケージです。パワートレーン性能はもちろん、パワーウェイトレシオ、エアロダイナミクス、ドライバビリティなどすべてが完璧にバランスされていて初めて現代のランボルギーニだと言えます。そういうブランドであることだけは必ず守っていかなければならない。それを守るために、私たちはすべてを変えようとしています。PHVとなったスーパースポーツは、過去のどのモデルよりもサーキットで速くラップし、望めば静かに走ることもできるでしょう。電動化を含め、すべては顧客満足度のさらなる向上のために投資されるのです」。バランスが大事か……。だとするとウラカン(もしくは後継)のエンジンはひょっとして……。想像はこれくらいにしておこう。

ちなみにヴィンケルマンは発表の中でももう1つ、モータースポーツ活動を牽引する“スクアドラ・コルセ”の役割についても言及しており、既に発表された830cvの自然吸気V12を積んだ限定車エッセンサSCV12のようなトラック専用マシン(規則に縛られたレースカーではない)が、たとえば自然吸気エンジンエンスーのためにこれからも用意されることになるだろう。

いずれにしてもこの15年間で7倍にもなったランボルギーニ社の利益率を背景に、ヴィンケルマンは未来への自信にみちた表情でインタビューを締めくくった。

文・西川淳 写真・アウトモビリ・ランボルギーニ 編集・iconic

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みんなのコメント

7件
  • トヨタにお願いして水素エンジンじゃないですかね?
    お願いってーと気に入らないオーナーさんも多いと思いますが、
    納得できるのはこの道だと思いますが?
  • スーパーカーは、電動化したら終わり
    ガソリン爆発してるウチが華
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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