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トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.3──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第1回」

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トヨタ2000GTで1000kmのドライブに出かける VOL.3──連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第1回」

高速道路に入ってからというものの、5速に入れっぱなしの2000GTは拍子抜けするほど順調に走り続けた。あまりの快調ぶりに、「なんか軽くトラブってくれないとネタにならないよね」などと、ナビゲーターに軽口をたたいてしまったほど。ときおり3速や4速に落としては加速を楽しむ余裕すらあった。

強烈な加速、では決してない。同時代のナローポルシェのようにシャープに吹け上がるわけでもなかった。どちらかというと振り絞ってまわる感じ。けれども回転数が上がっていくにつれてエンジンそのものが凝縮するかのようで、右アシの先から吸い込まれそうな気分になる。車体をエンジンが支配していく感覚。まるでエンジンという馬を御しているようだ。

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東北道では軽トラと並んで走った。ほとんど同じサイズなのだろうけれど、着座位置が相当に低いので、たとえて言うならフツウのスポーツカーからヒノノニトンを見上げている感覚に近い。

タイヤが細いので直進性も立派にあるし、乗り心地だって悪くない。コーナーを果敢に攻めてみたいとは思わないけれど、乗っていて何かしら不安を覚えるということがない。実にモダンに走る。

圏央道に入って東名高速を目指した。何とか富士山と一緒に撮りたかったので、わざわざ遠回りしたのだ。トヨタ2000GTといえば富士山だろう。写真家もそう言った。時間との勝負だ。明るいうちに東名に入りたい。

撮ってみたかった富士山バックの2000GT間に合った。否、富士が待っていてくれたかのようだ。雪を被った立派な姿が見えた。その勇姿を右手に眺めつつ2000GTを走らせる気分はこの上なく清々しい。なんだか仕事をひとつ終えた気分になる。これで心置きなく京都を目指せるが、ゆっくりドライブを楽しむわけにはいかない。できれば7時くらいまでに到着して欲しいと言われていたのを思い出す。

日没まで余裕があったので海岸線も走ってみたいとカメラカーに伝える。新東名ではなく東名を行くというわけだ。

新東名は道幅も広く、比較的真っ直ぐで、距離もわずかに短い。急いでいるときや夜中に走るにはいいのだけれど、日のあるうちに走ると東名に比べて景色がほとんど変わらず、トンネルやトラックも多くて無粋だ。晴れた日や乗って楽しいクルマで京都に向かうときにはできるだけ“旧東名”を使うようにしている。

東海道の高速版である。海あり、山あり、道は適度に曲がっていて、アップダウンを繰り返し、地域ごとの空気感を味わうことができる。日本一の観光高速道路だと思う。

日が落ちる前にシーサイドを駆けぬけた。そこからは日没を迎えることだし、そろそろ時間が気になりはじめたので、やっぱり清水で東名から新東名に乗り換えた。

美しい夕陽が2000GTを西へ西へと誘い込む。リトラクタブルライトを上げると、妙にワクワクした。スーパーカー世代にとって“上がるライト”はやっぱり気分もアガる。2000GTのフロントフェンダーはシャープな峰になっていて、それを視界の片隅に入れておけばクルマは自然と真っ直ぐに走ってくれるのだが、そこにおむすび型のライトカバーが加わると、妙に力が湧いてくる。そのまま一気に京都まで駆けぬけていける気分になった。もうトラブルの心配はまるでない。不思議とそう思えた。

給油もクラシックカーを楽しむ儀式の1つ実は途中で急報があった。休憩したサービスエリアで内容を確認すると、原稿に不備があるという。大した量ではないけれど、SAに留まって書きあげるのでは時間がもったいない。そこで急遽、ナビゲーターに2000GTのハンドルを託し、助手席で仕事をしてみることにした。これだってなかなかできない経験だ!

果たして、2000GTの助手席でもiPadプロを使って原稿を打つことができた。運転席以上に平穏なのだ。あっという間に修正の原稿を一枚、書き上げて再びのBehind the wheel。

それにしても助手席の快適なことよ!なんといっても足元のスペースが驚くほど広い。身長170cmの筆者でも脚先が余るのだ。空間も十二分。改めて超ロングノーズであることを実感した。

新東名で愛知県に入るころには日が暮れていた。伊勢湾岸道、新名神を抜けて京都を目指す。

途中、ガソリン(プレミアム)をいちどだけ補給した。フルタンク(60リットル)で走り出し、群馬から京都までおよそ600km弱の行程だったから何とか無給油で行ける計算だった。ところが新名神の土山SA(京都の目的地まで約60km)で残り一目盛りとなって、おそらく行けるとは思ったけれども、こんなところで燃費運転に挑戦しても仕方ないので念のため給油したのだ。

“クラシックカーあるある”をひとつ。ぎりぎりまで給油を我慢してヒヤヒヤしながら走ったあとにガソリンを十分に補給してあげると、クルマは再び活き活きと走り出してくれる。恐らくそれはドライバーの精神状態の裏返しなのだろう。旧いクルマとは、心も身体も一体になれるというわけだ。

旅のフィナーレは京都でのイベントぶじに京都東インターを降りる。7時を回っていた。目的地は河原町二条のkiwakotoショールームだ。閉店時間を過ぎてもスタッフが待機してくれているはず。山科から蹴上を越えて洛中に入った。

8時前。店に到着。スタッフが総出で出迎えてくれた。そのままショールームに2000GTを飾る。翌朝、ここで筆者がモデレーターとなって“文化朝活”が行なわれるのだ。テーマは「日本の自動車文化」。世界が認めたトヨタ2000GTを題材に、文化とは何か、自動車文化はどうあるべきか、を少人数で語り尽くそうという会である。

翌日。20名近くの人たち、老若男女、クルマ好きもそうでない方もいらっしゃった。自動車文化について語りあってもらう。いろんな意見が出た。正解はない。けれども、自分の思うところを積極的に発言し、他人の意見に耳を傾けることは、いずれにせよ文化醸造の第一歩になりうると実感……。内容についてはぜひ「文化朝活リポート」を読んでもらいたい。

様々な自動車文化論を聞いての結論はひとつ。

クルマはやっぱり楽しい。

文・西川 淳 写真・柳田由人 編集・iconic

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