「クルマだけに留まらず、驚きと感動の提供に挑戦し続けるLEXUSからの新たな提案」
レクサスが9月、マイアミで披露した65フィート級のラグジュアリーヨット「LY650」のメディア向け資料に記されていた言葉だ。
“フライブリッジ(キャビンの屋根上に設けられた操縦席)クルーザー”というジャンルにもくくられるLY650の画期的なところは、斬新で美しいデザイン、精緻な内外装の仕上げ、塗装を使ったメタリックに輝く船体色など、多くあげられる。
サイドビューは「フライブリッジのルーフラインを含めてクーペ的なシルエットを実現した」と、レクサスは述べる。クルージングの体験は、米フロリダ州マイアミから、東へ47マイルのコースト沿いにあるボカラトンまでだった。ボート移動用のためにつくられた広い水路を、午後いっぱい使ってゆっくりと巡航したのである。
カーボンファイバーとグラスファイバーを組み合わせてつくられたボディは、まるでレクサス車のようにパネルのつなぎ目などのディテールの処理がじつにていねい。まるで鍛造で作られたような印象で、実物の存在感は圧倒的だった。
オーナーズルームは、白を基調とした開放的な空間を意識し、設計されている。「レクサスはこれまでにも、(2013年の「Fスポーツロードバイク」や2015年の「ホバーボード」のように)クルマいがいの乗りものを手がけてきました。今回は、(マリンの)専門メーカーではないので、逆に、大胆なデザインにしようとしたのです」
レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントは現地でそう述べた。
LED照明を効果的に使ったメインサロン。例をあげると、へさきをぐっと絞ったデザイン。「先端デッキに行く通路が狭くなっても、あえてスタイリッシュさを追究しました」と、澤氏は言う。
「当初はもうすこし小さいサイズを考えたのですが、グループのトップから”65フィートでいこう”と言われたので、挑戦しました。レクサス『LS』や『LC』といったモデルとの連続性も意識しながらデザインしたつもりです」
たしかに、LY650の船体はスポーツカーのように空気を切り裂いてハイスピードで疾走するイメージすらある。
操縦席まわりは、ピアノブラックの仕上げで上質感がある。ゴージャスなインテリアメインサロンは、適度にモダンな雰囲気だ。アッシュ材のような床には、よく見ると、“L”を使ったレクサスのシンボルが象嵌細工のようにはめこまれている。家具はダークなウッド調で、ホワイトのレザー張りソファや、クロームの装飾とのコントラストが効いている。
「クルマとヨットの違いはなにか? クルマでは乗員がみな前を向いて座りますが、ヨットではリビングルームでのように寛いで、それぞれいろんな向きに座ります。OMOTENASHI(おもてなし)の精神を核に置くレクサスブランドだけに、私たちが顧客に提供できる理想的なリビングルームとはなにか? を、考えました」と、開発担当者は話す。
トヨタ自動車・豊田章男社長も「ここが一番好きです」と言っていたバウベッド。塗色もレクサス車をイメージさせる。成形時、合成樹脂に塗料を混ぜるのが通常の方法であるものの、多少、耐久性は劣っても塗装を選択したのは、“車両に通じるイメージをもたせる”という目的が大きかったためだ。
レクサスがパートナーに選んだのは、インテリアがイタリアのヌボラーリ・レナルド社、艤装がアメリカのマーキー・ヤッツ社である。
てっぺんに設けられたフライブリッジから見たマイアミ周辺の眺め(ヨットを持っている住宅が水路ぞいに並ぶ)。オーナーズ・ルームとゲスト・ルーム、あわせてベッド・ルームが3つある。白いベッドに横たわるのはさすがに気がひけたので見ただけであるが、フロリダの青い空が天窓ごしに眺められ、たいへん気分がよさそうだ。ヨット趣味の醍醐味の一端が見えたような気がした。
シートの縫製、家具の仕上げ、金属の加工および溶接などについては、クラフツマンシップを活かしたモノづくりを追究するレクサス・チームもノウハウを提供したという。
レクサスとして実際に船づくり(しかもいきなり豪華な65フィート級ヨット)を手がけるのは初めてだったわけであるが、想像以上に立派な仕上がりである。
オーナーズルームのベッドに橫たわると、天窓から青い空が見える。ボルボ・ペンタのエンジン搭載の理由とは?船体の艤装工程には「TPS(トヨタ生産方式)」が導入された。クルマづくりだけでなく、あらゆる生産の現場で活用されている大ヒット”システム”であるTPSが、LY650でも、というのは興味ぶかい事実だ。
マーキー・ヤッツ社を選択したメリットは、安定した乗り心地やすぐれた安定性を実現するためという。とりわけマーキー・ヤッツ社が手がけた船体は、「これならレクサスがパートナーに選ぶだろう」と、納得したくなるような、エッジの効いたデザインが多い。話が通じやすかったのだろう。
インフォテインメントシステムなどはスマート端末と連携する。LY650の全長は19.94m、全幅は5.76mで、エンジンはボルボ・ペンタ「IPS」を2基搭載。出力ちがいによって3つのグレードがある。
ちなみに、レクサスが属するトヨタグループには、トヨタマリンの「ポーナム」というクルーザー・シリーズがある。こちらは、最大35フィート(全長11.95 m)までのシリーズなので、65フィート級のLY650には、「ポーナム」が搭載するトヨタ製エンジンのパワーをもってしては力不足。そこで、さまざまなエンジンを試した結果、ボルボ・ペンタのものがスペック的に最適だったという。
新しいモビリティの追求マイアミでのクルージングは、当初は大西洋に出て、フロリダ・キーズ(諸島)へ近づくことも検討されていたと聞いた。65フィート級のヨットの晴れ舞台である。しかし、取材日前後にハリケーンが生起し、変更を余儀なくされた。
LY650の安定感はばつぐんだ。対向の大型艇が起こす波で進路が乱されても、コンピューターにより、ゆっくりと修正舵があてられる。「操縦も快適です」。フライブリッジのコクピットに陣取った米国人のヘルムスマン(操縦士)はそう話す。
今回乗ったLY650はすでにオーナーがいるとのことだった。具体的な販売価格はあきらかにされていないが、もっとも控えめな出力のエンジン仕様で、4億5000万円という。
「モビリティカンパニーとして海においても新しいモビリティを追求していくつもりです」
澤プレジデントは最後、そう述べた。
文・小川フミオ
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4億5000万円ならほかの船に普通はします