2010年末、ついにBMW 1シリーズのMモデルが正式に登場した。1973年に「M1」がすでにデビューしていたため、名称は「1シリーズMクーペ」に決定。当時、M5がV10エンジン、M3がV8エンジンを搭載することとなり、伝統の直列6気筒ユニットを搭載するモデルが切望されていたが、ついにこの1シリーズMクーペで復活、それもツインターボ化されての登場となった。
その走りにはMモデル本来の興奮があった
BMW M社が開発・製造する1シリーズベースのハイパフォーマンスモデルは、台数限定で2011年春に発売されることになった。初代M1登場以来、Mモデルのユーザー層は飛躍的に広がっていたが、だからこそBMW M社は、より焦点を絞ったモデルにこだわっていた。
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1シリーズMクーペ登場の際には、「135iをベースに先代M3のパーツを組み込んだだけのクルマではないか」という声もあったが、実際は1シリーズクーペとはまったく別物であり、先代M3のパーツを組み込んだだけでもなかった。結論から言えば、むしろM3よりもMモデルらしいクルマだった。
ボディサイズは全長4380×全幅1803×全高1420mm、ホイールベース2660mm、前後トレッド1542mmで、135iクーペと比較して5mm長く、53mm広く、13mm高く、トレッドは前が71mm、後ろが46mm広げられていた。また初代M3と比較すると、122mm広く、33mm長く、ホイールベースは76mm長かった。
前後サブフレームやフロントサスペンションをアルミとし、そこにはM3のパーツも多く移植されていた。ブレーキはフロントが360×24mm、リアには350×24mmのドリルドベンチレーテッドディスクが採用され、前後重量配分は51.7:48.3となっていた。
3L直列6気筒ツインターボエンジンは最高出力340ps/5900rpm、最大トルク450Nm/1500-4500rpmを発生。レッドゾーンは7000rpmから始まるが、オーバーブースト機能により短時間ながらトルクを50Nm増やすことができた。トランスミッションは6速MTのみで、オプションでもSMGやDCT(デュアルクラッチトランスミッション)を選択することはできなかった。
ステアリングホイールにはスロットルレスポンスを鋭くするMドライブボタンを、ダッシュボードにはDSC(横滑り防止装置)の介入タイミングを変更するMダイナミックモードボタンが備わっていた。
このモデルの決定的な魅力は、ドライバーを興奮に誘い、ドライバーにスキルを要求するということだった。X5M/X6Mで「Mの世界」が大きく広がる中で、M本来の個性はインパクトがあった。ハンドリングも乗り心地もハードで、快適性とコントロールの難しさ、実用性と興奮、スリルと危うさを併せ持つ1シリーズMクーペは、真のMモデルを求める人たちが待ち望んでいたものだったのだ。
生産台数に限りがあり、また最低地上高の問題もあってか、日本に正規輸入されることはなかったが、1シリーズMクーペは「Mの系譜」を語る上で、欠かすことのできないモデルだった。
BMW 1シリーズMクーペ(2011年)
●全長:4380mm
●全幅:1803mm
●全高:1420mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1495kg
●エンジン:直列6気筒 DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:340ps/5900rpm
●最大トルク:450〈500※1〉Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●サスペンション:前ストラット/後5リンク
●0→100km/h加速:4.9秒
※欧州仕様、※1:オーバーブースト時
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