原付ナンバーをつければ走行可能だが、最高速23km/hというのは不安も
グループ企業により中国で各種の電動モビリティを製造、日本で販売しているキントーンの製品ラインナップ試乗会が10月30日に茨城県常総市にて開催された。クローズドな場を試乗会場として設定していたが、そこにあった電動キックボード「キントーン・アルファ・ゴー(Kintone α GO)」には原付ナンバーが付いていた。当然、ウインカーやヘッドライト、テールランプなども備わっている。この電動キックボードは公道走行可能な状態での販売が予定されている。
現時点では開発中のプロトタイプということで、これから各部が洗練される可能性もあるという説明だったが、少なくとも乗り味については改善の必要性がないと思えるほど楽しいモビリティに仕上がっている。最初の走り出しは足でけり出すが、そこからはモーターを内蔵したフロントタイヤにより駆動。アクセルレバーはハンドル部分に備わり、そのパワーは三段階に切り替えることができるというのが大まかなプロフィール。ハンドルには速度などを示すデジタルメーターやモーターを利用したブレーキレバーも備わり、たしかに保安基準を満たしているであろうことが見て取れる。海外ではシェアリングモビリティとして流行中の電動キックボード、日本でも公道で乗れるようにメーカー自身がアプローチしているのだ。
▼Kintone α GO
・予定価格 99,900円(税抜き)
・最高速度23km/h
・最大走行距離 1回の充電で5~10km
・本体重量 10kg(持ち運び可能)
・最大体重制限:120kg
・充電時間 4時間
・サイズ 縦105cm、横47cm、高さ120cm
では、この「キントーン・アルファ・ゴー」に実際に乗ってみるとどうなのか? 折りたたみ式ということもあり、パッと見の印象は華奢な構造というものであり、これで公道を走るというのは、無理があるのでは? という第一印象があったのは事実だ。しかし、乗り始めてしまうと、そうした先入観はどこかへ吹き飛んでしまう。
とにかく動かしていることが楽しいのだ。極小径タイヤで、サスペンションもなにもないフレームだから路面の状態はダイレクトに伝わってくる。石畳のような路面ではそれなりにバランスを取る必要はあるのだが、電動パワートレインのレスポンスとトルク感のおかげで駆動力をかけていれば十分に自立して走ることができる。そのため転んでしまうような不安は皆無で、コーナリングでもそれなりに車体を傾けることができる。その際に、ボディ後端のナンバープレートが路面と干渉してしまうのは要改善だが……。
エンジンを積んだキックボードというアイデアは昔からあったが、おそらくそうした動力付きキックボードではレスポンスの問題からどこか荒々しい乗り味だったろう。小型軽量なバッテリーやモーターといった電動パワートレインであれば、欲しいだけの駆動力をリニアに得ることができる。だからこそ乗り手との一体感が生まれ、そこにモビリティの原点ともいえる楽しさがある。乗っていると、自然と笑顔になってしまう。
スペック上の最高速度が23km/h、今回の試乗ではアクセル全開時はメーター読みで20km/h程度の速度だったこともあり、混合交通の中で安全なモビリティとして利用するためには注意すべき点はある。しかし、少なくとも単独で乗っている限りにおいて、電動キックボードがこれほど楽しい“のりもの”であるというのは大きな発見だった。
だからこそ欧州や中国で電動キックボードが流行っているのだろう。シェアリングモビリティというのは単にコストに見合った便利な移動手段だから普及するというわけではなく、“のりもの”である限り、そこにファン・トゥ・ドライブ、ファン・トゥ・ライド感があることは欠かせないのかもしれない。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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