エンジンのためには、あまり回転を上げない方がいいのか? それとも高回転まで回したほうがいいのか?
長持ちさせるために、エンジンをいたわるということを考えると、一般的にはエンジンを低回転しか回さない方がいいように思える。
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その一方で、街中の低い回転域だけで走っていると、エンジン内部に汚れがたまってクルマにはよくない。たまには高速道路で、エンジンを高回転まで回さないとダメ、という話もよく聞く。
実際にはエンジンにとって、どんな状況がいいのだろうか? 自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
【画像ギャラリー】高回転まで回るエンジン搭載車一覧
チョイ乗りだけだとエンジンはどうなる?
ピストンヘッドに付着したカーボン。10万km以上、ほぼチョイ乗りしかしていないとこうなる
エンジンは少しでも燃費が良くなるように、吸い込んだ空気の量に対して最適な量の燃料を噴射して燃焼させている。
できるかぎり完全燃焼に近付けることで、燃えカスであるカーボンの発生も防いでくれるのだが、実際には発進時など負荷の大きな加速時には、少し多めに燃料を噴射して濃い混合気を作り、力強い加速を実現している。
また冷間時には、燃焼を安定させるためにも濃いめに燃料を噴射してアイドリングの回転数も上昇させる。
このあたりはキャブレター時代のエンジンと変わらない(とはいえエンジンが早く温まる工夫もいろいろ施されてはいる)のだ。
さらにポート噴射型のガソリンエンジンの場合、燃料を吸気ポート付近にぶつけて霧化させているため、どうしても霧化しきれない燃料がデポジットとして堆積してしまう。
近所でのチョイ乗りを繰り返すと、これがどんどん大きくなって、吸気ポートを狭めてしまう、なんてこともある。
一方、直噴エンジンの場合も、チョイ乗りでの加速や冷間時のファーストアイドルで燃焼室や排気系にPMがカーボンとして溜まることも。
時々加速すると溜まったカーボンでディーゼル並みに黒煙を噴き出すガソリン車もいるから、コイツは環境にはよろしくない。
バルブにカーボンが付着した状態
クリーンディーゼルエンジンもしっかり回す
クリーンディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べ、もともと高回転まで回らないが、高回転まで回さなくていいものか?
クリーンディーゼル車も直噴ガソリン同様、チョイ乗りや発進加速を繰り返すだけの走りは、DPF(黒煙をろ過する排気系のフィルター)やEGRバルブにカーボンを堆積させてしまうことになる。
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べ、最大トルクの発生回転数は1500~2500rpmと低く、4500rpmあたりまでしか回せないが、低回転だけで走っていると、PMが堆積しやすくなるため、時々エンジンを回してやることがエンジンのコンディションを維持するために重要なのである。
加速時にギアを落としてしっかり回す、付着したPMを吹き飛ばすためにもエンジンブレーキを多用した方がいい。剥がれたカーボンは最終的にDPF再生装置に入り、再生処理時に燃えてしまうので問題はないはずだ。
最近のクルマに変化の兆しが見える
最近のエンジンは昔ほど高回転を重視していないという
燃費のことや、エンジンの慴動部分の摩耗を考えれば、エンジン回転は低い方がいいと思うだろうし、それは基本的には間違ってはいない。
だが最近はクルマを所有していても、年間の走行距離が少ないオーナーが珍しくない。そうなるとオイル交換の間隔も開き気味になってオイルが汚れた状態での走行が多くなる。
しかも前述のように燃料を濃く噴射している状態もあり、オイルが汚れた状態での走行が長くなることは、エンジン内部にスラッジを堆積させやすくなり、油圧系のコンディションを悪化させていくことにつながるのだ。
変速機にも同じことはいえる。いくらATFの汚れはフィルターが漉し取ってくれるといっても、短時間かつ低速での走行を繰り返していると、油圧系統にスラッジを堆積させやすくなる。これは後々、トラブルの原因にもなるものだ。
そんな状況を防ぐ、あるいは改善しようと思うなら、時々はエンジンをある程度の回転数まで回し、一定の速度で巡航することだ。
これがエンジン内部の堆積物を減らし、燃焼室回りのコンディションを整えて理想的な燃焼状態に近付けてくれる。
ただし、エンジン回転数を高めればいい、という単純なモノでもない。前述のように発進加速などは負荷が大きいので、エンジン回転を高めるために燃料をたくさん噴射する。
燃料が濃い状態での走行なので、吸排気系や燃焼室にはむしろデポジットやカーボンが堆積しやすくなる可能性も高い。それに加速している時間は短いから、チョイ乗りで堆積したデポジットを溶かして燃焼させることはできない。
だからといって、必ずしも高回転域までシフトせずに引っ張って加速させる必要はない。ひと昔前のハイパワーなスポーティカー用エンジンなら話は別だが、昨今のエコカーはエンジンの許容回転数も低く、中低速重視の特性なので高回転域まで回すメリットは少ない。
エンジンの回転数は、すなわちクランクシャフトの回転している速さとなるのだが、NAでも高出力を謳うエンジンを搭載していたクルマが多かった時代は、高回転域のフィールが優れたエンジンも多かった。
だが最近のエンジンは以前ほど高回転域を重視していない。燃費や排ガス規制が厳しくなった昨今、回転数を上昇させるのは燃焼回数が増えて燃費の悪化につながるからだ。
一般的な4輪車用のエンジンではアイドリング(750rpm前後)から2000rpmあたりまでが低回転域、4000rpmあたりまでが中回転域、それ以上が高回転域となるが、エンジンが高回転型であれば全体的に回転数帯の幅が広くなると思っていい。
つまり8000rpm以上回るようなエンジンなら5000rpmあたりまでは中回転域ともいえる。このあたりは最大トルクの発生回転数や実際に使えるパワーバンドによっても変わってくる。
実はピストンが上下する速さでいえば、その頃のスポーツエンジンに負けないくらい、今のエコカーのエンジンの方が攻めている。
さすがにホンダのタイプR系NAエンジンのように8400rpm以上回るエンジンとなると別だが、高性能車でも7500rpmあたりがレブリミットであれば、平均ピストンスピードは20m/sあたりに収めるように設計されるのが常識だ。
ところがトヨタのダイナミックフォースエンジンA25FKS型(レクサスやM20FKS型(RAV4に搭載)は、6600rpmで23m/sに達する。
そのためピストンの軽量化やフリクション対策はまるでレーシングエンジン並みの仕様に仕立てられている。このエンジンは従来に比べ、ロングストローク化が図られているからだ。これは新しい傾向といえる。
高速燃焼を実現したダイナミックフォースエンジン
実は高回転まで回すよりも高速道路のクルージングが理想
やはりチョイ乗りよりも高速道路をクルージングした方がエンジン、クルマにとってはいい
また、燃料供給にキャブレター、点火系にディストリビューターを使っていたエンジンなら、プラグのカブりを防ぐために高回転域まで引っ張る必要があったが、今日の電子制御でダイレクトイグニッションのエンジンには、そうした儀式は不要だ。
油圧を高めて、油圧経路のスラッジの堆積を防ぐのがエンジンを回すメリットといえる。したがって、中回転域と言える3000rpmあたりまで回せば十分だ。
それよりも軽負荷の燃焼を一定時間続けることが大事。理想は、高速道路でのクルージングだ。
月に1度くらいは高速道路を走り、合流時にはしっかりと加速してエンジン回転を高め、その後は巡航することで、燃焼温度が高めな燃焼を続けるになり、カーボンやデポジットを軽減させることができる。
その後高速道路を下りると、エンジンの吹け上がりが軽くなって、エンジンの調子が良くなったことを体感できるクルマも珍しくない。
さらにデポジットを減らしたいなら、燃料に清浄剤を添加してやるのもアリだ。ハイオクガソリンのなかには、レギュラーガソリンよりも清浄剤が多く含まれているから、ハイオクを入れてもいい。
エネオスのハイオクガソリン、エネオスヴィーゴは清浄性能:吸気バルブの汚れを86%減、燃費:最大3%向上(摩擦調整剤未添加のハイオクとの比較)、加速性能:最大5%向上、出力:最大15%向上
デポジットやカーボン除去以外にも効果アリ
走行することでエンジンオイルにも水蒸気(燃焼ガスから発生)や燃料(冷間時の走行が多いと燃料希釈も多い)が混じってくるから、これらもある程度長時間エンジンを回すことで、エンジンオイルから蒸発させ、オイルの状態を回復させることにつながるのだ。
マフラーのサイレンサーに水が溜まることで、マフラー内部が腐食して穴が空いてしまうことは、純正マフラーがステンレス製になったことで、ほとんどなくなった(それでも磁石がくっつく安いステンレスSS430などでは、溶接部分などから腐食することもある)。
どんな機械もキチンとしたメンテナンスをしたうえで、毎日動かしてやる方がコンディションは良いことが多い。乗らなさ過ぎはタイヤや足回り、エンジンルーム内のゴム類の劣化も早める。
例えば愛犬を散歩に連れ出すかのように、愛車も時々しっかりと走らせてやることで運動不足解消につながり、油圧系の動脈硬化や吸排気系の血栓を防ぐことができるのだ。
忙しい日々の中、休日だからといって意味もなくドライブする余裕は少ないかもしれない。たまには買い物などのついでにちょっと遠回りして、しばしクルージングを楽しんでみてはいかがだろう。
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