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BMWファン目線でリポートする【第48回 鈴鹿10時間耐久レース】

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BMWファン目線でリポートする【第48回 鈴鹿10時間耐久レース】

名門チームが挑むGT3世界統一戦

恒例の熱い夏の陣、第48回目を迎えた「サマーエンデュランス鈴鹿10時間耐久レース」が2019年8月23日(金)~25日(日)に三重県の鈴鹿サーキットで開催された。全日本GT選手権/SUPER GTの一戦であった鈴鹿1000kmから離れてインターナショナルGTチャレンジに組み込まれ、FIA GT3マシンの世界統一戦として開催2年目を迎えた今季は27台がエントリーしたのだ。

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中でもBMWファンの注目を集めたのが、バイエルンのフライラッシングを本拠地とする名門チームのシュニッツァーだ。昨年末で勇退を発表し、その直後の1月に急逝したチャーリー・ラムに代わり、今年から甥のヘルベルト・シュニッツァーJr.が代表に就任した新生シュニッツァー・モータースポーツ。一部JTCC(全日本ツーリングカー選手権)やWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)当時を知るスタッフも今回の鈴鹿戦に帯同し久しぶりの日本を懐かしむ一方で、日本初訪問となるメンバーらはミュンヘン空港を飛び立つ前から遥か遠い異国への期待を膨らませていた。

そしてもうひとつのBMWチームは、ドイツ国内でBMWとMINIの大規模ディーラーを手掛け、最近はめきめきとヨーロッパのレース界で頭角を現すヴァルケンホルスト・モータースポーツだ。こちらは日本遠征が初めてとあって未知の国でのレースに興味津々のようだ。

大型台風が過ぎ去った後とあり、多少は熱波が落ち着いた8月末の三重県鈴鹿サーキット。大きなオニヤンマが涼しげに飛び回る光景に秋近しと心和むも、やはり日本特有の蒸し暑さに、どのクルーの額にも玉のような汗が光る。ピット設営を経て行われた金曜日のフリープラクティスでは、まるで亜熱帯のような激しいスコールに打たれる。

ところがシュニッツァーのM6 GT3は、そんな状況下で想定外のトラブルに見舞われてナイトセッション終了まで完走できずにいた。明日24日は予選だ。それらの原因を究明すべく、深夜の静寂にポツンと明かりが灯る20番ピットでは黙々と整備作業が続けられる。もう一方のヴァルケンホルストは順調にその日の走行スケジュールを消化し、翌日からのハードな闘いに備えて貴重な時間を休息にあてることができた。

予選トップ20のマシンで争うポールシュートアウトへのチャレンジとなった土曜日の夕刻。#42のシュニッツァーはベテランのアウグスト・ファーファス、#34ヴァルケンホルストはニック・カッツブルクという2名のBMWワークスドライバーがステアリングを担った。気温が高く暑い一日だったが、そのポールシュートアウトの時刻には偶然にも爽やかな風が吹いてほんの少しだけ気温が下がる。どちらかというと暑さや熱が苦手なM6 GT3は、ほんの少しのクールダウンでもマシン本来のポテンシャルをフルに発揮できるのだ。

もちろんライバルたちは強豪揃い、メルセデスAMG GTやアウディR8 LMS、ポルシェ911、フェラーリ488、ランボルギーニ・ウラカンなど、どれがポールポジションを獲ってもフシギではないハイレベルな走りを魅せた。緊迫した表情でモニターを見守るシュニッツァーのクルーの目前で、ファーファスは見事なアタックを決めて堂々のポールポジションを獲得、一方のカッツブルクも3番手を勝ち取り、翌日の長い長い10時間レースへの期待が高まった。

好スタートでワンツーに

 

決勝レース当日の午前7時過ぎから始まったピットウォーク。早朝から照りつける太陽の下、ドライバーとの記念撮影やサインを求めて数多くのファンがBMWチームのピットに詰めかけた。ファンとの束の間の交流を終えれば、すぐにスターティング・グリッドの準備でピット内が慌ただしくなる。両BMWチームのクルーたちはアスファルトの照り返しと澄んだ8月の青空が強く眩しいグリッドへと向かって、少しの緊張と大きな喜びに満ちた表情で足早に駆けだした。

グランドスタンドに響く国歌斉唱の後、待ちに待った第48回鈴鹿10時間耐久レースの幕が開けた。フォーメーションラップからシグナルがグリーンに変わるその瞬間、2番手につける#25アウディスポーツWRTのR8が先頭に立つべく一瞬の隙を狙う。だが、シュニッツァーのマルティン・トムチェックはトップを死守、そして3番グリッドにいたヴァルケンホルストのカッツブルクは、そのアウディを素早く交わしてシュニッツァーの後方に着いた。

その後は1時間以上に渡ってこの2台のM6による独走ランデブーが続き、レースの主導権を握ったBMWチームの士気が高まる。しかし、順調かと思われたその時、信じられない光景がモニターに映し出された。目の前で起こった複数台が絡むクラッシュをうまく避けたヴァルケンホルストだったが、後続のジェントルマンドライバーが駆る日産GT-Rがクラッシュ集団を避け切れず、猛スピードでM6のリアに追突。自力でピットに辿り着くもダメージが予想以上に酷く、わずか1時間でヴァルケンホルストの決勝レースは幕を閉じた。

掛ける言葉もみつからない程の落胆と無念のヴァルケンホルストの分も背負い、シュニッツァーはより一層精力的に残りのレースを闘った。ドライバーらの想いは強く、サイドバイサイドの激しいバトルを幾度も繰り広げて観客を大いに沸かせていた。その一方でチーフエンジニアからは、リスクを冒さないようにクールダウンを促す無線が冷静なトーンで流れ、クルー達も気持ちを新たに引き締めていたようだ。

そんな悪い予感は的中するもので、強いモチベーションが裏目に出たチーム・シュニッツァーのM6は、ドライブスルーや30秒のピットストップといったペナルティを受けてしまい、ポジションをいくつか落とした。しかし、数多くのBMWファンが見守る中、という長く激しい10時間の闘いを首位と同じ275ラップの5位入賞でチェッカーフラッグを受ける。

わずか数秒差で表彰台には届かなかったものの、その素晴らしく抜群のチームワークを日本で披露した、チーム・シュニッツァーのクルーたちは互いを労い抱擁を交わした。そして、優勝を果たしたアウディスポーツWRTやその関係者ら、この鈴鹿での戦いを共にしたライバルたちとの固い握手は、お互いの存在をリスペクトした美しい光景といえる。見上げた夜空には色鮮やかな花火が輝いていた。

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