う~む、こりゃあ2CVだぁ。東京・碑文谷のプジョー目黒で「C3 エアクロス SUV」を借り出し、目黒通りを走り出した途端、そう思った。「2CV」はシトロエニストにとって、声に出すだけでありがたい、念仏みたいなことばだ。単にクルマの名前ではない、「DS」と並ぶ信仰の対象である。
さる2019年7月に国内販売開始された、このサブコンパクトSUVは、2016年登場の現行「C3」の派生モデルとして、その1年後の2017年、パリで発表された。位置付けは「C3 ピカソ」(日本未導入)の後継だけれど、ご存じピカソ一族がミニバンなのに対して、本邦には5月に上陸した「C5 エアクロス SUV」に続く、シトロエンSUV第2弾となる。
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【主要諸元(シャイン パッケージ)】全長×全幅×全高:4169mm×1765mm×1630mm、ホイールベース:2605mm、車両重量:1310kg、乗車定員:5名、エンジン:1199cc直列3気筒DOHCターボ(110ps/5500rpm、205Nm/1750rpm)、トランスミッション:6AT、駆動方式:FWD、タイヤサイズ:215/50 R17、価格:297万円(OP含まず)。ボディ・サイズは全長4m弱のC3に対して、全長4160mm×全幅1765mm×全高1630mmとひとまわり大きい。2606mmのホイールベースはC3と較べると70mm、全長は165mm伸びて、135mm高くなっている。
ちなみに、C5 エアクロス SUVはホイールベース2730mmで、3サイズは4500×1850×1710mm。ごく簡単に申しあげると、ちょっと大きい。
C3 エアクロス SUVの兄貴分になるC5 エアクロス SUV。2列シートのSUVでる。駆動方式はFWD(前輪駆動)のみ。SUVといっても、駆動方式が前輪駆動のみで4WDの設定がないのは、C3ともC5 エアクロス SUVとも共通する。最低地上高はC3とおなじ160mm。
160mm!? そう、エアクロスではないC3の最低地上高それ自体、フツウのハッチバック、たとえばおなじグループPSAのプジョー「208」とくらべて20mmも高い。現行C3がそもそもSUVルックで、そのSUVルックをさらに濃くしたのがC3 エアクロス SUVである。
ボディは全長×全幅×全高:4169mm×1765mm×1630mm。なかでも、試乗車の「SHINEパッケージ」は最強SUVルックで、1サイズ上の17インチ、しかもマッド&スノーのオール・シーズン・タイヤを採用。目玉装備として、ノーマル、スノー、マッド、サンドなど、路面に合わせてトラクションを最適化する「グリップコントロール」なる電子制御システムと、くだり坂で有効な「ヒル・ディセント・コントロール」を搭載する。
前輪駆動で、これらがどれほどの役に立つのか? と問うてはいけない。4WDだって行けないところは行けないし、前輪駆動だって行けるところは行ける。あえて前輪駆動のまま、その可能性を広げようとしたところにシトロエンの面目躍如がある。
「グリップコントロール」と「ヒル・ディセント・コントロール」のスウィッチはインパネ下部にある。フワフワな乗り心地場面を目黒通りに戻して、そう、筆者はC3 エアクロス SUVで目黒通りを走り始めたばかりである。そこで、「2CVだぁ」と思ったのは、乗り心地にある。
ちょっと高めの着座位置とか、ソフトなシートとか、基本的な部分も似ている。シックなインテリアのなかで、見える範囲だと、ステアリング・ホイールとエアベントの一部がオレンジ色に塗られていて、モダンなエキセントリシティを感じさせる。
駆動方式はFWD(前輪駆動)のみ。で、17インチの215/50というタイヤ・サイズのなせるわざか、ちょっと当たりが硬い。それが、たっぷりとられた最低地上高の恩恵もあって、ホイールストロークもたっぷりある感じで、新車ゆえ、そのストローク感は少々生かたいところはあるものの、傾向としてはふわふわしている。
おそらく、ではあるけれど、距離を重ねてダンパーが馴染むにつれ、トロトロになってきそうな雰囲気がある。
最上級グレードのシャイン パッケージのタイヤサイズは215/50 R17。ちなみに2CVのグラウンド・クリアランスは150mmで、当時のフランスの大衆車は荷物を満載する都合もあって、尻上がりだった。それがいまや、全部上がりになりつつあるわけである。
非力な感じも味わい深いエンジンがいかにも非力なところも味わい深い。筆者の知る2CVは1980年代製造なので、空冷2気筒は602ccで最高出力29psといったものだけれど、C3 エアクロス SUVのそれはPSAの“ピュアテック”1199cc3気筒ターボで、最高出力110psを発生する。じつに4倍近いパワーの違いがあるわけだけれど、2CVの車重は600kgを切る超軽量だ。C3 エアクロス SUVは4WDでない分、軽いとはいえ、車重1310kgと2倍以上もある。
しかも、この3気筒ターボ、じつは1750rpmで205Nmという最大トルクを発揮するトルク自慢なわけだけれど、それがカツカツ、ギリギリの加速しか見せないのは、アイシンAW製6速オートマチックがつねに最大効率でエンジンを働かせるべく、早め早めにシフトアップしているからだ。タコメーターに目をやると、つねに2000rpm近辺を指している。アクセルを踏み込むと、ビーンという高めの澄んだ音を発して勢いよくまわるけれど、持続しない。
搭載するエンジンは1199cc直列3気筒DOHCターボ(110ps/5500rpm、205Nm/1750rpm)。トランスミッションは電子制御式6AT。WLTCモードの燃費は14.7km/L。最小回転半径は5.5m。ATのプログラムをSに切り替えるモードも付いていて、せっかちなひとはそちらを選ぶこともできる。Sだと、上まで引っ張って、エンジン・ブレーキもよく効く。けれど、ギアが1段落ちてエンジンの回転があがるので、俄然室内がうるさくなる。キレがあるといっても、痛快無比の加速というわけではない。なので、私的には元に戻して、ゆったり、遅い加速を楽しむほうが楽しい。いまどきなのに、坂道になるとガクンと遅くなる。大地のアップダウンを知りながら走るのはオツなものである。
こまめなロックアップを心がけているせいだろう、アイシンAW製ATは変速時に軽いショックを伴う。マニュアルの操作が初心者みたいな、引っかかり感があるのだ。でも、それが逆にリズムをつくって、遅いなりに“やっている感”となったりするのだから、まことに自動車とは気分の乗り物である。
エア・アウトレットオレンジなどが印象的なインテリア。Apple CarPlayおよびAndroid Autoに対応する7インチのタッチスクリーンは全車標準。一部がオレンジに塗られたステアリング・ホイールは、オーディオ・コントローラー用のスウィッチ付き。アナログ・タイプのメーターパネル。中央のインフォメーション・ディスプレイはモノクロ表示。フランスの新世代実用車全長4160mmでホイールベース2605mmだから、現行のフォルクスワーゲン「ゴルフ」よりちょっぴり小さいわけである。それが、まったりとした乗り心地のおかげで、もっと大きなクルマに乗っているような印象を受ける。
もちろん、着座位置がちょっと高めなことも利している。くわえて、スタビリティ重視のステアリングも効いている。ロック・トゥ・ロック3回転の、いかにも実用車っぽいステアリングだけれど、たいへん正確で、ヨーロッパ車の小型大衆車のいい感じを全部持っている。ロード・ノイズが大きかったりするときは、同乗者と大きな声で元気に話す。元気があれば、なんでもできる。
ドライバーズ・シートはアームレスト付き。リアシートはスライドおよびリクライニング機構付き。センターアームレストは、トランクスルー機構と兼ねる。ラゲッジルーム容量は通常時420リッター。リアシートのバックレスト(40:60の分割式可倒式)をすべて格納すると1289リッターに拡大する。C3より少々でっかい分、室内も荷室も広い。冬になると、お風呂に入っているカピバラの画像が出まわるけれど、路上で見かけたら、それを思い出しそうな外観も、個性的でかわいらしい。車両価格259万円から。いかにも使いでがありそうなフランスの新世代実用車、いいなぁ。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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