2016年に登場したアルピナのフラッグシップモデル「BMWアルピナB7」が大幅にアップデートされた。フラッグシップに恥じないB7の堅実な走りに加え、その他のアルピナシリーズのパフォーマンスを再確認した。(Motor Magazine 2019年8月号より)
世界最小の自動車メーカーの開発哲学は「グルメ」
アルピナの創始者であるブルカルト・ボーフェンジーペン氏は、私が初めて同社を訪問したときに「アルピナの哲学はグルメです。普段の食事は腹がいっぱいになれば満足ですが、実はもっと美味しいものを食べたいという欲求があります。これはクルマの世界も同じで単なる移動手段ではなく、その時間を楽しんで欲しいのです」と語った。そしてその哲学は長男のアンドレアス・ボーフェンジーペンCEOに継承され、世界でもっとも小さな自動車メーカーとしての地位を築いている。
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そのアルピナが7シリーズのフェイスリフトに合わせて新しいB7を今年のジュネーブモーターショーで公開した。そして今回ついに新型7の試乗会がオーストリアにあるザルツブルグのサーキットで開催された。しかもアルピナの全ラインナップが試乗できると聞いて、さらに胸を躍らせて会場へ向かった。
サーキットを全開で走るB7はラージセダンの常識を超越
まず、サーキットのパドックに到着して目についたのが上品なアルピナブルーのB7だ。「なぜ、このようなラグジュアリーカーをサーキットで試乗するのか」とCEOのアンドレアス氏に質問したところ、すでにクルマは完成し、ホモロゲーションは取れているのだが車検が間に合わずサーキット試乗会になったという。
というわけでさっそくB7に試乗した。エクステリアはBMW7シリーズとほとんど変わらないが、「ALPINA」のロゴの入ったエアスカートの形状、そしてフロントのエアスプリッター、リアエンドの左右から覗いている各2本のマフラーカッターが控えめにアルピナのフラッグシップモデルB7であることを主張している。
一方、インテリアは目を見張るばかりのエレガントな雰囲気に包まれている。高品質なレザー、ウッド、そしてアルミを使い、最高のクラフトマンシップで仕上げられた室内はミネラルウォーターではなく、シャンパングラスの方が似合いそうだ。
エンジンは4.4L V8ツインターボで最高出力は608ps、最大トルクはわずか2000rpmで800Nmを発生する。これによる加速力は素晴らしく、0→100km/h加速は3.6秒だ。
驚きは最初の右コーナー直前で、およそ160km/hからの急制動でもまったく姿勢を崩さず、さらにそこからハンドルを切り込んでも車両重量2.1トンの巨艦はタイヤのスキール音さえ出さずにコーナーを駆け抜けていく。またストレートでは軽く200km/hを超え、4WD、そして4WSならではの優れた高速安定性とポテンシャルの高さを実感することができた。
あっという間のサーキット走行だったが、このB7は文字どおり世界最速のラグジュアリーリムジンであると同時に、一般道でのドライブでも別世界へいざなうアルピナマジックに包まれたクルマであることも実感できた。ちなみに新型B7はすでに日本でのデリバリーが開始されている。
B7に続いて試乗したのはアルピナB4SとB4Sカブリオレをベースにしたエディション99(99台のファイナルモデル)である。3L直6ツインターボエンジンは452ps/680NMを発生、0→100km/h加速は3.9秒(カブリオレは4.3秒)最高速はそれぞれ306km/hと303km/hである。
この2台は、その取り回しの良さからサーキットでもっとも楽しめるアルピナだった。もうすぐ新しい4シリーズが登場するが、現行モデルベースのアルピナは、まだまだ高いポテンシャルを持っていることを証明してくれた。
さらにXD3とXD4が搭載するディーゼルエンジンは極上の「アルピナマジック」が施され、この上なく美味しい料理を満喫させてくれるスペシャルな仕上がりになっていた。(文:木村好宏)
■BMWアルピナB7ロング アルラッド主要諸元
●全長×全幅×全高=5268×1902×1491mm
●ホイールベース=3210mm
●車両重量=2180kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●排気量=4394cc
●最高出力=608ps/5500-6500rpm
●最大トルク=800Nm/2000-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=2550万円
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