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【クルマの塗装にまつわる噂の真相】ボディを磨きすぎると塗装が磨り減るってホントなのか?

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【クルマの塗装にまつわる噂の真相】ボディを磨きすぎると塗装が磨り減るってホントなのか?

 洗車好きのオーナーがクルマを磨いていると、クルマ好きの先輩や仲間から「そんなに磨いてばかりいると、塗装が磨り減って下地が出てくるぞ!」と言われたことがあるかもしれない。

 昔のように塗装が痛んだクルマをあまりみかけなくなったが、実際にはどうなのだろうか? 

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 磨きすぎで塗装が擦り減るということはなくなったのだろうか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock

昔のクルマは磨きすぎると下地が出てきたことも

ひと昔前のクルマはメタリックカラーでも磨きすぎると塗装面の艶を失うクルマが多かった。当時はワックスが主流だった時代だ

「クルマを磨きすぎると塗装が擦り減る……」、今では都市伝説のように言われているが、実際、昔はあり得ない話ではなかった。それは昔のクルマの手入れの仕方と塗装の仕様が大きく影響していたからだ。

 1970年代までは洗車後に半練りワックスを塗って拭き取るというものが主流だった。これはワックスに研磨材が入っていてボディの小キズや汚れも落としながらワックスを掛けられるため、作業性がよかったのだ。

 そんなボディの手入れ法も、塗装とケミカル剤の進化で変わってきた。1980年代に入ると高級カーワックスが登場し、1990年代はさまざまな洗車用品が充実したり、洗車やコーティングを行なうプロの業者が都市部に増殖した。

 昔はソリッドカラーの場合、上層にクリアーを塗っていないクルマも多かったから、水アカを落とすためにコンパウンドなど研磨材が入ったケミカルで磨くとボディカラーがスポンジに移る、すなわち塗料の顔料が付着することも珍しくなかった。

 そのため磨き過ぎると塗装が磨り減って、グレーの下地塗装が透けてきてしまう、というトラブルも確かにあった。

 前述のように毎週末、半練りワックスを掛けていたようなオーナーのクルマでも、同様な症状が起こったこともあった。

 プロの磨き屋はそんなことにならないよう、ボディの角をマスキングテープで覆って、ポリッシャーを当てないように工夫していた。

 角は塗装時に重力の関係でどうしても塗膜が薄くなってしまうため、平面と同じように磨くと下地塗装が透けてきてしまう心配があるからだ。

 最近はクルマのスタイリングが丸みを帯びていることとポリッシャーのサイズや磨き方などを工夫することで、以前と比べ塗装面をマスキングする箇所は減る傾向にある。

最近の塗装は薄くて耐久性が高い仕様になっている

最近の軽自動車の塗装は、見た目の質感が驚くほど高くなっている

 燃費や衝突安全性、コストダウンのための軽量化と環境保全のための水性化もあって近年、クルマのボディの塗膜は薄くなっている。

 それでも表面のクリアー層は強靭なので、長期間ボディカラーのトップコート(中塗り)を守ってくれる。

 以前はソリッドカラーはクリアー層のない仕様もあったが、今では水性化もあってほとんどのクルマはクリアー層で表面が仕上げられている。

 クルマ趣味のなかでも洗車に凝っている人は少なくないが、毎週末の洗車時にワックスやコーティング剤の度に下地作りにコンパウンドで毎回磨くようなことなどなければ、10年以上は問題なく光沢を維持することができるハズだ。

 昔はクリアーの耐久性が低く、メタリック車の塗装が粉を吹いたように真っ白になってしまったこともあった。

 最近は20年くらい経過したクルマでは、保管状態が悪いクルマでクリア―が剥がれているクルマを見かけるが、塗装や錆の保証を付けているほど、自動車メーカーも耐久性には気を配っている。

色抜けや塗装が剥がれる信じられないトラブルもある

サービスキャンペーンによって再塗装が無償で行われたS660のカーニバルイエローII

 しかし、数少ない例外として、塗装に関する不具合でメーカーが無償で修理するサービスキャンペーン(またはリコール)を実施することもある。

 最近では2018年11月のホンダS660の「カーニバルイエローII」と2019年3月にトヨタがリコールを発表した「ホワイトパールクリスタルシャイン」だ。

 まず、S660のカーニバルイエローIIだが、顔料の選定が不適切なため早期に色抜けするという問題に対し、ホンダは特定部分の再塗装を2699台を対象にサービスキャンペーンという形で発表している。

 いっぽう、2019年3月にトヨタがリコール(無償修理)を発表したホワイトパールクリスタルシャインの塗装剥がれのトラブル。

 これはボディカラーがホワイトパールクリスタルシャインの車両において、塗膜を構成する中塗り塗料の濃度(顔料の量)が低く、中塗りの膜厚が薄くなってしまい、長期間にわたる紫外線や雨水の影響によって、下塗りの電着塗膜と中塗り塗膜の密着性が低下。洗車機など、外的負荷を加えることによって、塗膜が剥がれてしまった。

検索エンジン(yahoo!)で「パールホワイト 剥がれ」などと検索すると多くの事例が報告された。2019年3月にトヨタはリコールを届け出て、無償で再塗装することを発表

 まるでラッピングフィルムを施工したクルマからフィルムを剥がすように、キレイに剥がれてしまっている画像をネット上で見た方も多いことだろう。筆者もこの問題を聞いた時は、こんなことが今でもあるのかと信じられなかった。

■S660カーニバルイエローII 色抜けのリコール対象車種
平成27年3月11~平成28年8月1日に生産されたもの(2699台)
対策塗料で塗装したフロントフード、エンジンフード、フロント左右フェンダー、リア左右フェンダー、左右ドアパネルと交換し、左右サイドシルを対策塗料で再塗装。

■トヨタ車のホワイトパールクリスタルシャイン塗装剥がれのリコール対象車種
アルファード&ヴェルファイア(平成20年~平成26年12月)
ハイエース&レジアスエース(平成22年7月~平成26年12月)
カローラルミオン(平成23年~平成27年)
iQ(平成20年~平成26年)
オーリス(平成24~平成26年)
ウィッシュ(平成21年~平成26年)


 ボディパネルに塗装の剥がれが発生した場合、剥がれた部位を確認し無料修理対応に該当する場合は再塗装(無料)を行う。ボディパネルが対象で、外装部品(パンパー、ドアミラーなど)は対象外。
 対象車は従来の保証期間が新車を登録してから3年間か、無料修理対応期間として、新車を登録してから10年以内。ただし、2020年12月末までは10年超過車も保証する。

※年数は型式によって異なるため大まかなものとしています。詳細はトヨタディーラーへお問い合わせください

プロの磨き屋に聞いた「磨きすぎは塗装が擦り減るのか?」

 プロの磨き屋は細かな磨きキズを研ぎ落とし、鏡面のような塗装面に仕上げてくれるが、それでも必要最小限度の削り代で仕上げるし、毎月のようにコーティングに出すオーナーもいないため、定期的に施工してもらっていてもダメージは少なく、長期間に渡って塗装面を良い状態に保ってもらうことができる。

 そこで、都内のコーティング専門店のAさんに「ボディを磨きすぎると塗装が擦り減るのか」、その真相を聞いてみた。

「一般的に乗用車のボディは亜鉛メッキ鋼板に、下塗り、中塗り、上塗り、クリアー(透明)の4層の塗装が施されています。

 それぞれの膜厚は20~30μm(μmはマイクロメートル。1マイクロメートルは1000分の1mm)で、合計でもせいぜい100μm(0.1mm)です。

 普段、オーナーの方がクルマを磨いているのは、最上層のクリアー層(ソリッド色はないものもある)ですが、その厚さは約30μm(0.03mm)です。

 一見、非常に薄く感じますが、コンパウンドを用いて磨く場合でも 3μmも磨けば洗車キズ程度の細かなキズは消えて艶が復活します。

 ありがちなのは、水垢を落とす際、そこをゴシゴシと擦ってしまうと、擦った部分の塗装が薄くなり、さらに水垢がつきやすくなります。

 またスポンジで数十回以上、ゴシゴシ擦ってしまった場合も、ポリッシャーで磨く面による磨き作業と違い、点で塗膜を磨く作業になり、新車でも下地が出てくる可能性があります。

 洗車後の拭き傷や線傷、コンパウンドなどで付いた磨き傷がある場合、その傷を消そうとして集中的に同じ部分をコンパウンドで研磨するとクリアー層がなくなることがあるので無理は禁物です。

スポンジで円を描くように強く擦ると線のような傷が塗装面についてしまう。さらに磨くと悪循環、塗装面をさらに痛めることになる

 水垢取りやクリーナーは微粒子の研磨剤入りのものがあります。これらでゴシゴシと極端に集中して擦るとクリアー層がそこだけ薄くなります。

 クリアーを吹いていないソリッドカラーはなおさらです。 塗装自体はクリアーに比べると柔らかく弱いので、研磨後は何らかのコーティングを施工するのが鉄則です。

 長くなってしまいましたが、現代においても研磨剤入りの水垢取りやクリーナー、コンパウンドをスポンジなどで集中的に磨くと、塗装を擦り減らしてしまいます。

 過度な磨きすぎは塗装を擦り減らすのです。もし傷んだ塗塗装面を復活させたいなら、プロにお任せしたほうがいいと思います」。

プロの磨き屋さんが使うポリッシャーの間違った使い方でも塗装面を痛めてしまうという

 そのほか、塗装面を磨くための道具、ポリッシャーの間違った使い方でも塗装を痛めるという。

 ポリッシャーには、シングルアクションポリッシャーとギアアクションポリッシャー、ダブルアクションポリッシャーという種類があるが、扱いに不慣れな人が使うと逆に塗装を痛めてしまうことにつながる。

 ダブルアクションポリッシャーは、回転運動に上下運動を合わせ、複合回転してクルマを磨くが、それに対してシングルアクションポリッシャーは、単純に回転運動だけを行うポリッシャーだ。

 ギアアクションポリッシャーは、ダブルアクションポリッシャーとシングルアクションポリッシャーの中間的な存在で、回転トルクを持ちつつ振動偏芯回転で磨き目を拡散させる。

  研磨力は、シングルアクション>ギアアクション>ダブルアクションで、シングルアクションは研磨力はあるが、削りすぎて逆に塗装面を傷める可能性がある。

 もしポリッシャーを買ってボディを磨きたい方は、ダブルアクションタイプのポリッシャーがおススメだ。

ワックスとコーティングはどう違う?

 最後にワックスとコーティングはどう違うのか、改めて説明しよう。ボディの光沢を高め、塗装面を守ってくれるケミカルにワックスやコーティング剤などがある。

 この2つの違いをご存知だろうか? ワックスは文字通り蝋が主成分で、塗装面に塗れたような艶を出してくれる。

 さまざまな添加物により色を鮮やかに見せたり、耐久性を高めたような機能性を持たせたものもあるが、基本的にはワックスの被膜は柔らかいので、耐久性はそれほど高くはない。

 それに対してコーティング剤は文字通り塗装面をコーティングする被膜を形成するもので、塗装よりも硬い幕で塗装面を覆ってしまうという仕組みだ。

 ワックスよりも膜厚は薄いがガラス系の被膜を形成するなど、強固な被膜で長期間塗装面を守ってくれる。

 ただしコーティングといってもプロが使っているモノとカー用品店で売っているモノは、使い勝手も含めて仕様が異なる。

 プロ用は下地の仕上げなど作業の綿密ぶりもあって耐久性や光沢は、やはり素晴らしいものだ。

 それでも洗車用品のコーティング剤は洗車後にスプレーして拭き取るだけ、と作業性が高いものもあり(手軽な分、耐久性はそれなりになるようだが)、今や完全にボディの保護剤として主流になっている。

 ワックスとコーティングのどちらがよいのかと訊かれれば、手軽さと耐久性ではコーティングに軍配が上がる。

 ワックスは光沢にこだわるマニア向けのアイテムとなりつつある。もしコーティングの耐久性とワックスの光沢の両方を得たいと思ったら、両方を使えばいい。

 ただし、その場合はまず下地を仕上げてからコーティングを施し、被膜が充分に硬化した後でワックスをかけることだ。ワックスを定期的にかければコーティングも長持ちする。

 そもそも手入れが簡単で、光沢や撥水効果(ウォータースポット防止のため撥水しない親水タイプのコーティングもある)が長期間持続するのがコーティングのメリットだが、洗車マニアはとにかくボディの輝きのためにできる限りのことをしたくなるもの。それが趣味ならコーティングの上にワックスをかけるのもアリなのだ。

 ただし、コーティング剤やワックスの組み合せで問題がある場合もあり、施工業者によっては専用の撥水剤を定期的に使うなど、ワックスとの併用をお薦めしないところもある。充分に調べてから、作業しよう。

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