2019年3月にJAF(日本自動車連盟)は「タイヤのパンクによる出動件数が10年前に比べて約10万件増加した」と発表。
パンクに起因するトラブルは急増している。ただ、かなり空気圧が低下していても、ドライバーはそれに気づくことが難しく、パンクは「予防」が非常に重要となってくる。
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実際、パンクは釘などが刺さって偶発的に起きるだけでなく、メンテナンス不良による空気圧不足や徐々に空気が抜けるスローパンクチャーで発生するケースも多い。
こうしたトラブルの早期発見に大きな効果を持つのが、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)である。
それなら日本でも当然、義務化されているはず……と思いきや、実は日本ではTPMSが未だに義務化されていない。
なぜ海外に対して義務化が遅れているのか? 現状でTPMSが付いている国産車のリストとともに、TPMSの基礎と最新事情を今一度確認したい。
文:永田恵一
写真:Newspress Ltd、TOYOTA
欧米では「義務化」 タイヤ空気圧センサーの仕組みは?
写真はTPMSが装備されているレクサス LSのタイヤ空気圧警告表示。ひと目で空気圧の低下に気づくことができる
TPMSの必要性が注目され始めたのは、2000年に米国において、あるSUVで多発したタイヤの表面剥離が原因とされる横転事故がきっかけ(当該タイヤはメーカーにより自主回収された)。
以降、TPMSは米国で2007年9月に、欧州では2012年に、韓国では2013年に、中国でも2019年から新車への装着が義務化されている。
そのため日本で買える輸入車のほとんどには何らかのTPMSが装備されるが、日本では未だ義務化されていない。
ちなみに、ランフラットタイヤ装着車はパンクしても空気圧の低下が分かりにくいため、TPMSの装着が義務付けとなっている。
さて、TPMSの仕組みは、大きくわけて間接式と直接式の2つ。
◆間接式TPMS
「空気圧が大きく低下すると、タイヤは外径が小さくなり、回転数が増加する」ことに着目。タイヤの回転を検知するABSのセンサーを利用し、空気圧の低下をアナウンスするもの。
メリットは、新たなハードウェアを必要としないので低コストで済むこと。デメリットは直接式に比べると「空気圧が下がっていない場合でも警告が点くことがある」といった精度の低さなどが挙げられる。
(このことが原因で間接式のTPMSをなくしてしまった日本車もあるようだ)
◆直接式TPMS
ホイールに空気圧を測るセンサー&発信機、車両側に受信機&モニターを装着するもの。
メリットは、四輪の空気圧を測っているため各タイヤの空気圧が車内でわかること、高速域にも対応するなど精度が高いこと。
デメリットは、新たなハードウェアが必要になる点に加え、スタッドレスタイヤ用のホイールを別に用意する場合にもセンサー&発信機を必要とするなど、何かとコストが掛かるといったことが挙げられる。
TPMSが付いている国産車は?
日本では義務化されていないTPMSながらGT-Rなど一部の高性能車を中心にすでに標準装備となっているモデルもある
では、義務化されていない日本車でTPMSが付いている車はないのか?
以下が装着車の一覧。簡単に言えば400万円級以上の高額車、ランフラットタイヤを履くこともある高性能車に新車装着されるケースが多い。
■トヨタ
カムリ、クラウン(G・エクスクルーシブ)、センチュリー、ランドクルーザー(スペアタイヤを含めた計5本分のメーカーオプションで2万1600円)、ランドクルーザープラド(同上)、スープラ
■レクサス
IS、ES、GS、LS、RC、LC、RC F、GS F、UX、NX、RX、LX
(※エントリーモデルのCT以外、全車種に標準装備)
■日産
スカイライン、フーガ、シーマ、GT-R
■ホンダ
レジェンド、NSX
なぜ日本車はTPMSの義務化が遅れているのか?
TPMSのイメージ図。タイヤ内側にあるセンサーで空気圧を検知。空気圧の低下を未然に察知できるが、国産の大衆車にはまだ普及していない
理由としては、精度の高い「直接式」にしようとすると前述したコストの問題が大きいのだろう。
ただ、ランクルのTPMSが、空気圧の数値も表示される直接式で、スペアタイヤを含めた5本分で2万1600円という価格は案外安くも感じ、標準装備にして量産すれば劇的な低価格化も期待できそうにも感じる。
では、実際に義務化の動きはあるのか? 国土交通省自動車局技術政策課に問い合わせてみると、
「義務化の時期の見通しなどはなく、現在事故実態の検証や有識者の意見を集めながら検討中」とのこと。
TPMSの義務化については、ずいぶん前から話題に挙がっているだけに、そろそろ何らかの動きを期待したいところだ。
◆ ◆ ◆
TPMSは、タイヤに起因する事故の防止はもちろん、空気圧低下による燃費の悪化やタイヤの偏摩耗を防ぐためにも有効な装備である。
最近は空気を入れるバルブキャップ(ゴム製のキャップ)のところにセンサー&発信機を付け、車内のモニターはソーラーとUSBで充電できるというTPMSも、インターネット通販なら5000円程度で販売されている。そのため、興味がある人には装着を勧めたい。
また、タイヤの空気圧は、安全に大きく関わるものだけに、日常点検やTPMSが異常を表示した際の確認のためにもクルマにはエアゲージを常備しておきたいところだ。
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