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【豪雨による視界不良 道路の冠水 土砂…】 自然災害 クルマで遭遇したらどうする??

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【豪雨による視界不良 道路の冠水 土砂…】 自然災害 クルマで遭遇したらどうする??

 トップの写真は、2016年の熊本地震が起こった4日後に撮影されたものだという。

 日本は平成の30年間にいろいろな災害に見舞われた。今も首都圏直下型地震、南海トラフ巨大地震への備えが呼びかけられている。クルマを扱う人間にとっては、運転中にそんな事態に遭遇したらどうすればいいのかということ。

【利点はどこに? 円形に戻した車も??】 異形ステアリングはなぜ定着しないのか?

 東日本大震災時、クロカンで被災地に入り活動を行った経験を持つプロドライバー 卜部敏治氏に語ってもらった。

卜部 敏治…元ラリードライバー、モータージャーナリスト。NPO Emergency Management Academy(災害危機管理能力育成活動)、NPO Earth Works Society(海外僻地助成活動)理事でもある。

※本稿は2019年5月のものです
文:卜部 敏治/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月10日号

■クルマの自然災害に対する安全性向上は少ない

 多くのドライバーは運転中に自然災害に遭遇してもクルマの中にいるから危険は及ばないと思っている。

 鉄とガラスに囲まれた箱の中にいるという安心感が、大丈夫だと思い込む大きな理由だ。

 ミニバンを含め、クルマの重量は1.5トン前後である。ラグジュアリーSUVになると車重は2トン以上にもなる。

 軽自動車でも800kg前後である。このような鉄の塊が自然の影響を受けにくいと思い込むのは当然ともいえる。

左端が卜部さん。東日本大震災直後から仲間に声をかけ燃料、衣類、日用品を集め、21日に3台のクロカンで岩手県大槌町吉里吉里地区に届けた。1週間後には再び物資を搬入。2011年は9回現地入りし、4月から夏にかけては再びウィンチ付きクロカンでがれき撤去、半壊家屋撤去、被災家屋の片づけ、炊き出しを実施したという。

 しかし、クルマを支えているのは4本のタイヤである。接地面はタイヤ1本当たりハガキ1枚分しかない。

 メーカーの努力によりアクティブセーフティなど安全対策は大幅に進化している。だが、自然災害に対する安全性向上は少ない。自動車は自然災害に対し、不安定な乗り物であるという認識を持って運転すべきだ。

 自然環境は大きく変化している。あらゆる自然災害が大規模化しており、強力になっている。雨、風など自然の威力を侮ってはならない。

油断ならないゲリラ豪雨の季節も近づいてきた

■視界不良に陥ったらまずハザードを

 豪雨に遭遇した時はどうするか。熱帯地方でスコールに遭遇したことがあるが、ワイパーを高速モードにしても視界を確保できない。豪雨に遭遇した時は、路肩に寄せ停車するのが最も安全な対策だ。

 高速道路で豪雨に遭遇した時は、スピードを落とし、ライトをハイビームに点灯しリアフォグランプも点灯する。

 点灯は視界確保もあるが、重要なことは周囲に自車の存在を知らせることにある。ハザードランプも点灯すべきだ。そして、速やかにサービスエリアに入り豪雨をやり過ごす。

なにはともあれ、すばやい判断と行動が必要だ。

 高速道路で豪雨に遭遇してもスピードを落とさず、高速走行するとハイドロプレーニング現象が発生することがあり、コントロールを失う危険性もある。この現象が起き慌ててブレーキを踏んでもABS効果は期待できない。

 豪雨通過後も安心してはならない。路面には大きな水たまりが残る。怖いのは対向車が跳ね上げる水しぶきだ。まともにかぶると数秒間、視界を失うことになる。

 視界を失うとブレーキを踏むドライバーが多いが、それは危険である。追突されることもある。水しぶきを被った時は、ステアリングをまっすぐ保持し、アクセルを少し緩め視界回復を待つ。

 ゲリラ豪雨は雲を見ることである程度判断できる。黒っぽい雲を見たら豪雨が接近中と判断すべきだ。また、匂いでも感じ取ることは可能。言葉では表現しにくいが、湿った匂いといってよいだろう。

 肌でも感じることができる。生暖かい風を感じた時は、豪雨接近中と判断すべきだ。

■冠水路を通過可能な水深はタイヤ半分まで、ドアの3分の1まで浸かると開閉が困難に

 アンダーパス(編集部註:立体交差式の地下道)に入り、冠水に突っ込んだ時はどうするか。冠水の深さにもよるが、早く抜けようと焦ってアクセルを踏み込むのは危険だ。

 跳ね上げた水がエンジンに入りエンストを起こす危険性がある。コンピューターボックスなど電装系に浸入しエンストを起こすこともある。

 アクセルを一定に保ち、水を跳ねないようにゆっくりと進む。水を押しのけるという気持ちでアクセルをコントロールすることが重要だ。

 ただし、冠水路を通過可能な水深はタイヤ半分以下である。深いと判断した時は、バックすべきだ。

どんなクルマも冠水すれば鉄のカタマリ!?

 アンダーパスは夜間が危険。暗いため路面と水面の見分けがつかず、そのまま侵入してしまうことがある。

 行政はアンダーパスの路面をカラーリングし、水溜まりのあるなしを識別できるようにすべきだ。

 水が車内に侵入してきた時は、車外に脱出するしかない。注意が必要なのは、ドアの三分の一まで水に浸かると男性でも開閉が難しくなることだ。エンストすると電動ウィンドウも開閉できなくなる。

 このような事態に備え、緊急脱出用ハンマーを運転席の傍に常備しておく。ハンマーにはカッターもついており、シートベルトを切ることもできる。

緊急脱出用のハンマーはこんな感じのものだ。Amazonでなら1000円~2000円程度で売っている

 脱出用ハンマーがない場合、窓を叩き割る道具として身近にあるのはシートベルトの留め金具だ。窓を割る時は窓ガラスの中心部よりも四隅のほうが割りやすいことも知っておこう。

■大雨時、山道で小石が流れてくるのをみたら

 山道で大雨に遭遇すると道が雨水の通路となり川となることが多い。

 雨水と一緒に小石が流れてくるのを見たら、直ちに退避すべきだ。退避中に水量が増えるようであれば、道路より高い横道に入り流されることを防ぐ。

 東日本大震災直後、災害救援許可証を取得し東北道を走行した。

 基本的に走行可能だったが、路面の亀裂、うねり、路肩崩落などが見受けられた。また、小さな橋は隆起し段差が生じていた。

 高速道路走行中に大地震に遭遇した時は、まずは路肩に停車し様子をうかがうことが重要だ。トンネルは地震に対して強いといわれている。近くにトンネルがあればトンネルに入り様子をうかがう。

クルマは便利なものだが、道路のどこか一箇所にでも異常ができてしまえば、使うことが困難になってしまう

■高速道路での横風。ミニバンと軽は注意すべし

 高速道路で横風を受けたらどうするか。高速走行中、ドライバーは一度ならず、横風を受け、挙動が不安定になった経験があるはずだ。不慣れなドライバーは思わずブレーキを踏んでしまう。だが、ブレーキングは危険。そのまま横転することがある。

 風の影響を受けやすいのは背の高いミニバンとボディが軽い軽自動車だ。

 風で流されそうになった時は、風を受けた側に軽くハンドルを切ると流されるのを防ぐことができる。いわゆる逆ハンと呼ぶ操作である。

 横風の影響は駆動方式によって違いがある。2WDよりも前後輪に駆動力を伝達する4WDは風の影響を受けにくい。強風警報が発令している時には、4WDで走行することを薦める。

■今後は大型の竜巻が発生しうることも想定に

 国内で竜巻に遭遇したことはない。アメリカ中部で竜巻を見たことはある。かなり距離は離れていたが、物を巻き上げながら進む竜巻には恐ろしさを感じる。

 竜巻の進行方向は判断しにくいので厄介である。竜巻は市街地あるいは山間部では発生しにくい。平坦な地域で発生する。このような場所では避難する場所は少ない。

 竜巻が近づいてきている時は、速やかにUターンし逃げる。間に合わない場合は、橋の下など頑丈な構築物に避難する。

 国内で発生する竜巻でクルマを巻き上げたという例はないが、今後、大型竜巻が発生することも想定すべきだ。

 竜巻の直撃を受けなくても怖いのは、巻き上げられた障害物の飛散である。遠方で竜巻を見た時は、車外に出るのは危険である。

日本でも今後発生するかもしれない大竜巻

■山火事に遭遇したら下に逃げるのが基本

 山火事に遭遇したことはないが、野火に遭遇したことがある。煙で視界がまったくなくなり、恐怖心に包まれる。止まると火に囲まれる危険性があることから慎重に運転し煙から脱出したことがある。

 山火事は基本的に上、山頂に向かって広がる。山火事に遭遇した時は、山から下る方向に逃げるのが基本である。

 山火事が発生すると火の影響で風が強くなる。匂いも広い範囲に広がる。焦げ臭い匂いを感じたら匂いから遠ざかる。

 山道で突然、山が噴火したらどうするか。遠ざかるしか方法はない。噴火の危険性のある山はシェルターを準備している。

 シェルターまで走り、クルマを捨てシェルターに避難するのが最良の方法だ。クルマで逃げ続けると火山弾の直撃を受ける危険性がある。

*   *   *

 日本は災害大国だ。運転中でなくても災害に遭遇する危険性はあると覚悟しておくべきだ。横断歩道で跳ね飛ばされる時代でもある。常に周囲に目を配り、すぐに逃げることを心がけることが重要だ。逃げるが勝ち精神が生き残る手段ともいえる。


【番外コラム】 災害に巻き込まれて車中泊をしなければならなくなった! 何を用意しておけばいい?

 ダンボール箱、プラスチックバッグ、ペットボトルを「災害用車載3種の神器」と呼ぶ。

 段ボールは平時には折りたたみ荷室下敷き用とするが、非常時には後席足元に置きベッド代用とする。シート高に合う段ボールを揃える。

 窓内側に貼ると目隠しおよび防寒になる。外側に貼ると雪・霜よけになる。毛布代わりにもなる。段ボールにプラスチックバッグを広げると水タンクあるいはトイレとして使える。

 ペットボトルはカットすると食器、骨折時の添え木、キャップに穴を数か所あけるとウォシュレットになる。

 3種の神器に加えトイレ時の目隠しになる大型傘、両手が自由に使えるヘッドライト、マッチ、ガムテープが必需品。

必需品!

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