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業界ニュース 2019.6.9

ポルシェ唯一の日本人デザイナーに訊く──911をデザインすることの価値と難しさ

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5月28日、ポルシェジャパンは東京・渋谷のTRUNK BY SHOTO GALLERYで新型ポルシェ911の発表会を行った。1963年に初代が誕生してから半世紀以上を経て、8世代目となる。型式は先代の991を承けて、タイプ992と呼ばれる。

日本市場向けに発表されたのは、ベースモデルの「カレラ」ではなく、ハイパワー版の「カレラS」の4モデル(カレラS/カレラ4S/カレラSカブリオレ/カレラ4Sカブリオレ)で右ハンドル、PDKのみの設定。左ハンドル仕様や、MTモデルが用意されるのかは現段階ではあきらかになっていない。

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パワートレインは、3ℓ水平対向6気筒ツインターボエンジンとトランスミッションには911では初採用となる8速PDKを組み合わせる。エンジンは、ターボチャージャーを大型化して過給圧を高めるなどし、先代比で30ps/30Nmの向上。最高出力450ps、最大トルク530Nmを発揮する。

ボディサイズは、全長4519mm、全幅1852mm、全高1300mm、ホイールベース2450mmと、先代比で全長14mm、全幅17mmそれぞれ拡大し、全高は5mm高く、ホイールベースは同寸。多少大きくなったとはいうものの、全長約4.5m、全幅約1.85mというサイズは、現代のスポーツカーとしては、コンパクトな部類に入る。アルミなどを多用して軽量化を図り、ボディ単体重量を先代より12kg軽い240kgとした。ボディの曲げ剛性とねじれ剛性はいずれも5%向上。車両重量は991カレラSの1470kg(7速PDK)に対し、1515kgとなっている。

日本での発表に際し、ポルシェAGに在籍する唯一の日本人デザイナー、山下周一氏が来日しておりインタビューする機会を得た。そこで、“911をデザインすること”について話を聞いた。

山下氏は2006年にポルシェ入社し、これまでに「911スピードスター(タイプ997)」や、「911 GT3(タイプ991)」、「911 GT3 RS(タイプ991)」、最近ではパナメーラスポーツツーリスモや、マカンのフェイスリフトモデルのエクステリアデザインを手がけてきた。

ポルシェにおいてデザインは、エクステリアであれ、インテリアであれ基本的にすべてコンペティションによって決定されるという。大まかな流れをいえば、プロジェクト毎にデザイナーたちは個々にスケッチを描き、レビューで選ばれたいくつかの案がスケールモデルを製作する段階へと移行。さらにふるいにかけられ、残った2~3案の原寸大モデルをつくり、最終選考が行われる。そして最後に選ばれしものが、晴れてそのモデルのメインデザイナーとなる。




ポルシェのデザイナーにとって、911をデザインするということはどのような意味をもつのだろうか?

「それは夢ですよね。第何世代の911を手がけたといえば、世界中の人にわかってもらえるわけですから」

ベースモデルを前提とした、ターボやGT系などの派生モデルを手がけるチャンスはモデルライフ期間において幾度かある。しかし、911のベースモデルのエクステリアデザイナーとなった人物は1963年から8世代を経て、わずか5名しか存在しないという。タイプ996以降、911はおよそ6年~7年のサイクルでモデルチェンジしており、そのチャンスはオリンピックよりも少ない。

実は、先代991のデザイン選考時、山下氏のプロポーザルは最終の2案にまで残っていたという。原寸大モデルにまでなったが、市販化されることはなかった。

「残念ながら銀メダルで、金メダルはとれませんでした。私のプロポーザルは、革新という言葉が適切かどうかはわかりませんが、選ばれたものよりもう少しアドバンスしたものでした。うちの上司がよく言うんです。デザインはキャッチボールをするようなものだと。ボールをどの程度遠くに投げればいいのかを見極めないといけない。近すぎてもだめだし、遠すぎてもだめ。そういった意味で私のボールは少し遠くに飛びすぎた、自分の中ではそう解釈しています」

山下氏が上司と呼ぶのが、2004年よりポルシェのデザイン部長を務め、2015年からは、フォルクスワーゲングループのデザイン統括責任者も兼務するミハエル・マウアー氏。そしてマウアー氏自身も911を手がけたデザイナーのひとりだ。以前、マウアー氏に911をデザインすることについて尋ねると、冷静にこんな答えがかえってきた。

「モデルごとの進化の速度はブランドの立ち位置によって変わる。デザイナーとしての役割というのは、プロフェッショナルとしてアドバンスし改良することであり、それは911であっても変わらない。現世代から次世代、そして次次世代へ、われわれがデザイナーとしてやってきたことはずっと変わらないとも言える。ただし、これほどまでに長い歴史をもつ911のような、そしてポルシェブランドの核となるモデルを手がけることは、やはり通常やっていることとは違う、と認めざるをえないね」

ボンネットよりも高い位置に稜線のあるフェンダー、特徴的なサイドウインドウグラフィック、大きく張り出したリアフェンダーなど、911を911たらしめる要素というものはポルシェのDNAとしてデザイナーの共通言語となっている。思えばエンジンが空冷から水冷になったタイプ996の時代に、ポルシェは大遠投を試みた。

あえて丸いヘッドライトをやめるという挑戦が(インテリアのセンターコンソールもこの時代に縦基調になった)、その後の911のDNAをより強固なものとしたと言えるかもしれない。一方でデザイナーはそれを呪縛と感じているのではないか。どのように捉えているのか、山下氏に問いかけた。

「私は四角いヘッドライトの911をデザインしたいとは思わないですね(笑)。それが呪縛だとも思わないし、あくまでポルシェのデザインDNAは動かさない。その枠のなかで自分のクリエイティビティを活かして、新しいプロポーザルや解決方法をつくっていくことのほうが個人的には好きだし、楽しい」

新型(タイプ992)のエクステリアデザインは、エクステリアチームのチームリーダーをやっているトーマス・シュトッカ氏のデザインが採用されたものという。

「最大のみどころはリアの先進性でしょう。真横一文字に継ぎ目のないテールランプをデザインしている。タイプ930をテーマに現代風に解釈して、最新の技術でかたちづくられている。そういう意味で今回のベストではないかなと思います」と山下氏は評した。

偶然にも、インテリアも過去のモデルを範としたもので、初代911をテーマに横基調のものになった。新型911のデザインテーマは「伝統と革新の融合」というが、歴史を積み重ねてきたからこそ可能な“温故知新”といえるだろう。

先出のデザイン部長のマウアー氏は、山下氏のことをこんなふうに話していた。

「ポルシェといえども世界で販売するグローバルなブランドであり、それを踏まえればデザインチーム自体もグローバルであるべきだと考える。だからチームには日本人のデザイナーがいてほしくて、それでシューイチを招き入れた。彼は勤勉で、発想豊かで、いいアイデア提供してくれる。しかもそれは他とは違う独自の視点をもったものだ」

およそ7年後に9世代目の911(タイプ993はすでに存在するため、型式も気になるところ)が発表されると仮定して、ぜひ山下氏のどストライクな投球、すなわち日本人デザイナーによるポルシェ911の誕生に期待したい。

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(GQ JAPAN 藤野太一)

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