「人テク」で見つけた、ちょっと先のハンドリングにつながるデバイスたち

■NTNのステアリング補助機能付きハブとSHOWAのステア・バイ・ワイヤ

2019年5月22日～24日の期間にかけて、今年も「人とくるまのテクノロジー展」がパシフィコ横浜にて開催された。主催は公益社団法人 自動車技術会、エンジニアのための自動車技術展として、日本最大の規模で行なわれている。出展は600社を超え、一日では見て回ることは到底不可能な展示会だが、多くのサプライヤーが売り込みをかけて自信作を並べている展示会だけに、未来につながる技術を見ることができる貴重な機会でもある。

さて、その広い会場を歩いていて、目に留まったのはNTNが昨年に引き続き参考出品していた「sHUB」だ。ハブベアリングの大手である同社が、その付加価値商品として提案するsHUBはステアリング補助機能付ハブベアリングと表現できるもの。タイヤホイールを支えるナックル部分に電動アクチュエータを内蔵させ、ハブだけでも最大3.5度の操舵を可能するというものだ。展示は、某FRスポーツカーのフロント回りを利用したものだったが、このsHUBを使うことで、ステアリング操作に対して隠し味的に操舵アシストをすることができるという。

sHUBは各輪で独立制御が可能なので、外輪だけ切り増してやることで、ステアリング操作に対して、さらに曲がり込むような挙動を作ることも可能になる。また横滑り防止装置と協調制御することでスリッピーな路面でのスピンを防ぎ、安定させることも期待できる。さらに、このsHUBはFWD車の後輪に使うことも想定されている。走行シーンに合わせてトーインを調整することで、直進安定性と曲がりやすさにつながる四輪操舵的な使い方もできるのだ。

NTNのsHUBは既存システムにプラスすることができるというのもセールスポイントだが、ステアリング操作に対して機械の側で操舵角が変わってしまうというのは違和感を覚えるかもいれないと感じる。こうしたシステムを活かすには電気信号によって操舵をコントロールするバイワイヤ化されたステアリングシステムと組み合わせたくなる。

その視点から会場を歩いていて見つけたのがシャシー系サプライヤーの大手、SHOWAの「SBWS（ステア・バイ・ワイヤシステム）」だ。ステアリング操作からドライバーに情報を伝える「反力アクチュエータ」と、冗長性を確保してデュアルモーター・デュアルピニオンとした「操舵アクチュエータ」によって構成されている。

ステアリングホイール自体は単なる入力装置となるので、従来のロック・トゥ・ロックは物理的に存在しないが、ロックピンによる任意角ストッパーを使うことで、ステアリングを目いっぱい操作していることをドライバーに伝える工夫が組み込まれているのが特徴。またステアリングホイールからの反力によって路面とタイヤのグリップ感を伝える工夫もなされているという。

さらに、速度に応じてステアリング操作量とタイヤ切れ角を調節するVGS（可変ギアレシオ）的な制御も可能だ。実際、シミュレーターにて試してみたが、通常であれば手を持ちかえて大きく曲がる路地のようなシチュエーションでもステアリングを90度くらい操作するだけで曲がれてしまった。さらに違和感もほとんどなく、ここにリアルなフィードバック情報が加われば、バイワイヤ化のネガはなくなるだろうとも予想できる。その制御を利用すれば四輪操舵をナチュラルに感じさせることもできるだろう。

ここで紹介した2つのデバイスはそれぞれ別物であって無関係だが、新技術の組み合わせを想像してみるのも「人とくるまのテクノロジー展」の楽しみ方のひとつではないだろうか。

文・写真：山本晋也（自動車コミュニケータ・コラムニスト）