内閣府所管のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のなかにある、革新的燃焼技術の研究結果により、ガソリンエンジンの正味熱効率がついに50%を超えた。これは産産学学連携によって実現したもので、日本の自動車業界にとって初の事例となる。3月15日発売のモーターファン・イラストレーテッド(以下、MFi) Vol.150では、熱効率50%を達成したその正体を取材し、「ガソリンエンジンは電気に勝つのか!?」というテーマに沿って特集を組んだ。
近年、自動車のスペックとしても語られるようになってきた「熱効率」。もともと学術的な意味合いが強く、言葉は聞いたことがあるけど、よくわからないという人も多いのではないだろうか。そもそも熱効率という言葉を我々が耳にするようになったのは、ここ数年の話。CVTや多段トランスミッションが登場してからとも言われており、某自動車メーカーの元エンジニアも昔は熱効率なんて気にしてなかったというくらいだ。
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熱効率とは、簡単に言うと、投入したエネルギー(燃料)のうちどれくらいを仕事(動力)として取り出せた(変換)かの割合だ。たとえば、熱効率30%というガソリン車があったとすると、ガソリンが持つエネルギーの30%を動力として取り出せたことを意味する。市販車に搭載されているガソリンエンジンの熱効率は、最高で40%程度。残り60%は動力にはならずに熱や音として捨てられた、ということだ。
燃料が持つエネルギーがどのようなところに奪われているのか。その損失はエンジンによって異なるが排気損失と冷却損失がもっとも大きい。ここを改善できればガソリンエンジンの熱効率は向上するとされている。それは、エンジンが生み出す仕事量の源となる燃焼で効率を稼ぐよりも、燃焼で生まれたエネルギーが利用できるカタチとして出力されるまでの間に生じるムダ(損失)を省くほうが手っ取り早いから(ただし、ガソリンエンジンの熱効率がそのまま自動車全体のエネルギー効率ではない)。
冒頭のSIP革新的時燃焼技術の研究において、各損失を低減することで、ガソリンエンジンは51.5%という熱効率を達成した。その主役ともいうべき革新的な技術が、「スーパーリーンバーン(=超希薄燃焼)」と名付けられた燃焼技術だ。大前提は2000K(ケルビン)という低温で燃焼させること。低温燃焼させれば冷却損失が少ないうえ、NOx(窒素酸化物)が出ない。ただし、それまでの研究で、ストイキオメトリック(化学量論比)の2600Kという燃焼温度より低い2000Kとなる空気過剰λ(ラムダ)=2.0の超希薄燃焼なら実現の可能性があることはわかっていたものの、「火炎が失火しやすく」「伝播しにくい」という、乗り越えなければいけない大きな壁があったわけだ。
MFi vol.150では、ガソリンを半分以下に減らした薄い混合気を使って動かす、スーパーリーンバーンエンジンは、「火炎が失火しやすく」「伝播しにくい」といった課題を、どういう技術を用いて解決し、熱効率50%超えを達成したのかを詳しく紹介する。
内燃機関エンジンはもう古い。これからは電気だ──。CO2(二酸化炭素)排出削減という地球規模での課題を受け、日欧米中の4大市場を中心に自動車電動化への動きが加速されているいっぽうで、計測やシミュレーションといった周辺技術の進歩により、内燃機関の研究がまったく新しい次元に突入している。しかも、スーパーリーンバーンで導きだされた技術のいくつかは、5年後には市販車に投入することを目標にしている。いま世界中のガソリンエンジンが目指している、スーパーリーンバーン技術をMFi vol.150でチェックしていただきたい。
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