現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【モンスターマシンに昂ぶる 015】護衛艦「かが」と空母「加賀」のパワープラント

ここから本文です

【モンスターマシンに昂ぶる 015】護衛艦「かが」と空母「加賀」のパワープラント

掲載 更新 5
【モンスターマシンに昂ぶる 015】護衛艦「かが」と空母「加賀」のパワープラント

日本はもとより世界の陸・海・空を駆けめぐる、さまざまな乗り物のスゴいメカニズムを紹介してきた「モンスターマシンに昂ぶる」。復刻版の第15回は、速度が重視される軍艦の新旧パワープラントに迫ってみよう。(今回の記事は、2017年12月当時の内容です)

最大の護衛艦「かが」の先代は第二次大戦初期 最大級の空母「加賀」だった!
船舶のパワープラント(ユニットと呼ぶにはあまりに巨大で複雑なので)においては、高出力重視という点では何といっても軍艦のものが注目されるだろう。そこで今回は最新・最大の護衛艦「かが」と、旧日本海軍の代表的大型航空母艦「加賀」を比較しながら、モンスター機関を紹介しよう。

【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?

2016年に竣工した「かが」は、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦の2番艦であるが、その先代は旧日本海軍の正規空母「加賀」として有名だ。しかしこの加賀、建造計画時は戦艦だったものの、ワシントン海軍軍縮条約により空母への計画変更をせざるをえなかった。初期は三段式飛行甲板や、高温の排煙処理=煙突などに試行錯誤が見られた。

艦載機の急速な大型化に伴い、丸1年かけた近代化大改装が行われ1935年に完了。第二次大戦初期に海軍最大の正規空母として活躍したが、1942年のミッドウェー海戦で撃沈される。艦名が同じ両者には80年以上もの時代差があるが、軍艦の変遷を見る上で比較しやすい点が多いので注目してみたい。

かがと加賀は下記のとおり、艦型とサイズがよく似ている。排水量の大きな違いは、もともと加賀が装甲の分厚い戦艦だったからで、大戦中に大和型戦艦の3番艦をベースにした空母「信濃」が登場するまで最大の空母だった。ちなみに空母の同期として有名な「赤城」は天城型巡洋戦艦からの改造なので、似て非なる艦だった。

■護衛艦「かが」 主要諸元
●基準排水量:1万9500トン
●満載排水量:2万6000トン
●全長:248.0m
●最大幅:38.0m
●船体の深さ:23.5m
●最大速力:公称30ノット

■航空母艦「加賀」 主要諸元
●基準排水量:3万8200トン
●総排水量:4万2541トン
●最大長:248.6m
●最大幅:32.5m
●海面より飛行甲板:21.7m
●最大速力:約28.3ノット
※加賀の諸元については近代改装後だが、諸説ある。

加賀が竣工した時代、すでにボイラーの蒸気をシリンダーに送ってピストンを動かすレシプロ機関はすでに過去のもので、軍艦のエンジンは大出力の蒸気タービン式に移行していた。蒸気タービンは、石炭や重油ボイラーの蒸気を利用するが、旧海軍のボイラー(缶)は英国のヤーロー社のものを国産化した、ロ号艦本式缶が最も多く製造された。主力艦の大半は、同ボイラーを必要数(戦艦大和は12缶)搭載する合理化が図られていた。ボイラーが発生する高圧蒸気をタービン翼/ブレードに吹き付けシャフトを回転させるという基本原理は、現代のガスタービンエンジンまで継承されている。

空母は、艦載機を短い飛行甲板から発艦させる使命を持つ。第二次大戦初期は、艦載機を瞬時に加速させるカタパルトが実用化されておらず、おまけにプロペラ機も非力だったため、空母自体を高速前進させて発艦速度を稼いでいた。そのため、空母に求められた速力は30ノット超(約56km/h)だったため、その多くは8缶・4タービン・4軸推進で34ノット前後を誇る俊足だったのだ。ところが戦艦ベースの加賀は約28ノットが限界。それでも広大な飛行甲板と幅広の艦型は、安定性と信頼感があり人気があったという。

護衛艦「かが」はベストセラーのガスタービンを搭載している
奇しくもほぼ同じサイズの最新護衛艦/ヘリ空母のかがは、どのような推進機関なのだろう。現代の護衛艦の装甲は大型艦でも、旧海軍の駆逐艦程度しかない。ミサイル戦が主体の現代において、重厚な装甲を施しても致命的な被害は免れないため、装甲は最小限だ。また空からの攻撃に対して、多少の最高速力アップは意味を持たないという理由から、大半の護衛艦は公称30ノットとなっている。軽量で最高速力も無理しないとなると、俊敏な運動性能が重視されるようになった。

一方、多様なミサイル兵装、ヘリコプターや輸送物資を収める艦内空間が重要になってきた。かがの格納庫は、空母の加賀よりはるかに広大な平面で、3層ぶち抜きになっている。これは艦載機を整備するだけでなく、災害時などには救援物資等を少しでも多く搭載するためでもある。

こうした空間の床下に、コンパクトなLM2500ガスタービンエンジン4基がおさまっている。ガスタービンは圧縮・燃焼・膨張・排気が同時にひとつのユニット内で行われるため、小型軽量・超高出力・低騒音が特長だ。アメリカのGEが開発したLM2500ガスタービンエンジンは特殊な軍用ではない。なんと、元はマクダネルダグラス DC-10やMD-11、エアバス A300~330、ボーイング 747~767等の旅客機で定番のGE・CF6ターボファンエンジンの派生型だ。1990年代から世界中の多種多様な艦船に搭載され、船舶ガスタービンエンジンとしても定番となった。

護衛艦では初のイージスシステム搭載艦「こんごう」から採用され(IHI製)、主力艦の大半が2または4基を必要に応じ搭載している。かがは2基1組で減速機を介した直接機械駆動2軸推進だが、最新鋭の護衛艦「あさひ」では巡行時は同タービンを発電機とした電気推進。高速時は機械駆動とした、高燃費のハイブリッド式になっている。

80年もの年月を隔てた両艦だが、その大きさと機関の方式に意外と大差ないのが面白い。(文 & Photo CG:MazKen)

[ アルバム : モンスターマシン 015 「かが」と「加賀」 はオリジナルサイトでご覧ください ]

こんな記事も読まれています

日産R35「GT-R」にコスパに優れた本格派ブレーキローターが誕生! 12ミリと14ミリのハブボルトに対応したスグレモノでした
日産R35「GT-R」にコスパに優れた本格派ブレーキローターが誕生! 12ミリと14ミリのハブボルトに対応したスグレモノでした
Auto Messe Web
ホンダ『イエ GTコンセプト』が初公開、4ドアクーぺEVで中国トレンドに真っ向勝負…北京モーターショー2024
ホンダ『イエ GTコンセプト』が初公開、4ドアクーぺEVで中国トレンドに真っ向勝負…北京モーターショー2024
レスポンス
バイクニュース今週のダイジェスト(4/22~26)
バイクニュース今週のダイジェスト(4/22~26)
バイクブロス
予想が外れるマクラーレン、ピアストリも“浮き沈みのワケ”解明が急務と指摘。タイヤへの負荷が影響か?
予想が外れるマクラーレン、ピアストリも“浮き沈みのワケ”解明が急務と指摘。タイヤへの負荷が影響か?
motorsport.com 日本版
一度は乗ってみたい! サイドカーは、通常のバイクにつけることができる?
一度は乗ってみたい! サイドカーは、通常のバイクにつけることができる?
バイクのニュース
なぜ免許とマイナカード「24年度末」に一体化? 紛失時はどうなる? 一体化でどんな影響ある?
なぜ免許とマイナカード「24年度末」に一体化? 紛失時はどうなる? 一体化でどんな影響ある?
くるまのニュース
ボルボ XC40、豪華仕様の限定車「プラス B3 セレクション」発売
ボルボ XC40、豪華仕様の限定車「プラス B3 セレクション」発売
レスポンス
「出遅れ」「巻き返し」「反転攻勢」EVめぐる話題が目白押し【新聞ウオッチ】
「出遅れ」「巻き返し」「反転攻勢」EVめぐる話題が目白押し【新聞ウオッチ】
レスポンス
日本ミシュランタイヤが「ジャパントラックショー2024」にブースを出展! サステナブル素材を使用したタイヤなどを展示
日本ミシュランタイヤが「ジャパントラックショー2024」にブースを出展! サステナブル素材を使用したタイヤなどを展示
くるまのニュース
マツダ、電動SUVをサプライズ公開、コンセプトモデル『創 ARATA』とは…北京モーターショー2023
マツダ、電動SUVをサプライズ公開、コンセプトモデル『創 ARATA』とは…北京モーターショー2023
レスポンス
スズキのコンパクトSUV「エスクード」国内販売が終了 新たな「グローバルSUV」投入に期待!
スズキのコンパクトSUV「エスクード」国内販売が終了 新たな「グローバルSUV」投入に期待!
くるまのニュース
スタイリッシュなスタイルと折りたたみ機構を採用 電動アシスト自転車「Refna WINDY」発売
スタイリッシュなスタイルと折りたたみ機構を採用 電動アシスト自転車「Refna WINDY」発売
バイクのニュース
アルファロメオ ジュリア/ステルヴィオ、限定車「ヴェローチェ スペリオーレ」発売
アルファロメオ ジュリア/ステルヴィオ、限定車「ヴェローチェ スペリオーレ」発売
レスポンス
GWにホンダ青山本社で「モーターサイクルショー」開催、新型車をじっくり見られる機会!
GWにホンダ青山本社で「モーターサイクルショー」開催、新型車をじっくり見られる機会!
モーサイ
ホンダN-VANがマイナーチェンジ。特別仕様車FUN「STYLE+ NATURE」を同時発売
ホンダN-VANがマイナーチェンジ。特別仕様車FUN「STYLE+ NATURE」を同時発売
カー・アンド・ドライバー
ランボルギーニの電動化第二弾は「ウルス」!フェイスリフトでPHEVになったウルスの全情報!
ランボルギーニの電動化第二弾は「ウルス」!フェイスリフトでPHEVになったウルスの全情報!
AutoBild Japan
トヨタが「新型モデル」世界初公開! クロスオーバー&SUV 2台同時に! 25年半ばまでに発売!? 「bZ3C」と「bZ3X」中国で登場
トヨタが「新型モデル」世界初公開! クロスオーバー&SUV 2台同時に! 25年半ばまでに発売!? 「bZ3C」と「bZ3X」中国で登場
くるまのニュース
フォーミュラEの改良型マシン『GEN3 EVO』が初公開。4輪駆動化と超高速充電対応で2025年デビュー
フォーミュラEの改良型マシン『GEN3 EVO』が初公開。4輪駆動化と超高速充電対応で2025年デビュー
AUTOSPORT web

みんなのコメント

5件
  • 艦の大きさついては似てると思うけど、
    蒸気タービンとガスタービンを大差ないってのはどうかと思う
    蒸気タービンは外燃機関でガスタービンは内燃機関で大きく構造が違うし
  • 細かいことだけど、ハイブリッドで燃費が良いって意味なら低燃費じゃあないのかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村