メルセデスがディーゼルエンジンを搭載したSクラスを導入した。世界的に電動化が進められるこの時期にどうしてなのだろうか。(文:千葉知充・本誌/写真:永元秀和 TEXT Tomomitsu Chiba・MM PHOTOS Hidekazu Nagamoto)
メルセデスベンツSクラスは保守的に見えるが実は逆にとても挑戦的なクルマである。そんなSクラスにディーゼルエンジンを搭載したS400dが加わった。
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ディーゼルエンジンのSクラスは、以前にもS300hがあった。2015年に日本へ導入、2L直4ディーゼルターボエンジンとモーターを組み合わせたディーゼルハイブリッドで900万円台の価格、そしてSクラスに4気筒エンジンの組み合わせということがとても注目されていた。
フェイスリフトを機にグローバルでSクラスのラインナップから落ちていたので不人気だったのかなと思っていたら、実はそうでもなかったようだ。メルセデス・ベンツ日本によればかなり健闘していたという。Sクラスの新たな顧客の獲得にも貢献していたようで、そうしたこともあり、今回ディーゼルが復活したのだろう。
もともとメルセデスのパワートレーン戦略は全方位だ。EQの発表もあり電気自動車に耳目は集中するが、ガソリンやディーゼル、PHEV、FCEVとすべてに力を注いでいる。つまりこのS400dにも最新技術が投入されているということである。それはたとえばナノスライドという表面加工で摩擦を低減したり、DPFにSCRコーティングを施し、NOxの処理をしていることなどでもわかる。
ちなみにCクラスに積まれたM654型直4ディーゼルエンジンとはファミリー関係にあるのがSクラスのM656型で2気筒多い直列6気筒エンジンとなる。つまりメルセデスの最新ディーゼルエンジンなのである。
実際に走らせてみるとまったくディーゼルエンジンらしくない。低回転域からの太いトルクを除けば、である。さらに思っていたより高回転域までスムーズに回るし、ディーゼルエンジン特有の“音”も聞こえない。とくに室内はSクラスらしい静粛性が保たれディーゼル音が侵入してこない。静かな場所で車外に出て聞き耳をたてれば、聞こえてくる程度である。
見事にディーゼルエンジンが持つ、ネガティブな部分をなくしいるのがこのメルセデスベンツS400d 4マティックだと言えるだろう。
走りはSクラスに相応しいとてもジェントルなもの。たぶんこれに乗ってすぐにディーゼル車だと言い当てる人はほとんどいないと思う。それほど完成度、いやSクラスらしさが維持されているのである。まさにメルセデスのフラッグシップに相応しい完成度を持っていると言えるだろう。
S400d 4マティック 主要諸元
全長×全幅×全高 5125×1900×1495mm
ホイールベース 3035mm
車両重量 2080kg
総排気量 2924cc
最高出力 250kW(340ps)/3600-4400rpm
最大トルク 700Nm(71.4kgm)/1200-3200rpm
トランスミッション 9速AT
駆動方式 4WD
燃料・タンク容量軽油・70L
JC08モード燃費 13.3km/L
タイヤサイズ 245/50R18
車両価格 11,600,000円
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