「おい、キミはお酒飲めないはずだから今日も飲んでないよな!」
六本木飯倉片町の「ぴえどら」というパブで飲んでいるとき、一緒に行っていた三菱自動車・乗用車商品企画部の森本さん(当時)が声をかけてきた。
BMW新型3シリーズ登場!──第7世代はより大きく、よりシャープに(パリサロン速報)
「はい。アルコールは一滴も飲んでいませんけど……」
「じゃあ、ぼくが乗ってきたクルマを運転してくれないか? 今日はもう飲んじゃったから。クルマはビー・エム・ダブリューだぞ。どうだ!」
「えええっ、ビー・エム・ダブリュー? そんなクルマ運転したことないですよ。自信ないなぁ」
「だってキミはレーシングドライバーだろ? どんなクルマでも運転できるだろ? 大丈夫だよ」
というわけで、筆者が初めてBMWを運転したのはこの夜だった。たしか1975年前後だったと記憶する。
なぜ森本さんと一緒にいたのか説明しておこう。当時、筆者のモータースポーツの師匠だった益子 治さん(三菱自動車の契約ドライバー)と、森本さんはとても仲が良かった。ふたりして夜な夜な六本木に繰り出していたが、酒が飲めない筆者は、都合よく“運転手役”としてよく駆り出されていたのだ
森本さんはその後、初代ミラージュを企画し大ヒットさせた人物だ。三菱自動車の名物男として週刊誌のページを飾ったこともある。この夜、森本さんが乗っていたBMWは、商品企画の勉強材料として三菱自動車が所有する1台だった。
はじめてのBMWは、ベージュカラーの2002tiだった。BMWはもちろん、輸入車を運転するのもはじめてだったため、飛び上がるほど嬉しかったものの、“絶対にぶつけられない”という緊張感は、サーキットで走るレーシングカー以上だった。
2002tiは、ドアの開閉ひとつとっても当時の日本車とは異なる重厚感のあるものだった。現在のレベルでは、大した重厚感でもないかもしれないが、当時としては格段に高レベルだった。
クルマに乗り込みシートポジションを調整する。シートスライドやリクライニングを合わせると、ハンドル位置やアイポイントが自然で安心した。シートは張りがあり、身体をうまく支えてくれる。
エンジンをかけると、“ボボボッ”といったやや野太い音が聞こえてきた。いかにもトルクが太そうな印象を受けた排気音は「これがBMWの音か!」と、感動したものだ。
トランスミッションは4MT。小うるさいオジさん達を乗せているのでクラッチワーク、アクセルワークには気を使った。エンストでもしたら何を言われるかわからない。
しかし、心配は杞憂におわった。クラッチはとてもスムーズに繋がるし、半クラッチの領域が広いので、クラッチペダルを戻しながらアクセルペダルをゆっくり踏んでいけば楽に発進出来るからだ。さらにアクセルペダルは、扱いやすかった。
BMW=高性能といったイメージから、ちょっとアクセルペダルを踏むだけで、“ドカッ”と動いてしまうと思っていたがそれは間違いで、気を使わずに運転出来た。もちろん深く踏み込むと、ぐっと背中がシートバックに押し付けられるように加速する。ドライバーの支配下にクルマがある、といった感じがとても良かった。またシフトアップしていっても、次のギヤとの繋がりは自然で、運転が上手くなった気分にもなった。
「ビー・エム・ダブリューはすごいクルマだ……」。ただただ、感心するばかりであった。
しかも六本木をはじめ混雑した都心部でも、ハンドルの応答性がダイレクトなので自信を持って運転出来た。当時の日本車の多くが、センター付近の遊びが広く、操舵角とヨー(回転量)の動きが合わなかったため、この感覚は新鮮だった。しかも、フラットデッキスタイルのせいか、車幅感覚も掴みやすく、はじめてのクルマとは思えないほどスイスイと動かせる。
六本木からオジさん達をどこまで送ったのか、どこまで運転していったのか、いまは思い出せない。ただただ舞い上がってはじめてのBMWを堪能した。このあと、筆者がBMWの虜になったのは言うまでもない。
貴重な経験をさせてくれた、森本さんには深く感謝したい。そしてアルコール分解酵素がない筆者の肝臓にも感謝したい。あのとき酒が飲めたら、BMWと縁がなかったかもしれないのだから。
<プロフィール>
菰田 潔(こもだ きよし):1950年生まれ。学生時代から始めたレース活動をきっかけに、タイヤのテストドライバーを経てフリーランスのモータージャーナリストに転身。「BMW Driving Experience」のチーフインストラクターも務める。
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