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セダン復権のキーワードは「ここ」にある!? ベンツ&BMWがセダン主流の理由

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セダン復権のキーワードは「ここ」にある!? ベンツ&BMWがセダン主流の理由

 日本車では残念ながらそれほど売れてないセダン。輸入車もSUVやクロスオーバー車の売れゆきが相当伸びているものの、それでもメルセデス・ベンツやBMWではセダンが主流。日本車とは違ってセダン人気は根強いものがあるのだが、それはどうしてなのか?

 また逆にいえば、スカイラインやアコードなどの日本のセダンが売れないのはなぜか? 日本のセダン復権へのカギを握る(!?)テーマに迫ります。

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※この記事は2017年8月のものです。


文:片岡英明


写真:ベストカー編集部


初出:『ベストカー』2017年8月10日号

■21世紀に入り、求心力を失ったセダン

 乗用車の基本スタイルがセダンだ。ほかのジャンルのクルマより後席の快適性を重視し、広くて居心地がいい空間をウリにしている。ドライバーだけでなく一緒に乗っているパッセンジャーも快適だ。

 快適に移動できることを第一に考えているからロングドライブしても疲れが少ないのがセダンの魅力である。また、運転する楽しさを追求したスポーツセダンも少なくない。羊の皮を被った狼は、いつの時代もクルマ好きのハートを熱くした。スカイラインやインプレッサのWRXシリーズは、セダンであることを隠れ蓑に、走り屋たちの御用達モデルとなっている。

 居住性とトランク容量に代表されるパッケージング、操縦安定性や乗り心地などの走りの実力、見栄えや質感、多くの項目において高得点を要求されるのがセダンだ。実用性を重視しているが、そのほかの項目も高いレベルにないと魅力的じゃないのである。

 ほかのジャンルと比べ、クラス区分も多彩だ。メルセデス・ベンツやキャデラックなどの名門メーカーが得意とする高級車から、エントリーユーザー向けのコンパクトセダンまで幅広く揃えている。実用性を重視したファミリーカーから高性能なスポーツセダンまで、バリエーションは驚くほど多い。最近のセダンには4ドアクーペもある。

 が、セダンは21世紀になって求心力を失い、ユーザーから見放されてしまった。特に日本では壊滅的な状態だ。街でも高速道路でも、セダンは少数派となっている。今、日本で多く見かけるのはマルチパーパスのミニバンとクロスオーバーSUVだ。日本では、アップライトパッケージのミニバンとSUVがセダンとして持てはやされている。

 1990年代に台頭し、市民権を得たミニバンに正統派のセダンは駆逐されてしまった。市場のボリュームが減っているから、最近はセダンを整理するメーカーも少なくない。選択肢が狭まってしまったこともセダンの衰退に追い打ちをかけたと言えるだろう。

 今、日本で元気なセダンはクラウンやカローラなど、強力な販売体制を誇るトヨタのクルマだけだ。インプレッサG4も健闘しているが、主役は5ドアである。統計的にはセダンの販売台数トップに君臨しているのはプリウスだ。が、独立したトランクを持つ3ボックスのセダンに限定すると、カローラアクシオ、プレミオ/アリオン、クラウンがトップ3の常連。

 とはいえ販売台数は、ミニバンやクロスオーバーSUVと比べるとお寒いかぎり。セダンは人気がない。原因はいくつか考えられるが、ひとつは選択肢が少ないこと。5ナンバーの小型車枠に収まっているのはカローラアクシオ、プレミオ/アリオン、グレイスの3車だけだ。

 その上の3ナンバー車も新しいのはインプレッサG4だけで、ほかは基本設計の古いクルマばかりになっている。ただし、カムリとシビックが登場するから少しは活気を取り戻すだろう(註:シビックは2017年9月に発売、カムリも2017年7月にフルモデルチェンジ)。とはいえ、3ナンバー車になると、輸入車が手強いライバルとしてクローズアップされてくる。

■年配の方は輸入車のセダンを購入する。なぜか?

 日本と違ってヨーロッパは今もセダンの人気が高い。ミニバンとSUVが主役の座に就くのはもう少し先になるし、保守層も多いからセダン人気が続いているのである。また、日本のセダンはコストダウンに走り、質を落とした。が、ヨーロッパ車は今も質感が高い。日本のお家芸だった快適装備と安全装備も、グレードにかかわらず標準だ。

 高齢化社会の日本は、セダンの中心ユーザー層が60代にシフトしている。彼らはバブル期にクルマにお金をかけたのでいいクルマを知っているし、ステップアップしてきた。だから今の日本のセダンでは飽き足らない。買い換えないで乗り続けているのは、今のセダンが魅力的じゃないからだ。子離れしたのにコンパクトサイズで魅力的なクルマもないのである。

 そういった人たちが目を向けたのが、メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、フォルクスワーゲンなどのドイツ車だ。テスラも電気をうまく使って新しい魅力を訴えた。

 上質なセダンを生み出すのは簡単そうで難しい。高い技術力と多くのノウハウが必要とされるのだ。高級車はなおさらで、ユーザーの要求ハードルは一気に高くなる。ベンツやBMWなどのブランドは長い時間をかけ、名誉と信用を勝ち取ってきた。最近は進化の幅も大きい。

 日本のセダンは守りに入って魅力を失ってしまった。しかも序列が明らかだ。下剋上がないのである。唯一の例外はクラウンだ。伝統を重んじて守りを固めているが、いっぽうで攻めの姿勢を貫き、ユーザー離れを防いでいる。

 これからの日本製セダンはヨーロッパ勢やアメリカ勢にはない先進性や快適性、卓越した環境性能、圧倒的なパフォーマンスなどでライバルを突き放す必要があるだろう。高齢化社会を見据えた小さな快適セダンも望まれる。

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